2011年9月28日水曜日

平成23年度 第6回 施業プランナー ステップアップ研修

平成23年度 施業プランナー ステップアップ研修 の第6回目の研修を森林文化アカデミーと美濃市神洞の現場で開催しました。

今回のテーマは「路網開設と濁水発生メカニズム、濁水防止手法」で、メイン講師は森林研究所の専門研究員である臼田さんです。

施業集約化し、効率よく伐採、集運材するには路網が不可欠です。しかし、ややもすると森林整備や利用間伐のために作設した路網自体が災害の原因になることもしばしばです。

今後30年以上のスパンで森林の計画を見て行く上で、環境に負荷の少ない路網は重要なポイントとなります。

��.路網整備による主な環境負荷としては
(1)水質(水生生物、養魚場、漁場、取水施設など)
(2)生態系(野生生物の行動圏の分断、動植物の消滅、種子吹きつけなど外来種の進入)

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講義の中では、岐阜県の清流を代表するアマゴの産卵事例や、アユ(鮎)の主食となる藻類への影響など、詳しく説明されました。

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コンピュータソフトのカシミールをつかえば、対象林分の施業図(1/5000)に路網開設危険区域や小流域の集水面積も簡単に表示することができます。
写真では傾斜が急で、地質的にも危険な場所を黄色に色分けした事例が紹介されています。

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��.環境への影響の緩和(ミティゲーション)
(1)回避、(2)最小化、(3)修正、(4)低減、(5)代償 があるが、実際には回避と低減を優先して検討し、どうしても残る環境影響に対する代償措置が必要かどうかの検討を実施する。

��.濁水の調査方法は、
(1)濃度測定、(2)濁度測定、(3)透視度測定 がある。

一般的なのは精製水1リットル中に標準物質(カリオンまたはホルマジン)1mgを含む場合と同程度の濁りを「濁度1度」とします。
ちなみに水道水でも0.4くらいです。河川が濁っていれば20くらいの数値を示します。

午後からは屋外実習です。
実際に屋外で濁度計測定を実施ます。簡易な判定方法から、常設の濁度測定器まで様々を見せてもらい、自分たち自身で実際に濁った水をつくって測定しました。
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写真の機械は濁度計(タービディメーター)です。

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次に、美濃市神洞の作業道開設現場に移動。
平成21年度末に完成した作業路の路面に間伐木の枝条を敷いた場合、開設のままの場合など、路面が何かに覆われているか否かで、路面の土砂の流出量が違うことを試験している現場を見学し、臼田さんからさまざまな説明を受けました。路面からの流出土砂量は想像以上に多いことに気づかされました。

路面勾配10度(18%)の路面全体をヒノキの枝条で被覆すると、流出土砂量は1/50に減少し、また路面の土砂を緩衝するための緩衝林帯としては50m程度必要なことも分かってきました。

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次に、一般的な工事では「切取法面」や「盛り土法面」は種子吹きつけによる緑化が実施されることが多いのですが、
(1)法面吹きつけしても植生がうまくできなかったり
(2)吹きつけが冬になってしまい、発芽に時間がかかるうちに法面から崩落が発生したり
(3)吹き付けて成長した草がニホンジカの格好の餌になっていたり
様々な問題があります。

そこで、「多機能フィルター」という養生マットを法面に被覆して、単に「土羽打ち」しただけの場合と比較していました。多機能フィルター設置場所はまったく浸食されていませんが、種子吹きつけの法面は開設以来4cmも浸食され、その土石が路面に堆積しています。

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最後に濁度計の設定された谷(沢)に施された「洗い越し」を見学です。谷部は規定面より2m近く低くなっていたので、コルゲート管やコンクリートボックスを入れて路面を作るのも一案ですが、単価的に洗い越しが安かったようです。

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次回のステップアップ研修は来年1月です。それまでみなさん、各職場で抱えた問題を再精査し、さらなるステップアップを目指す予定です。

報告 ジリさんこと川尻秀樹でした。