森林文化講演会 速水亨さんをお招きしての
「私が想う山林業」 ~地域と共に、生き物と共に~が開催されました。
速水さんは日本を代表する。いや世界的にも先進的な林業家であり、その林業経営の理念や地域への貢献など、大変学ぶところが大きい方です。
今回は特別に「私が想う山林業」 ~地域と共に、生き物と共に~ を講演して頂きました。
ここで速水さんをご存じない方のために、どれほどスゴイ人かを簡単に紹介します。
この写真はご存じ、日経ビジネスです。この次代を創る100人に林業家として取り上げられる唯一の方です。
記事の一部をここにのせますが、なんと「森を造る光の魔術師」と称されています。つまり森林管理における「光」の問題が環境など様々な分野に影響することを言っているのです。
今回はエンジニア科もクリエーター科も、2年生だけが対象の講座なのですが、速水さんの噂を聞いて学生が続々参加し、本来よりも多くの聴衆が集まりました。
速水さんは、20世紀は人間の命を守る「安全」がキーワード、21世紀は地球の命を守る「環境」がキーワードと始められました。
地球上に存在する生物のうち、人間が地球資源の7割を使っている現実、そこで今必要な2つの持続性は(1)資源の持続性、(2)環境の持続性
加えて、4つの平等(1)民族間の平等、(2)地域間の平等、(3)世代間の平等、(4)生物間の平等 が重要と説明されました。
「森林と光、水、土壌」の重要性
1.森林管理は光の管理 2.地面にまで光を届かす
→ 1.地表に下草が発生
2.腐植土が堆積し、豊かな土壌になる
3.発芽した広葉樹が林内に育つ
4.人工林の植生の多様性が確保される
→1.土壌微生物、鳥類、野生動物などが増加
2.雨が地下水になる割合が増加し地表流水が減ずる
3.流れ出る水が美しくなる
人工林の多様性確保のためには、「パッチ状配置と林縁の多様性」が重要であることも述べられました。つまり単木で管理するのではなく、多種な林分をパッチ状に配置して、多様性を稼ぐ考え方です。
これは私も、以前から同様のことを訴えてきました。こうすれば、人工林でも多様性は確保できるのです。
但し、人工林では「樹冠長」を考える必要があります。理想的には樹高の50%以上(最低25%)で、樹冠長を考えて間伐すれば樹高成長がそのまま樹冠長成長につながり、結果として長伐期で成長が維持される。
速水林業の30年間の軌跡は
1.作業がわかりにくい → 作業の数値化
2.計画が手作業 → 日本で初めて計画の電子化
3.生長量・単価UP → 育種の開始
4.若い労働力がいない → コーポレイティブアイデンティティ、就労規則
5.安全管理 → 装備、作業手順、作業服
6.大規模な台風被害 → 速やかな搬出、販売方法
7.生産性の向上 → 機械化
8.修理コストの低減 → 自らが修理
9.環境意識の高まり → FSC取得
10.育林の合理化 → 目標と方法
11.造林コストの低減 → 挿し木苗の生産
などなど数々の実践事例を紹介してくださいました。
ところで速水林業と言えば、日本で最初に、世界でも100番目くらいにFSC(Forest Stewardship Council)を取得して、持続可能な森林施業を実践されていることでも有名です。現在、速水さんに続けと日本では33カ所がFSC認証を受けています。
このFSC材の使われ方の面白い事例として、
1.ドイツの鉄道チケットはFSC材由来である。
2.オバマ大統領就任式の招待状も、英国ロイヤルウエディングのプログラムにもFSCの文字が記されている。
様々なメッセージを下さった速水さん、最後に速水さんがお好きな言葉、アルフレート・メーラーの名言「最も美しい森林は、また最も収穫多き森林である」を紹介され講演が終了した。
最後に、私はお目にかかるのは20年ぶりだったが、拝見するたびにパワーアップされる速水さんの凄さを感じたのです。
それと同時に、本当に魅力的なお人柄でもあったのです。
以上、報告 ジリこと川尻秀樹より