さて、今回で12回目となる平成25年度 施業プランナー育成研修。本日の研修内容は
1.プレゼンテーション技法(森林文化アカデミー木造建築分野の辻 准教授)
2.コミュニケーション技法(JIRI)
3.木材流通の概要((株)東海木材相互市場サテライト美並 小森 営業課長)
辻先生からは、「施業プランナーのプレゼンテーション」に的をあてて、解説がありました。
特に、座談会などに参加する森林所有者は「短い時間」で判断することが多い、だからこそ
プレゼンテーションが重要となる。
プレゼンテーションとは「限られた時間で、必要な情報を正確に伝達し、相手を説得させる行動」
です。
見せるスライドも、人の目線を重視して構成する必要があります。
実際の工程は
第一に①目的を明確にし、聞き手を分析する、②全体の構成を考える、③必要な情報を収集・
整理する、④スライドのデザインを決める、⑤スライドをつくり込む、⑥リハーサルをして本番に
備える。
次ぎに、JIRIによるコミュニケーション技法。
「山」を単なる場所から、意識された「空間」に転換するためにコミュニケーションを活用する。
Communicationはラテン語のコムニカチオcommunicatio(分かち合うこと)、コミュニスcommunis
(共通したもの)、コモンcommon
共通物です。
これは、コミュニケーションの本質を理解する上で重要なこと
これは、コミュニケーションの本質を理解する上で重要なこと
アメリカの行動科学者アルバー・メラビアン[言動の3要素]意志の疎通
言葉:7%、 声の調子:38%、 態度:55%
ジョハリの窓: ①自分も知っているし、他人も知っている「開かれた窓」
②自分は知らないが、他人は知っている「見えない窓」
③自分は知っているが、他人は知らない「隠された窓」
④自分も知らないし、他人も知らない「未知の窓」
コミュニケーションでは、
メッセージを伝えることだけに全力を注いではいけない。 雑談や近況の情報交換をしながら、
相手の話を聞きながら「開かれた窓」を大きくすることが重要。
午後から、東海木材相互市場のサテライト美並での研修です。
東海木材グループは本社と営業拠点5ヵ所からなり、愛知県にある東海木材相互市場は日本一
の木材市場で、高山市にはプレカット向上もあります。
東海木材は複式市場で、東海木材が敷地整備し、木材会社と契約して集金する。浜問屋8社が
山で集荷し、東海木材が市で木材業者に販売する。
現在、サテライトは愛知県の名倉と岐阜県の美並の2ヵ所、サテライトの設定条件は敷地が
2000~3000坪、敷地が購入できること、インターネットができ携帯電話が通話可能であること
だそうです。
ここ東海木材では金曜日に市売りされ、月曜日には精算され、柱材の木材価格は毎週水曜日の
中日新聞に掲載されます。
サテライト美並では、持ち込まれた木材を一本一本、別品材、A材、2A材、B材、2B材、C材に
選別します。別品材は競り売りに、A材は製材工場に、小曲り・色むらのある2A材も製材工場に、
B材は集成材に、2B材は合板工場に、C材はチップやバイオマスにチョークで色分けされます。
多くの木材市場では機械による自動選別機が利用されますが、機械選別では樹皮を勘案し、
少し細めに選木されるため売り手には不利になる。
また買い手にとっては、小曲材や枝虫材(スギノアカネトラカミキリ食害材)、穿孔虫材(ヒメス
ギカミキリ食害材など)、鉄砲虫材(オオゾウムシ食害材など)も入ってしまう欠点もあるので、
一本一本吟味するそうです。
このヒノキ丸太は枝虫材、写真では二ヶ所に食害痕が確認できますが、どこかわかりますか?
さて、次の写真は積まれた丸太に見られた食害痕です。
指先の穴が鉄砲虫材(オオゾウムシ)です。これにやられると一晩でお茶碗一杯分のおが屑が
堆く積もるそうです。 右下の食害痕は穿孔虫材(ヒメスギカミキリ)食害痕です。
、
最近のスギ並材丸太事情は以前とは少々違う。
昔なら、年輪幅の広い目粗材は天然乾燥時に狂いが生じやすいからと敬遠されましたが、
最近では人口乾燥技術の進歩によって、目粗材でも欠点がでづらくなったため、取引
する上での弱みにならなくなってきた。
むしろスギ並材で問題なのが、100年生程度で直径が50cmを越えてくる丸太なのです。
高級材の役物であれば、老齢で大径木であるほど価値は高くなる。
役物(ヤクモノ)とは造作材に使用される見た目が綺麗な木材(製材)を総称する名称で、もう少し
詳しく説明すると、日本建築の中で無節の柱や床の間材、長押(なげし)材などにされる無節材(枝
打ち材)などです。
並材は役物よりランクの低い木材とされ、こうしたスギ並材は60年生程度のものが最も利用価値
が高く、売れる丸太となる。
逆に100年以上たったスギの並材は、節腐れなどが発生しやすくなり、長伐期施業して材価を
下げる可能性も大きい。
小森さんは並んでいるスギ丸太の末口を測定し、この丸太なら12×32cmの梁桁材が採れる。
しかし末口が42cm以上あるようなスギ並材は買い手がいないと説明されました。
近隣の合板工場では、元口が54cm以上の丸太も不要です。
だから今測定しているものより太いスギ並材の売り先は、パルプ・チップしかなくなる!
参加した施業プランナーは、これまで安易に「長伐期施業」と口走ってきたが、これからどうすべき
なのかと頭を抱えて、研修を終えたのです。
以上報告、JIRIこと川尻秀樹でした。