先日の日曜日(11/6)、森林文化アカデミー生涯学習講座「連続講座『里山をかんがえる』」の第3回目の講座を開催しました。
10月から続いてきた連続講座の最終回です。
この連続講座においてはこれまで、里山の歴史、人との関わり、そこに棲む生物などについて学んできました。
今回は3回目ということで、里山が現在直面している問題、これからの利用について学び、どうしていったらいいのか考えてもらえるような内容で開催しました。
午前中は講義の時間です。
まずは森林研究所の大橋主任研究員より、ナラ枯れについてのお話です。
ナラ枯れはミズナラ、コナラをはじめとするブナ科樹木の病気で、日本各地に被害が広がり大きな問題となってきています。ここ岐阜県においても例外ではありません。
講義の中では病原菌を運んでいるカシノナガキクイムシの生態、被害の広がり、被害地拡大の要因などについて話がありました。特に被害拡大には林の樹木の大径化が関係していることが示され、里山利用の停止が要因のひとつになっていることが説明されました。
また公園のように大きな木を残して低木などを伐ってしまうと林床が明るくなり、かえって被害を促進してしまうという説明もありました。このことは里山林整備をする上で、考慮しなければいけない重要な事項ですが、同時に難しさを感じさせるものでした。
その後、アカデミーの柳沢准教授により、里山の利用のひとつとして粗朶利用の紹介がありました。
粗朶(そだ)とはいわゆる柴のことですが、現在では燃料などに使われていることはほとんどなく、もっぱら河川の護岸工事の資材として使われています。河川工事に使われる際には粗朶沈床という構造物をつくって、それを川の護岸近くに沈めます。自然素材ということもあり、川の流れに逆らうことなくいい具合に流速を弱めてくれるという利点があります。この辺りがコンクリートなどと違うところです。また川の中で生物たちの住処として機能していることも紹介されました。粗朶を利用することは里山にとっても河川の環境にとってもいいといえるでしょう。粗朶については、初めて聞いた人も多いようで関心が高かったようです。
講義はこれで終了、この後実習となります。
この日はあいにく天候が悪かったため、少し予定を変更して野外実習の時間を少なくしました。
カシノナガキクイムシの観察も当初はフィールドで行う予定だったのですが、あらかじめ用意したナラ枯れ丸太を割って観察することにしました。
割ってみると、沢山のカシノナガキクイムシの幼虫が出てきます。成虫も観察できました。
話としては多くの人が知ってはいたようですが、実際にみるのは初めての人も多かったようで、皆熱心に観察をしていました。
お昼ご飯の後、バスで移動しました。
関市にある公園内でナラ枯れ木を観察しながら、説明を受けました。
その後、さらに移動しシイタケの原木を伐りだした林や粗朶山に行き、林の更新の様子等を観察しました。
帰ってきてから、最後のまとめを行いました。
3回の連続講座の最終なので、質疑も多くありました。
里山のこれからを考えていくには、まだまだ越えなければならない問題が沢山あります。
参加者のみなさんからは
「里山の大切さをもっと市民に知って欲しい。学んだ知識を生かせる場が欲しい。」
「現在実施している活動(里山の保全・保護活動のボランティア)のために大変参考になりました。」
「来年以降も『里山』に関する講座を継続してください。」
といった声を聞くことができました。
この連続講座がそれを克服するための一助になったのならば、そして少しでも里山の利用につながる道筋の一端が見えることにつながったのなら幸いです。