2013年1月31日木曜日

美浜町の炭窯を訪ねました。


 『山の駅 ふくべ』の炭焼き部会の研修で、愛知県の知多半島 美浜町に炭窯を訪ね地元の炭焼きグループと交流させていただき、貴重なお話を伺うことが出来ました。 

   先ず、当日のコーディネートをして下さった『炭宝社』代表 神野さんと 『モリビトの会』副理事長の杉浦さんから耕作放棄地や放置竹林の現状や整備の取組みなど伺いました。
 モリビトの会は、美浜町の里山保全のために、竹林の整備おこなっているそうです。正式には『美浜町竹林整備事業化協議会』と言い、放置され拡大を続ける竹林を継続的に整備することで、里山等の景観の整備、地域農業の活性化、文化の伝承、地域観光の活性化等に貢献されているそうです。活動の継続性を確保するために事業化を目指して立ち上げられた協議会だそうです。

 
 『炭宝社(たんぽうしゃ)』は、美浜町の里山・竹林整備を行い、そこから出てくる天然木、竹を材料として利活用することをおおきな目的とし、平成194月に設立されたそうです。
 また、移動式の炭焼き窯をイベント会場、会社敷地、里山や社寺など林現地に設置し、環境イベントの参加者にCO2(地球温暖化)問題を考えてもらうきっかけにするなどの啓蒙活動や企業のCO2削減の対策の一環として剪定木、木質廃材などを炭にして敷地内へ散布し炭素を固定する等の出張炭焼き作業も行っているそうです。

『荒れた山や竹林を手入れし健康な林にし、自然の恵みを楽しめるようにする』
『社寺林を手入れして、美しい社叢(しゃそう)(※1)を作り社寺の荘厳さを増し散策が楽しめるようにする』など、代表の神野さんのことばからは、炭宝社が株式会社でありながらNPO的な心意気で山林・竹林・社寺林などの整備作業をされているのだなあと感じました。


  5㎥の炭材が入る黒炭窯『烽火窯(のろしかま)』の中も見せていただきました。
 
 この容量0.4㎥の機械窯は、比較的短時間に良質な炭が焼けるそうです。

   土壌改良材(粉炭)や住宅建築用調湿材(不織布入り)など炭破砕した竹炭の使い道など詳しく伺いました。

   美浜炭焼き研究会は、平成11年に、説明会や炭焼き講習会を経て、老人クラブを主体に発足した、町内18地区の炭焼き研究会により設立されたもので、「『自然と共生する町づくり』の一環としての里山保全と資源の再利用」、「高齢者の生きがい・健康づくり」、「竹炭による飲料水や河川の浄化」、「農薬代替に竹酢液を利用し環境保全に貢献」、「炭焼き技術の向上と普及」等を目的に設立されたそうです。

 その内の、『上野間、緑苑 竹炭研究会』の『鵜の池窯』を訪ね、会員の方々と交流させて頂きました。

   竹の玉切りや割って、節を取るなど炭材づくりを実演して見せていただきました。

 独自に改良された炭焼き窯の構造など詳しく伺いました。


     煙道と竹酢液を取る冷却筒に竹を上手く使っているので感心しました。

    長い竹の節の抜き方や竹酢液の蒸溜の仕方も詳しく教えていただきました。


   U字溝の囲炉裏のたき火に当たらせてもらい、焼き芋までいただき話を伺いました。
  美浜町の放置竹林は、現在化学繊維の網に変わってしまった『海苔ひび』(※2)に使われていた孟宗竹が、伐られなくなったことで放置され拡大を続け、町の全森林面積の四分の一を占めるまでになってしまったそうです。

その放置竹林を整備し排出された竹を炭に焼くことで優れた土壌改良効果を持つ『バイオ炭』になり、とりわけ竹の消し炭(ポーラス炭)や竹のチップは、化学肥料や農薬に頼らない『土づくり農業』への転換の切り札になるということです。そうすると、困りものだった『放置竹林』が『宝の山』に見えてくるということです。

 黒光りする竹炭は、ご飯炊くとき炊飯器に入れるととっても美味しくなるそうです。また、竹炭は、脱臭剤や耕作用土の改良剤としても使えるそうです。

  まだまだ話は尽きませんでしたが、「今後も交流していきましょう」と… 鵜の池窯をあとにしました。
 
    次に本格的な備長炭窯を見せていただきました。
   備長炭と言えば紀州備長炭が有名ですが、知多半島南部にはウバメガシが自生していて、その利活用を目的に和歌山から専門家を招き本格的な備長炭窯が平成12年に作られたそうです。炭焼き研究会の方々が炭焼きをして管理してこられたそうですが、会員さんの高齢により、ウバメガシの切り出しや一週間以上かかる炭焼きの管理などが難しくなり、最近では有志により年に一度、イベント的に炭焼きをして窯を守っているそうです。

 ウバメガシが自生していて、本格的な窯なのにもったいないな~と思いました。
  「炭宝社の」神野さま、「モリビトの会」の杉浦さま、上野間、緑苑 炭焼き研究会のみなさま、とてもあたたかく受け入れていただき、ありがとうございました。

                                                                                      山村づくり講座 研究生 ふじお記

 
炭宝社、モリビトの会の活動などについて詳しくは、下記URLをご参照下さい。
炭宝社             http://www.tanpousya.jp/

モリビトの会       http://moribito.org/index.html 

 ※1 社叢(しゃそう)、社叢林とは、
    神社に付随して本殿や拝所、参道などを囲むように配置され、維持管理されている森林で、鎮守の森(ちんじゅのもり)、鎮守の杜(もり)ともいう。

 ※2 海苔篊(のりひび)とは、
養殖する海苔を付着・生育させる資材で、古くは木や竹の枝を水深に応じて適当な長さに切り、海中に差し込んだ『粗朶(そだ)ひび』が用いられていたが、現在は合成繊維の縄などで作った『網ひび』が多い。   
『粗朶(そだ)ひび』の内、竹を使ったものを『竹ひび』といい、孟宗竹を使用していた。『竹ひび』は、海苔の養殖の盛んだった浅草沖では、江戸時代後期から使用されていた旧来からの海苔ヒビで、昭和24年に化繊の『網ひび』が使用されるようになってからは少なくなったが、昭和30年代中頃までは補助的に使われていた。『竹ひび』を使っていた当時の海苔養殖は、海の中に「ひび」を建て、それに付着した海苔を育てるという方法で、自然に海苔が­付着するのを待つしかなく、年により収穫量は大きく異なった。