6月15日の第1回に続いて、8月30~31日の1泊2日で第2回を開催しました。今回は特別講師として、守山拓弥先生(農学博士・宇都宮大学農学部農村環境工学科講師、DASH村の[里山博士])をお招きしました。
第1日、最初の講義は守山先生の「農業環境とそこに暮らす生物たち」でした。守山先生の専門は水田の淡水魚の研究ですが、そもそも水田が生物の生息環境にとってどんな役割を果たすのか、水田の耕地整備や水利システムの改変が生き物・生態系にどのような影響を及ぼすのか、アカガエル、魚類、水生昆虫、フクロウなどを例に、具体的なデータをもとに幅広くお話いただきました。
栃木県内での子ども向け環境教育の実践例、「田んぼの学校」における生き物調査の方法、テレビ番組DASH村での科学的知見と番組ストーリーとの調整など、実例に即したプログラム企画や、伝える工夫についてもヒントをいただきました。
いろいろ新しい視点や方法論を学んだ後で、第1回で「放棄田の雑木伐採と掻き起こし」を行った関市内の水田に出向いて、2ヶ月の間に生物や植物がどのように変化したのか、柳沢先生の指導で調査を行いました。
調査は3つの方法を体験しました。①伐採した放棄田とハンノキが生えたままの放棄田を比較してホトケドジョウの生息数を数える、②伐採した放棄田の3ヵ所に調査枠を設定して植物の発生状況を調べる、③水田周辺で花の咲いている雑草を集めて同定し、人為の影響を推測する。①では伐採田で多くのホトケドジョウが確認できました。②では日照や水流の影響の受けていることが分かりました。③では湿地・草地・休耕田それぞれに特徴ある植物が確認され、日本固有種であるミズギボウシ、キセルアザミも発見することができました。すごい!
森林文化アカデミーに戻って、夜は学生スタッフが腕によりを掛けて作った夕食で懇親会^^/"。全員が持ち寄った「里山活動を楽しく伝えるための私の一品」も数々も紹介されて、楽しく盛り上がりました。
第2日は、もう一つのフィールドで実習を行いました。その前に、農地や水路などで生物調査や環境教育をする際に知っておかなければならない法律知識や届け出について、津田先生から小講義。加えて「外来種(特に植物)」の侵入状況や対処法について、柳沢先生からも小講義がありました。
関市内には住宅や商業施設が立ち並ぶすぐ裏手に「水田素掘り水路」が残る一角があります。江戸時代よりも古い時代の面影を残す貴重な水田環境です。ここで許可を取って水路の水生生物調査を、津田先生の指導で行いました。
古い時代の水田と水路はほとんど高低差が無く、水路を通って魚類などが自由に行き来しています。土壁や土底なので植物も大きく育っています。また自然なカーブを描く水路に沿って道が延び、不定形の水田(今は休耕田)が広がる風景は、どこか懐かしささえ感じさせます。
2~3人で組になって、タモ網などで捕獲した魚類を同定したところ、オイカワ、ヌマムツ、アブラボテ、カワヨシノボリ、トウカイコガタスジシマドジョウが確認できました。あと多数のアメリカザリガニも…。守山先生のコメントも交えながら、こうした水田を生息環境とする魚類、貝類、昆虫類などの生活史を聞いていくと、今まで見えていた「草ぼうぼうの田んぼ」がなにやら「かけがえのない風景」に見えてきます。面白いですねぇ。
午後は最後のセッション「農業生態系の保全と市民の関わり」と題して、2日間で行った講義や実習をふりかえって、「発見したこと・楽しかったこと」と「理解できないこと・疑問なこと」を3グループで出し合って発表し、3講師が疑問に答えながら、いくつかのテーマについて話し合いました。
皆さんから異口同音に出ていたのは、圧倒的な知識をもつ講師を目の当たりにして、「知識を増やすにはどうしたらいいのか」「自分のフィールドで同じように魅力を発見し伝えられるのか」といった、いささか心配顔な疑問でした。でも3講師とも答えは同様で、「まず1ヶ所自分のフィールドを丁寧に見ていくこと」「自分が楽しいと思ってやっていれば、自然に他人にも伝わる」ということでした。皆さん心配しないで、知識は後からついて来る!
記: 山村づくり講座 教員 嵯峨創平