グリーンウッドワークの講座を受講後、アメリカやスウェーデンのグリーンウッドワーク仲間達(というより大先輩たち)とともに各地を旅しました。
アメリカ東海岸のカナダとの国境近くに、建築家で教育者であったウィリアム(ビル)
・コパーズウェイト William Coperthwaite が暮らした建物があります。彼は2013年に交通事故で亡くなるまで、世界中に300を超えるヤート(モンゴルのゲルが起源の円形の建物)を建てました。自然との共生をテーマに質素な暮らしを試み、自らの手でものづくりをすることに価値を唱え、たくさんの人とともに実践し、影響を与えた人です。
彼が暮らした建物へは、車でアクセスできません。2.5キロほど森の中を歩くと、巨大な円盤状の建物が姿を現します。まず上層階の小さな円盤を建て、ジャッキアップして下層階を建て増していきました。資材はすべて奥の川からカヌーで運んだのだそうです。 メインビルディングの他にも、ゲストハウスやトイレなどユニークな建物が点在します。
ここには電気も水道もありません。メインビルディングの1階は薪置き場と木工作業場。
2階はリビングルームと書庫。
3階は寝室です。
彼の著書「ハンドメイド・ライフ」には、
・よりよい社会を築くため、多くの人に刺激を与え励ますのが自分のテーマであること、
・手を動かしてものを作ることは、人を育てる大きな力を持っていること、
・そのためには、教育者こそ学び続ける姿勢を持ち続けなければいけないこと、
・世界中の伝統的なものづくりや暮らしの中にこそ、学ぶべきことがあること、
・・・などが記されています。(ISBN 978-1933392479)
その言葉どおり、生涯を通じて実践したことが見て取れます。身近な材料で誰にでも作れることを目指して設計された椅子の数々。
世界中を旅する中で集めた民具や書籍。 日本のものもたくさんありました。電気も水もない森の中で、思想は世界とつながっていました。
スプーンづくりは、とりわけ好んで取り組んでいました。スプーンは暮らしを象徴する道具なのです。実はこの中に、今回ともに旅したヨゲ・スンクヴィストさんの父、ウィレ・スンクヴィストさんの作ったスプーンがありました。ウィレさんが1960年代にスウェーデンから初めてアメリカに来たときにビルさんと知り合い、交流を続けてきたのだそうです。
息子のヨゲさんにとっては、父の足跡を辿る旅でした。彼は森で若いカバの木を切り、スプーンをつくりました。亡きビルさんに捧げるスプーンにするそうです。
http://www.yurtinfo.org/the-yurt-foundation
http://www.billcoperthwaite.net/