2015年9月28日月曜日

スウェーデン式のナイフワークを学ぶ 〜アメリカ視察報告1

森林文化アカデミー教員の久津輪です。シルバーウィークを利用して、アメリカでグリーンウッドワークや木工教育機関の視察を行ってきました(自費です!)。今回の一番の目的は、スウェーデンのグリーンウッドワーカー、ヨゲ・スンクヴィスト Jogge Sundkvist さんの講座に参加することでした。

 ヨゲさんは父ウィレ・スンクヴィスト Wille Sundkvist さんのもとで木工を学び活躍する木工作家です。スロイド Slöjd と呼ばれるスウェーデンの伝統的な工芸をベースにポップでカラフルな作品を作るほか、スウェーデン工芸協会の理事や、工芸学校の非常勤講師も務めています。

 父ウィレさんも世界的に著名な木工作家です。ウィレさんの著書「Swedish Carving Techniques」(スウェーデンの木彫技法)は長く絶版でしたが、最近復刊されたようです。日本のインターネット書店でも購入できます。ISBN 978-1627106733

 ヨゲさんの著書「Shnitzen」(彫る)。ドイツ語版なので私は読めませんが、美しい作品の数々が紹介されています。インターネット書店で取り扱いがあります。ISBN 978-3878705888

 今回ヨゲさんが講座に持ち込んだ道具類。刃物のさやひとつ取ってもこんな遊び心があります。ヨゲさんの作品については、彼のホームページをご覧ください。

 会場は、メイン州にある高級木工具メーカー、リー・ニールセン Lie-Nielsen本社。この会社については、いずれまた報告します。

 講座ではバターナイフづくりを通じて、10種類の異なるナイフワークを学びました。手先だけでなく、体全体を使って木を削るのが特徴です。そのうち非常にユニークで、実際にとても役立つと思えた2つのナイフワークを紹介しておきます。

 まずはカバの生木を割り、斧で形を整えます。

  1つ目のナイフワーク「ハサミの握り」。胸に材料とナイフを当て、胸の筋肉を前に押し出して木を削ります。大きなハサミのような動きをすることにちなみます。繰り返すとニワトリがコッコッコと歩き回る仕草にも似ていることから「チキンウィングの握り」だとも言って笑わせていました。

 2つ目は「缶切りの握り」。刃を自分の方に向けて削ります。缶詰を開けるような動きをします。一見、手を切ってしまいそうに見えるのですが、ナイフの正しい持ち方と動かし方をすることで、安全にかなりの力で削り進めることができます。教わってみると目からウロコのナイフワークです。

 今回はアメリカ各地から参加者が集まり、中には全国的に知られる著名な木工作家もいました。ヨゲさんの人気とグリーンウッドワークへの関心の高さが伺えます。

 今回学んだナイフワークは、木に親しんだりものづくりを楽しむ上でとても有効な技術だと感じました。森林文化アカデミーの教育や生涯学習講座にも採り入れていきたいと思います。
また、ヨゲさんが非常勤講師を務めるスウェーデンのサタグランタン工芸学校は、理念や実践内容が森林文化アカデミーの目指すものに近いと感じました。木工分野では日本との交流がほとんどないようですので、これからネットワークを築きます。
 まずは来年夏、スウェーデンを訪れます!(また自費かな・・・)