2012年6月14日木曜日

森林整備のための 「施業プランナー」 上級研修会で リスクコミュニケーション研修 開催

 岐阜県が平成20年度から育成してきた施業プランナーですが、今年から新人プランナーや地域で孤立するプランナーを束ねていけるような「上級プランナー」を3年間掛けて研修育成することとなりました。
 本年度はコミュニケーション能力に重点をおいてリスクコミュニケーションやファシリテーションを学びます。

 今回、お招きした先生は元森林文化アカデミー准教授の八尾哲史さん。八尾さんが数々の化学物質に関するリスクコミュニケーションのファシリテーターをされた実績から、川尻が無理矢理、林業でのリスクコミュニケーションをお願いしたのです。


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 リスクコミュニケーション (Risk Communication:以下、リスコミ) とは、私たちを取り巻く社会でのリスクに関する正確な情報を、行政や専門家、企業、市民などのステークホルダーである関係主体間で共有し、相互に意思疎通を図る合意形成の一つです。

 リスコミは災害や環境問題、原子力施設などの問題につき、安全対策に対する認識や協力関係の共有を図ることが必要な場合に実施され、これまでは化学物質の「環境リスク」について、環境省などが音頭をとって大企業と地域住民などのリスコミが実施されてきました。

 しかし、環境問題に直結する森林整備を考える上で、「林業でもリスコミが必要」であることを施業プランナーの上級者には理解してもらいたいと考えて、今回の研修を設定しました。


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 八尾さんは、冒頭から研修受講者、講師、企画側の「相互作用」を重視した研修の進め方について説明され、
 (1)コミュニケーションの機能
(2)研修とコミュニケーションの関係
 (3)林業とコミュニケーションの関係 について、解説されました。
 「他者理解と信頼関係の構築」、「個人と社会的集団の成長」では南アフリカのアパルトヘイト問題では、「議論・討論」では問題解決できなかったが、「対話」による解決の方が時間はかかるが得るものが大きかった事例を紹介されました。
 議論・討論では主張を言い合うばかりで、自分自身が変わらない。しかし対話は何度も同じテーブルにつくことを前提としているので、相手を受け止めて自分が変わる必要がある。「受け止める」と「受け入れる」は意味が違う。 話す相手に変わってもらうことを期待するなら、相手の言葉を一度受け止めることが重要と話されました。・・・・すでに、「提案型集約化施業」での重要なポイントが出てきました。



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 「客観的リスクとリスク認知」では、特に「認知」に関して専門家と一般人とのズレが大きいこと。個人によって、バラツキがあることを再認識しました。


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 「リスク認知に対するバイアス」についてです。ちなみにバイアス(英:bias)とは「斜め、偏り、歪み」を意味し、「偏見」や「先入観」という意味をもちます。
 ここでは」「リスク」の存在だけを知った状況は危険・・・「知らせない」という選択は危うい。「危険」という強固な信念ができると容易に変革できないため、最初の情報提供はきわめて重要。情報の提供方法によって認知が大きく異なる。方法を誤ってはいけない。

 事業体は最初からリスクについての情報提供を中心としたコミュニケーションに取り組むべき。リスクに関する問題を共有し、相互に意思疎通を図ることで、信頼と理解のレベルを上げることが重要である。



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 次に、リスクコミュニケーションが取り扱う主な問題を林業にあてはめると、そして森林組合や林業事業体がリスクコミュニケーションすべき相手は、・・・・
 今後は森林所有者や地域住民だけでなく、従業員や県民や市民オンブズマンの可能性もある。
 重要なのは「相手の立場で考える」、相手の心の枠でとらえ、心の枠で共感する。・・・こうした考え方は今までの林業には無かったよね!


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 午後からはワークショップです。研修生が「地域住民」という設定で、村の中心部を木材を積んだトラックが往来することに関する座談会や説明会を開催したい林業事業体にどのような説明を求めるのかか?
 研修者が2班に分かれて、以下のことを考えます。
 (1)出席者の範囲や数、地域からは誰がでるべきか、
  事業体には誰にきて欲しいのか、その関係者の範囲は?
 (2)座談会や説明会はどこで開催して欲しいか
 (3)説明の内容は何か、どんな質問をしたいのか?
 (4)座談会・説明会開催前・後に、事業体に求めたいことは何か?


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 ワークショップをやってみると、なかなか事業者の立場から脱却できない自分の存在。今まで気がつかなかった地域住民としての思い。様々な考えが飛び出します。
 ワークショップの最終はグループ発表です。


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リスク情報伝達時の問題点として
 (1)受け手のニーズに配慮しない・・・信頼を失いやすい状況を作ってしまう。
 (2)受け手の認知に配慮しない・・・「分かりにくい」ことが原因で不安が増幅する。
 (3)すばやく対応しない・・・情報がないがゆえに不要な不安が増幅し、信頼も揺らぐ。

 このため、受け手を理解し、受け手とともに考え、組織の判断にスピード感を持たせる。といった対応策をとる必要性にふれられました。


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 会合形式のリスコミでは、参加者を30人程度にし、質問にしっかり回答できる事業者、地域のキーパーソン、行政関係者の参加、中立的立ち場の専門家、寄り合い施設の利用、円座(サークル配席)、冒頭の説明、情報原則開示、明確な伝達など、様々な項目について具体例をあげながら解説してもらいました。


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 最後に「クライシス・コミュニケーション(Crisis Communication)」です。
 「クライシス・コミュニケーション」とは、非常事態の発生によって企業が危機的状況に直面した場合に、その被害を最小限に抑えるために行う情報開示を基本としたコミュニケーション活動です。
 リスクマネジメントの一環として、事実関係や実施する危機管理対策の内容を各ステークホルダー(利害関係者)に迅速かつ適切に伝達するのが、クライシス・コミュニケーションの最も重要な役割です。


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 緊急事態発生に対して対応が適切かどうか?
 組織の中にリスコミ体質を作っておけばクライシスも乗り切れる。大変だけど、こうした対応策を持っていれば、信頼されること間違いない。


 多分、林業でのリスクコミュニケーションは日本では初めてのことと考えます。しかし今後作業道開設に伴う渓流水の濁水、林地崩壊など、様々な点で必要となってきます。
 全国に先駆けて勉強された研修生の皆さん、トップランナーである皆さんが「これからの施業プランナーの見本」となるのです。頑張ってください。それと講師の八尾さん、本当に有り難うございました。大変有意義な時間でした。

 以上、報告はジリこと川尻秀樹でした。


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