2012年10月19日金曜日

スギ林皆伐跡地で稚樹の刈り出し

 クリエーター科林業再生講座2年生の『森林施業演習』という授業で、天然更新補助作業である「稚樹の刈り出し」を実習しました。

 森林を伐採した後、天然更新により森林を再生させるのには、多くの不確実性がつきまといます。例えば、目的とする樹種の稚樹が存在・出現するかどうか、その稚樹がちゃんと成長するかどうか、確実ではありません。更新補助作業とは、その不確実性を軽減させる作業です。今回の授業で行った「稚樹の刈り出し」は、伐採後数年を経過した林地で行う、後者の目的樹種の稚樹を確実に成長させるための作業です。植栽地の下刈り作業を思い浮かべていただければ、わかりやすいでしょう。

 実習の場所は、高山市内のスギ人工林皆伐跡地です。先日紹介した『森林技術』で取り上げた「皆伐地B」がその現場です。

 今回の演習は、単に刈り出し作業の仕方を覚えるのが目的ではありません。その作業がなぜ必要なのか、その作業はどんな科学的根拠に基づいた技術なのかなどを理解することが第一の目的です。

 作業に先立ち、天然更新補助作業の意義を理解し、その作業の必要性をどのように判断すればいいかを考えます。 例えば、目的樹種の稚樹が存在しなければ、刈り出しのしようがありません。逆に、放っておいても更新が確実ならば、刈り出しは必要ありません。作業が将来のための投資となるのはどういう場面かを考えるのです。もちろん、それは、目指す森林の姿によっても変わります。


この現場には、市場性のある高木性樹種(クリ・ミズナラ・ホオノキなど)が生育しており、天然更新により経済価値のある広葉樹林が成立する可能性があると判断されました。これには、周辺に広葉樹の母樹が存在することが効いているのでしょう。

 高木性樹種の稚樹は、周囲の植生に対して、完全に頭が出ているもの、頭を覗かせているもの、埋もれているもの、様々でした。刈り出し作業の必要性もあると判断されました。






 人工林のスギに由来するスギ稚樹です。 育ってほしい個体(育成木)には、水色の標識テープを目印に付けました。



 これは、クリの稚樹です。手前のリョウブは、当面の邪魔になりませんので、そのままにしておきます。



 完全に埋もれてしまっていたウダイカンバの稚樹とスギの稚樹です。日が当たるように周りを整理してみましたが、果たして大きく育ってくれるでしょうか。



 刈り出し作業を行うにあたり、樹種名がわからなければ何ともなりません。いつも言っている「樹種がわからないなら、広葉樹林施業に手を出すな」ということも、作業を通じて身にしみたのではないでしょうか。

by 横井秀一