2011年10月28日金曜日

足助屋敷―山里の手仕事と職人の新しい働き方

山村づくり講座「地域調査実習3」の授業で、10月25日に愛知県豊田市にある「足助屋敷」を
訪れました。旧足助町時代の昭和50年に開館して以来、自治体出資の第3セクター経営を
続けながら、 常に黒字を出し続けている"観光施設"です。

DSCF9325.JPG


「山里にいきづく仕事とくらし」ことをコンセプトに、わら細工、機織り、桶屋、傘屋、紙漉き、炭焼き、
鍛冶屋、竹細工、木地師、藍染など、10種類の職人の工房が長屋風の建物に配置されています。
そこでは本物の職人さんが仕事をしながら、来訪者の見学を随時受け入れています。私たちの
暮らしから失われてしまった「物語」(価値観)を思い出させてくれる場所です。

足を踏み入れるとそこには、山里の「生活のたたずまい」が感じられます。朝は必ず庭先が竹箒
で掃き清められ(そこは大切な作業場だから)、母屋の竈からは薪の煙る臭いがします(職人さん
達の賄いになります)。屋敷や工房の周囲には仕事の下拵えや段取りをしている材料が整然と
並べられて、空間が無駄なく使われています(観光施設らしいデコレーションや解説装置は最低
限に抑えられています)。

職人さん達の工房は、刃物や火を使って真剣に材料に向き合う「仕事場」の雰囲気が漂っていて、
思わず「おじゃまします」と口にしてしまいます。寡黙と見える彼らですが、話しかけると意外にも
親切に職人仕事のことを語ってくれます。来訪者が興味を持って「会話」を求めれば、奥深い手
仕事の話が聞けます。この会話のファンになって繰り返し訪れる人も多いそうです。

足助屋敷は、観光施設としての動態展示を見せながら、職人の雇用の場を作り、それを若い世
代へ伝承しています。現に、数年前に訪れた時と比べると数種類の工房が若い後継者に代替
わりしていました。こうした施設を拠点に、手仕事の技が伝承され、職人の新しい仕事のスタイ
ルが創られているとも言えます。

実習では、足助屋敷の空間構造やコミュニケーション様式の特徴、そして手仕事の技の展示を
通じて伝えようとしている「物語」の読み解きを、環境システムのデザインという視点から調査し
ました。

DSCF9336.JPG

DSCF9346.JPG