2014年7月6日日曜日

塗料は衣料に似ている? 塗料メーカーを招いてさまざまな塗装を学ぶ

ものづくり講座教員の久津輪です。
木造住宅の設計・施工や、家具制作に携わる方々を対象に、最新の木材塗装を学んでいただく短期技術研修を実施しました。講師にお招きしたのは、木材塗料の専門メーカー、キャピタルペイントの水谷穣さん。持参していただいたのは、オリオ2、フレッシュアクア、ワンダー水性、という3種類の塗料です。
東海3県はもとより、長野、奈良、大阪などからも、定員を大きく上回る18人が集まりました。関心の高さがうかがえます。




はじめに講義をしていただき、5枚の板に塗料を塗り分けました。
講義ではやや専門的な内容もあり、塗装にあまり馴染みのない参加者や森林文化アカデミーの学生には少し難しかった様子。


塗料にはさまざまな種類があり、さまざまな分類方法があるので難しいのです。どう説明すれば理解しやすいのか考えていて、終わったあとで思いついたのが、「衣服に例えてみると分かりやすいかも」ということでした。

衣類はまず、形状で分けることができますね。
Tシャツ、Yシャツ、ポロシャツ、タンクトップ・・・

次に、素材で分けることができます。
綿、麻、絹、ポリエステル・・・

それから、用途で分けることもできます。
肌着用、普段着用、スポーツ用、フォーマル用・・・


それと同じように、塗料の分類方法もひとつではないのです。
主成分で分けると、
オイル、ラッカー、ポリウレタン、漆、シェラック・・・

溶剤で分けると、
有機溶剤(シンナー)、水、アルコール・・・

膜を作るかどうかで分けると・・・
造膜、含浸。

ちなみに上記の3種の製品はこの分け方でいくと、
オリオ2・・・オイル+ウレタン、有機溶剤、含浸
フレッシュアクア・・・ポリウレタン、水、造膜
ワンダー水性・・・アクリルエマルジョン、水、含浸
となります。


さて衣服を選ぶ時は、たとえば
「きょう暑くなりそうで、人と会う予定があるから、涼しげであまりカジュアルすぎない麻の開襟シャツにしよう」
という風に選びます。

それと同様、塗料を選ぶ時も、
「これは木の素材感を保ちたいから膜をつくらない含浸系で、店舗のカウンターにするから耐水性のあるアクリルエマルジョンにしよう」
となるわけですね。


安全性が気になる人も多いと思います。
現在市販されている塗料は乾いてしまえば人体に害はないものがほとんどですが(注)、それでも有機溶剤が使われているものや、合成樹脂が含まれるものになんとなく抵抗感を感じる人も少なくありません。

ここで何を優先するかは、使う人の価値観によります。
衣服でも、石油化学系の物質に抵抗があれば、綿のシャツを選べばよいと思います。しかしスポーツをするときには、綿のシャツでは汗を吸って重くなるし早く乾かない。そこでポリエステルのシャツを選ぶ人もいるでしょう。

塗装でも、天然の植物オイルを塗ることもできますが、天然の植物油は乾くのに数週間も待たなければならないし、防水性が低いので使いながら何度も塗り直す必要があります。
それでも安心感や環境への配慮から天然オイルを選ぶならそれも良いし、より塗膜性能の高いポリウレタンの塗料を選ぶという選択肢もあると思います。


塗料の世界は日進月歩で、どんどん進化しています。
どんな用途にどんな塗料が適するのか、使う側が新しい知識を身につけることが欠かせません。
森林文化アカデミーでは、今回のような塗料メーカーの方をお招きしての講座を今後も開いていきます。次回は1/18の予定です。関心のある方は、ぜひお申込みください。


(注)詳しくは、各社が出す製品安全データシートなどを確認する必要があります。