2016年2月18日木曜日

魂に響く『心のユニバーサルデザイン』

感動した課題研究発表公表会


 みなさん、JIRIです。
今回はクリエーター科林業再生・山村づくり・IP養成・木造建築・ものづくり)の課題研究発表
公表会の様子をお知らせします。

 私個人的に、年をとったせいでしょうか? 今年は感動し、嬉しさで涙ぐむ発表も多くありました。

 大変申し訳ありませんが、私が写真を撮ることができた方々を中心に、発表の内容を紹介します
が、最後に発表された深尾忠明さんの内容について、涌井学長が「心のユニバーサルデザイン
の重要性について触れられ、皆が充実した一日を過ごしました。

 最初の発表は、いつも元気な”飯じまん”こと飯嶋郁雄さん。彼は「航空レーザーデータを利用
した樹高・本数密度の把握手法の提案」です。
 長野県から貸与された航空レーザーデータを利用し、高い精度で樹高と本数密度を算出し、
そこから相対幹距を求めて、施業の優先順位づけをしていました。

 涌井学長からもレーザーの偏差修正の話など、いろいろコメントを頂きました。


 次には”若”こと遠藤和則さんが、「人工林資産価値評価と収支シミュレーションに関する提言
です。
 山林経営に詳しくない人でも、経験知・暗黙知を形式知化し、標準的な収支を得られるように
する。前職のIT技術を駆使することで、経験の浅い素材生産業者でも見積もりできるようにする
ことが可能となりました。


 つぎは、”りっちゃん”こと黒木理沙さん。彼女は「里山林利用のための薪販売の一例」として、
関市のツブラジイの伐採と薪販売から得られた知見を発表。

 里山林整備が進まない理由は何か、そして山林所有者もなんとかしたいと思っている。そうした
現場の状況から、最も簡単に里山整備につながる方法は何か。 やってみると、森林所有者も、
「作業できないから管理できない。お金に換えるすべがないから管理できない」という現実を紹介。


 次の”あづねぇ”こと下西あづささんは、「安全な樹上作業のためのテキスト翻訳とその有効性
について発表。

 現場でのOJTや翻訳本ニーズの有無、その適合性を、多くの実践者から聞き取り調査し、同時に
作業体験することで、翻訳の方法も独自に検討した。


 次の”へぇ~さん”こと中新井耕平さんは「低線量地域の森林で働くことはできるのだろうか」と
いう題目で、自分が今後活動する栃木県での空間放射線量などについて、調査し、正しい情報
と正しい数値を把握することで、精神的負担が低減すること。自分の活動エリアは安全であること
などを発表。

 会場からは、実際に福島方面へ毎年活動に訪れておられる水野さんから
 「作業粉塵を吸い込むことによる内部被爆」をもっと重視すべきと。そしてこの岐阜での放射線
と2.5マイクロシーベルトという数値が示す差も充分考えることが重要とアドバイス。


 次の”まっちゃん”こと松葉壮平さんは「材木屋が考える6次産業化」と題して、家業の材木商が
今後生き残るために、DIYユーザー向け商品の販売可能性を検証しました。

 DIYユーザーは単価が高くても、一品物に手を出す傾向があるが、自分が用意した木材の品質
管理などに問題があることなど、改善点も多く見つけられていました。


 次は”あおさん”こと青西和孝さん。「片知地域における住民と入山者の交流の場づくり」 と題し
て、自分が現在住んでいる片知はボルダリングやサイクリングでも有名であるため、地域の行事と
そうした外来の人たちを結ぶことの重要性を感じ、地域の人と入山者もお互いが理解し、共有の
組織を作ることの重要性を発表。

 次の”ばらさん”こと榊原ひとみさんは、「街路樹の健康状態の違いと生育環境について」と題し
各務原市の街路樹であるカツラとヒトツバタゴを事例に、各務原市役所や近藤造園さんにもお世話
になりながらの調査。
 温帯性のカツラと暖温帯性のヒトツバタゴについて、気温や蒸散量、日照時間など様々な視点か
ら解析し、相当高度な研究内容でした。


 次は”がたさん”こと西潟洋一郎さん。「幼児連れに優しいカフェの基本計画」と題して、美濃市で
実施した親子カフェのニーズ調査、親子カフェの実施など、地域のニーズをどのように取り込めば
子育てに優しい地域になるのかを検証しました。
 まさしく地方創生に向けてのイイ取り組みでした。

 次は”あいちゃん”こと早崎大樹さん。「農村景観を流下する小河川の植物の多様性と自然環境
の関係について」、岐阜市北部を流れる小さな水域に生息する貴重なヤナギモや、ミゾコウジュ、
テンツキ・オニガヤツリなどを観測し、外来種のオオカナダモを減らすために河川を掃除して流速
を高めることなどを提言しました。


 次は”棟梁”こと前原融さん。 ”わらび餅ショック!”と言いながら「わらび粉生産の復活による
地域の活性化の可能性を探る」と題して、高山市の朝日地区や飛騨市の山之村でのわらび粉
生産活動を通しての地域活性の可能性と、そのわらび粉の品質など、京都のお菓子屋さんなど
とのやりとりを紹介。

 わらび餅を作る場合、①わらび粉、②わらび餅粉 がある。

 よそ者が地域に入るためには、地域に住んで、地域の人の手を借りながら一緒に考える。
そして、上質なプレミアわらび粉を生産する。
 
 この場で、早速将来のわらび餅の注文も入っていました。 

 次に”のえちゃん”こと幾島野枝さんは「つながりに気づく教材としてのニワトリの可能性」と題し
一パックの有精卵を孵化させることから、持続可能性とは何か。生まれ、育ち、死ぬことのサイクル
「見えやすい」「身近」であることによる気づき。

 鳥インフルエンザの問題はあるものの、ニワトリは教材としてふさわしいことを実証。


 この内容にたいして、現在、都留文科大学教授で、元森林文化アカデミー教授の高田研先生
からニワトリを飼うことの意味合い、それから得られる知見の検証方法につて、アドバイスを頂き
ました。


 幾島さんのにこやかな発表のため、今回は森のようちえんやプレーパークの参加の親子も
楽しそうに聞いて下さいました。
  私も思わず、嬉しさで涙腺が潤みました。

 続いて”ダオさん”こと稲田賢さん。彼は「より時代にあった安心できる木造住宅の耐震設計に
向けての提案」と題し、構造解析を用いた耐震設計の可視化・データベース化の概念を実用化に
向けてアプリケーション開発することを発表。

 次の”上ちゃん”こと上野浩一さんは、「設計者の視点を加えた桧の天然乾燥に関する基礎
研究」と題し、ヒノキとスギの天然乾燥試験などを経由して、小冊子「桧の天然乾燥ミニハンド
ブック」を作成。
 内容・デザインともなかなかの出来映えでした。

  ラスト2の”まほちゃん”こと岸田万穂さんは、「古民家の仕立て直し事業の可能性」と題し、兵庫
県丹波篠山で古民家をリノベーションしている(一社)ノオトが手掛けた城下町ホテルの家具を、
クライアントのニーズに沿うよう仕立て直すことで、廃棄される可能性の高い家具の再利用を実
践し、修復とはひと味違う利用方法を研究しました。


 さて、ラストの深尾忠明さんは「電動糸鋸からうみ出されるもの」と題して、自身の社会人スタート
であった社会福祉施設での活動を振り返るように、今後活動しようとしている社会福祉施設での
木工プログラムを通して見えてきたことを発表。

 木工を通しての参加者との心のやりとり、楽しさ、やり甲斐、目標など、表には出なくても様々
なものが発表内容から見えてきました。内容的にも、社会貢献的にも、目頭が潤む発表でした。

 学長からは、発表者一人一人に対し、研究成果のすばらしさを評価するお言葉が・・・・

 深尾さんの発表には、涌井学長から「設備的な生活空間のユニバーサルデザインは認知され
始めたが、本当は心のユニバーサルデザインも重要なんだよね」とのコメント。
 なるほど、その通り。

 

 最後に、学長から「何かあればこの森林文化アカデミーを故郷だと思って返ってきて、また
再び社会の中で頑張っていって欲しい」と声を掛けられたのです。

以上報告、JIRIこと川尻秀樹でした。