2013年6月29日土曜日

現実林分で施業プランをどう立てる。 「シルブの森」を活用して将来目標を考える。

 現実林分の調査から施業プランをどう立てる。
                      シルブの森」を活用して将来目標を考える。


平成25年度 岐阜県 施業プランナー育成研修 第4回目
  今回は前回測定した森林文化アカデミー演習林の49年生ヒノキ人工林に再度出かけ、その
 林分の今後の施業プランをグループ毎に発表です。
  発表は4グループ、4人が1グループになって、各々の調査場所について、現場での林分調査
 (100m2と400m2の2プロット)データをもとに、今後の施業、伐期、更新などについて発表です。



 このグループの調査地は、収量比数Ry0.83、相対幹距比sr17、形状比84、
 ここを伐期80年、現在850本/haを劣勢木切り捨て間伐で600本/haにし、10年後本数で30%
間伐して約420本/ha、その10年後に250本/haの林に仕立て、30年後には主伐。
 更新計画として、美濃市の特産品である和紙原料のコウゾを植林するというユニークなもの。



 3グループ目はプロットを水平方向10m×上下40mの縦長にとり、そのデータをもとに検討。
 本数密度1180本/ha、材積350m3/ha、平均樹高17m、胸高断面積合計41.21m2/ha、平均
樹冠長率0.336、平均形状比84.3、収量比数Ry0.824、相対幹距比sr17.08とやや込んでいる。

 生産目標を四寸角生産に的を絞り、80年伐期を想定。10年ごとに間伐し、主伐後に再造林。



 4グループ目は、元玉は八寸角の通し柱6m材、胸高直径40cmを生産目標に設定して、100年生
で主伐。
 現在898本/haの林分を10年ごとに間伐し、主伐時には512本/haとする。



 さて、現場からコンピュータのある情報処理室に戻り、「シルブの森」の操作方法を森林研究所の
大洞さんから解説して頂く。
 「シルブの森」は林分の成長予測、径級別の丸太本数や材積などの収穫予測をすることができ
るシステム収穫表です。


 
 早速、自分たちの林分即手データを入力してみると、下の写真のような成長予測が表示されて
きました。
 シルブの森を利用する上で重要な注意点は
  1.意思決定の一助とするためのツール
  2.予測結果をどのように解釈するのかは使う人の技量
  3.どのように森林を管理していくかという方針が必要
  4.精度は「あたらずとも遠からず」


 さて、ここからが問題です。
データを入力したら、各自がこの林分をどのように間伐するのか。
  例えば、下層間伐するのか。中層間伐するのか、下層+あばれ木間伐か。上層間伐か。
・・・・・様々なパターンを考えます。   ねじり鉢巻きして頑張ってます。



 各自の経営方針が決まったら、それをグループ内で発表しあいます。
 

  この発表と協議の過程が重要。

 各自の発表が終われば自分たちのグループとしての統一経営方針を決めていきます。



 シルブの森で間伐方法を検討してみた結果、現場で発表した内容と少し変わってきました。
間伐木の選木方法やサイクル、伐期、本数密度も変わりました。

 下の写真のグループは胸高直径18cm~22cmの「中層間伐」を実施。 こうすると収穫総材積
が増える。



  これまでの常識でよいのか。それを打開する経営プランを提案できるのか。それが問題です。
このグループは当初現場では架線集材を提案していましたが、今回はスイングヤーダに変更。
本数間伐率40%、材積間伐率35%を一回実施して、20年後に平均胸高直径25cm~26cm、樹高
20m、713本/haの林分を皆伐すると変更しました。

 

 下の画面で、間伐するのは赤い部分、緑が残る部分。
   年度変化によってどのような成長予測がなされるかが示されています。
 

 最後に横井教授や大洞さんから、総評やアドバイスを頂きました。
 
1.樹冠疎密度は林分の込み具合や間伐の緊急性の指標にはならない。間伐の必要がないこと
  の指標である。
 
2.収量比数は50~60年伐期の林分で下層間伐することを前提に用いる考え方。これから将来の
  林分予測の中では使えない。
 
3.将来的には相対幹距比で考えるのが妥当。
 

 今回は朝9:00から山に登り、現場で現実林分を前に発表することから始まり、最後のグループ
発表が終了したのは17:00近く、みなさんご苦労様でした。
 今回の研修を通して、間伐木の選木方法や収穫材積についての新たな知見を得られたことと
思いますので、持ち帰った「シルブの森」をより一層活用できるよう頑張って下さい。

 以上報告、JIRIこと川尻秀樹でした。