平成23年度 第5回 施業プランナーステップアップ研修 開催
昨年までに施業プランナー研修を受講し、すでに森林組合や事業体で集約化に取り組んではいるものの
「あの分野が少し苦手」、「この分野、どうだっけ?」、「相談したくても相手がいない」、「今まで以上に上を目指すんだ」という目標を持った人たちを対象に、岐阜県立森林文化アカデミーでは「ステップアップ研修」を実施しています。
今回の研修は、森林整備課の池戸技術課長補佐と長屋技術主査を講師に御願いして、美濃加茂市の(1)今後作業道開設予定地と、(2)既設作業道を材料に、森林作業道開設に伴う伐開幅の出し方とカーブ設置方法及び既設作業道の検証、を実施していただきました。
集約化を進めるための話し合いや境界画定、ここまで来ればなんとか林業ができると言いますが、将来にわたって持続可能な林業を目指すには、作業道開設に対する「確かな目と技」、そして山の「土壌管理」が要となってきます。
安全で排水が良く、崩れることなく、何よりも走行性の良い作業道を計画するための現場踏査は重要です。
最初に、山の勾配(地山勾配といいます)、つまり傾斜を測定します。
参加者全員、地面にはいつくばって必死に正しいデータ収集をします。いい加減な図面で鉛筆を舐めたような設計をしているのではありません。労働的にも大変な作業をしているのです。
地山勾配を測定したら、作業道の設計幅員3mを想定し、「切り盛りくん」を使って路面のセンターや「切り土」なのか「盛り土」なのかを決めます。皆で「切り盛りくん」の適合度合いをのぞき込んでいます。
つまり山の斜面に道を造る場合、道の作り方は3種類あります。
(1)切り土のみ、つまり斜面を削って道路面を作る。しかし、切り取った土砂をどのように処理するかが問題となる。
(2)盛り土のみ、つまり斜面に土砂を持ち込んで埋め立てながらつくるのですが、しっかりてん圧して固める必要があり、かつその土砂をどこからか調達する必要がある。
(3)最後に、上記の両方を併用し、現場からの土砂をどこにも出さない。持ち込まない。理想的なのだが、地質によってはそうも行かず、難しい。
また「切り盛りくん」は、森林整備課の長屋技術主査が試行錯誤して、現場で使える道具として開発した優れものです。これは写真に出すと、特許侵害になるといけないので、見せられませんが、その場で「切り土」も「盛り土」をイメージできます。
次に山の斜面を作業道が開設したときの「縦断勾配」を測量します。勾配は12%以下に設定できるよう、コース変更も含めて測量して行きます。
ここからの作業は既設作業道の検証に入ります。
カーブ設定におけるI.P(Intersecting Point)の割り出しです。I.P.はカーブを構成する接線の「交点」です。
この作業は曲線半径6~9mで設定されているであろうと推測されるカーブのセンターを割り出して、そこにホールを配置します。同じ要領でも一方の路線からポールを立てて、交点「I.P.」を逆推測するのです。
最後に、池戸課長補佐や長屋技術主査から、現場での見方、考え方、既存作業道から見えてくるものなど、様々なアドバイスを頂いて、蒸し暑い一日を乗り切ったのです。
今回のアシナガバチ類による被害が一見発生しました。今年は多くの現場で林業従事者が蜂に刺されており困った有様です。
幸いにも大事に至らず収束しましたが、みなさんも十分注意して下さい。
ご苦労様でした。 報告 川尻秀樹