なぜウィンザーチェアなのか。ここは「森林文化」と名のつく学校なので、実習の課題はこの地域で使われてきた生活道具に因んだり、地域の材料や文化を生かすことを心がけています。ところが椅子となると、日本には古い歴史がありません。そこで、西洋で古くから作られてきたもの、木の特性を生かしたもの、日本へも早くから紹介されて影響を与えてきたもの、としてウィンザーチェアを選んでいます。
出典:「現代の木工家具」東京国立近代美術館図録 |
お手本にしているのは、ウィンザーの名手として知られた故・村上富朗さんのサックバックチェアです。板の座面の成形(カンナで削る)、脚の旋盤加工(材を回転させながら削る)、丸ホゾ穴あけとホゾ加工、肘かけの曲げ木など、木工の基本的な要素が詰まっています。
5月から制作に取り組み始めています。
初めに行うのは肘かけと背の曲げ木。
椅子の主要部分はクリを使っていますが、肘かけと背だけは曲げに強いナラを使います。しかも節などがなく真っ直ぐなもの、乾燥しすぎていないもの(含水率20%程度)、を選ぶのがポイントです。
上の写真は曲げ木の様子。今年から曲げの道具を改良し、ウィンチで引っ張ることにしたので、ラクラク曲がり、非常に歩留まりも高かったです。材は30〜40分蒸すだけです。
ウィンザーチェアの伝統的な作り方、手回しドリルによる穴開けです。
こんな加工で正確な角度で穴が開けられるのか、と思うかもしれませんが、多少の狂いがあるのを無理やり組み立てることで、逆に緩みにくくもなるのです。
ウィンザーチェア制作の様子を、時折お知らせしていきます。