2012年6月23日土曜日

 第4回 施業プランナー育成研修では、前回の林分調査デーを利用して間伐予測と間伐後の将来林型の予測を行いました。

今回のメイン講師は森林文化アカデミーの横井教授、岐阜県森林研究所の大洞さんと渡邊さんです。

 施業プランナー育成研修の参加者18名とフォレスター候補者5名が一緒になって、前回調査した森林文化アカデミーの演習林、ヒノキ47年生林分の400m2と100m2の大小2プロットを解析します。
 4つのグループに分かれて、樹高、枝下高、直径データを基に林分の解析結果をグループ発表します。


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 グループによっては、小さなプロットでは林分を代表するようなデータが得られにくいのでより大きなプロットデータが必要とか。全体を代表するような立地にプロットをとるべきとか。小さくても大きくてもあまり変わらなかったので、効率を考えると小さくても良いのでは。といった意見も出ました。


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 発表に続いて、横井教授から4グループのデータについて、分析結果を説明して頂きました。ここで、100m2という小さなプロットでも良いと考えるなら、100m2で2本違っても、1ha(10,000m2)なら200本の違いとなる。1haとして考えると100倍の誤差となるのです。
 たまたま小面積でサンプリングしたデータに偏りがあり、それを基に収支計算するならば、最終的には相当な食い違いが発生する。100m2と400m2でのデータを比較すると、同じ仕事をしているつもりでも間伐率、断面積合計間伐率、材積間伐率が大きく異なります。
 いつも100m2に慣れ親しんでいるから感覚が麻痺していますが、こうして自分たちで測定して、データを棒グラフなどに「見える化」すると、小さなプロットでは誤差があって利用できないことがわかります。


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 続いて、森林研究所の大洞さんが「シルブの森」の利用方法について解説して頂きました。「シルブの森」は京都府立大田中先生が開発したEXCELのシステム収穫表を基本としています。
 以前は林分の間伐を間伐の指標として、「林分密度管理図」が多用されていました。林分密度管理図は平均樹高曲線、平均直径線、収量比数線、自然枯死線などからできています。
 密度管理図は、
 1.下層間伐には利用できるが、上層間伐や列状間伐では推定誤差が大きくなる。
 2.平均値はわかるが、大きさの分布はわからない。


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 シルブの森の特徴は、
 1.直径階分布がわかる(どの太さの木が何本あるか予測できる)。
 2.地位指数ごとの樹高成長曲線が予測される(従来より正確)。
 3.全層間伐など、下層間伐以外にも利用できる(間伐方法似よる成長の違いを比較できる)。
 4.EXCELがベースであるため予測結果を編集しやすい。

 反面欠点は、
 1.自然間引きするような高密度林分には適応できない(自然枯死を表現できない)。
 2.列状間伐に適応できない。
 3.細かい条件設定は誤差の範囲になる可能性がある。
 4.極端な伐採には適応できない。

 シルブの森での予測結果を、どのように解釈するかは使う人の技量によります。そのため、「どのように森林を管理していくか」という方針をしっかり持つことが重要となります。

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 さぁ、各グループで「シルブの森」を使って、47年生ヒノキ林をどう間伐して、将来20年後にどのような林分に誘導するのか。そして最終目標林型はどうするのか。検討開始です。


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 一つの事例として、上段の左から(1)全層間伐 (2)下層間伐 (3)上層間伐 (4)上層+下層間伐 です。青色が間伐する個体、赤が残る個体。
 下段が20年後の林分の直径階分布です。さぁ、どうすれば山がお宝に変わるのでしょうか?


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 4班から発表です。4班は、本数間伐率34%の下層間伐を実施し、次ぎに間伐するのは20年後です。この林分は5年後には既に結構込み合っており、20年後の収量比数は1を越えており、林分材積は500m3/haとなり、その後は択伐林に移行させる計画です。


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 3班は、本数間伐率35.7%、材積間伐率27.7%の中下層間伐を実施し、402m3の材積を292m3に落とします。大径木仕立てを目指し、20年後には収量比数0.98、材積485m3となり、将来的には40年後の90年生で皆伐する。


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 2班は、本数間伐率16.7%の上層間伐から始まり、5年ごとに胸高直径28cmに到達した立木はすべて伐採する。現時点で収量比数0.6程度であるが5年ごとに0.4に減らす間伐で、末口径20~28cmの丸太生産を目指します。今回の間伐79m3のうち利用率50%として、今回は森林所有者に60万円の売り上げから経費を差し引いて51,866円渡し、20年後までの4回で合計60万円の純益収入を上げる。


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 最後は1班の発表です。1班は、本数間伐率21.6%の劣勢木間伐。収量比数0.89の林分を0.74に落として、今回は収益を上げずに森林所有者負担とする。10年後の間伐でも劣勢間伐をするが、32%の間伐率で胸高直径24cm以上の立木で収入を得る。この時点で収量比数0.9を0.64に落とし、20年後に大径木を収穫できるようにする。


 さて、最後に横井先生から下層間伐、上層間伐、列状間伐-中層間伐の事例を解説されました。


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 最初に下層間伐の繰り返しでできる林分についてです。下層間伐を2回することで林分は良くなるかもしれませんが、2回分の間伐経費はどうするのか?


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 次ぎに上層間伐を2回実施したもの。こちらは間伐収入が得られますが、収入見込みのない細い立木もたくさん残っています。


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 最後に列状間伐後に、2回中層間伐した場合です。一見すると択伐林型のような林分配置にもなっています。

 とにかく施業プランナーは森林所有者さんに納得していただけるデータを示して仕事をさせて頂くことが重要です。
 「この山でいくら稼ぐか」、「この山をいかに多くのお金に換えるか」を念頭に、山に再度お金を投入するための長期にわたる計画を立てられる存在になって欲しいのです。

 今回も朝から夕方まで長時間面倒見て下さった横井さん、大洞さん、渡邊さん、そして睡魔に打ち勝って頑張り続けた研修生と普及員のみなさん、ご苦労様でした。

以上、報告、ジリこと川尻秀樹でした。