2015年6月24日水曜日

シカによる獣害にどう対処するか? 

人かシカか、捕獲か防除か、攻めか守りか


 みなさん、JIRIです。本日はクリエーター科2年生が学ぶ「野生動物管理実習」について紹介し
ます。
 今回の授業には、郡上市でNPO法人「メタセコイアの森の仲間たち」を主宰され、猪鹿庁長官で
ある興膳健太さんをお迎えして、先日設定した獣害防除柵やセンサーカメラ、その他の取り組み、
獣害対策白書についてお話し頂きました。


 郡上市では今年度から「森林動物共生サポートセンター」を設置し、猪鹿庁はこれも受託して
います。

 さて、学生が5月にネット柵を設置した現場は下の図+写真(赤線)の部分、このように高さ2m
のネット柵をつくり、その周囲にセンサーカメラを設置しました。

 

 センサーカメラを設置する理由は、周辺に①何頭の群れが、②どれくらいの頻度で来ているか、
を把握するため。 こうした下調べをせずに、中途半端に捕獲すると、シカが学習してしまうため
意味がない。 行動様式を把握して一網打尽に捕獲することが重要。

 センサーカメラの画像データをパソコンで解析すると、ニホンジカ以外にイノシシやニホンザル、
タヌキ、ハクビシン、人間、揺れた樹木が写っていた。

 また上の図で、QとRのポイントは獣道が近くにあり、8日/26日中、6/26日中画像が撮影され
ていました。


 夜間撮影された映像には複数のシカが素早く動きながら摂食する姿が映っています。

 時折耳が動き、敏感に音を聞き分けているのが判ります。


 馴れてくると日中にも活動しており、ネット柵に沿って移動していることがよく分かります。

 こうした映像から、どこを下り方向で使用しているか確認して、その場所に罠を仕掛けるのです。


 興膳さんは「捕獲には経験も需要だが、初心者でもセンサーカメラを使えばベテラン猟師に
近づける」ことを解説され、その読み取り方について、図化しながら説明してくれました。
また「シカの捕獲」が公共事業化しつつあることも情報提供して頂きました。

 捕獲事例でなるほどと感じたのは
  林業で皆伐したらすぐに苗を植栽し、数日後にネットを張る。これでは苗が食べられる恐れ
 もある。
  しかし皆伐して、すぐに防除ネットを張り巡らす。その時、ネットは一周被うのではなく、所々
 数カ所のネットの切れ目(入り口)を作っておく。そしてセンサーカメラでシカの行動様式をよく
 観察してから、複数の罠を仕掛けて一網打尽にしてから、苗を植栽して、入り口を塞ぐ。


 猪鹿庁では、千葉、新潟、山梨の団体と「ふるさとけものネットワーク」を形成し、その事務局
をつとめられています。

 この獣害対策白書の内容が面白い。これを作成したのは、
  「獣害対策にかなりの予算が投入されているのに、なぜ効果が上がらないのか?」という疑問。

  実に、1745の地方自治体にアンケートを送付して、回答のあった612の自治体の内容をまとめ
たもの。


 アンケート調査からも、イノシシやニホンジカが日本列島を北上していることが判る。

他にも、担い手育成が出来ていない。持続的な獣害対策が出来ていない。専門機関との連携が
出来ていない。捕獲個体の利活用は検討していない。費用対効果は出来ていない。などの、
自治体の回答が見られました。


 さて、最後に「くくり罠」の設置実習です。

 今回は室内で、どのように仕掛けるのか指導してもらって、学生が同じように実践です。


 下の写真は、今回実習に用いた「くくり罠」と「センサーカメラ2種」です。


 興膳さんは、「カメラは単に設置すればよいのではない。なるべく広範囲に撮影するための設置
場所は、そして見た目ではなく、本当に映像に撮れるようなアングルはどうか?」をしっかり確認
することが重要」とアドバイスされました。

 
以上報告、JIRIこと川尻秀樹でした。