2013年11月21日木曜日

ゴッホの椅子づくり 1年間の集大成

この1年間、森林文化アカデミーとNPO法人グリーンウッドワーク協会が共同研究してきた「ゴッホの椅子づくり」。かつてスペインで身近な木を削って作られていた素朴な椅子を、森と人をつなぐ新しいものづくりプログラムにしよう!と取り組んできたものです。

調査を進める中で、この椅子を陶芸の人間国宝・濱田庄司氏が日本に紹介したことや、木工芸の人間国宝・黒田辰秋氏が「椅子の原点」であるとしてスペインの制作現場を視察したことなど、たくさんの興味深いエピソードにも出会いました(過去のブログ記事でご紹介しています)。

そして8月には、札幌芸術の森で4日間の「ゴッホの椅子づくり講座」を実施することができました。

これまでの調査・研究でもっともお世話になったのが、黒田辰秋氏の孫、黒田悟一さんです。濱田庄司氏から辰秋氏へ贈られた椅子を私たちに寄贈していただいたり、辰秋氏が1967年にスペインを視察した際に撮影したフィルム映像や写真をお貸しいただきました(それらの写真は、イギリスのグリーンウッドワークの雑誌に記事として掲載されました)。

そこで黒田家へのお礼に、京都で椅子づくりをすることにしました。悟一さんからのリクエストで、自宅のカウンターで使う「ゴッホのハイチェア」です。また、黒田家と親交の深い京都美術工芸大学の先生方のご厚意で工房を使わせていただきました。

11月16~17日「ゴッホの椅子づくりin京都スペシャル2DAYS」。集まったのは、黒田悟一さんとお母さん、お子さんたち。ゴッホの椅子づくりに関わったグリーンウッドワーク協会のメンバーと森林文化アカデミーの学生たち。京都美術工芸大学の宮本貞治先生と南丹市工芸協会の中川勝之先生、そして学生たち。札幌からも木工デザイナーの煙山泰子さんがかけつけてくれました。プライベートな椅子づくりのつもりでしたが、大人数で中身の濃いワークショップになりました。

技術指導はグリーンウッドワーク協会の精鋭、加藤慎輔さん。オリジナルの椅子の図面化、試作、治具開発を担当した功労者です。


かつて黒田辰秋氏が憧れ、つぶさに研究してきたゴッホの椅子。その椅子づくりを悟一さんやお子さんたちに体験してもらうことができました。


乾燥していない生の木をそのまま削って組み立てるのは、美術工芸大学の学生さんたちはもちろん、先生方にとってもあまり経験のないことだったそうです。



できあがった椅子たちと記念撮影。
黒田家へ贈るゴッホのハイチェア。学生のみなさんが頑張ってくれました!

宮本貞治先生と中川勝之先生に作っていただいた、名付けて「巨匠スツール」。ナラの木で作られていて、重い!

煙山さんからは、グリーンウッドワークでつくったクリスマスツリーを黒田家にプレゼント。


1年間の研究の節目となる、楽しいワークショップを実施することができました。参加した森林文化アカデミーの学生たちにとっても、貴重な経験になったと思います。関わっていただいたみなさんに感謝です。

黒田悟一さんからはご自宅でゴッホのハイチェアを使っていただいている写真が届きました。お礼をするどころかスペシャル講座のホスト役としていろいろお世話になってしまいましたが、喜んでいただけたかな〜。

これからも森林文化アカデミーとグリーンウッドワーク協会では、ゴッホの椅子づくりを発展させていこうと考えています。森とのつながりやものづくりの楽しさを味わっていただこうと思います。私も作ってみたい!という方、お楽しみに!