9月に上棟を終えた今年度の自力建設ですが、屋根仕舞を終え、デッキの試作と塗装を進めています。
後期授業の合間をぬっての作業ですので、目に見える進行が少なくなっていますが着々と進行中です。
今回は自力建設の細かなところも見てみます。
通常の木造建築では、地震や台風の力に耐えるために、筋交いという斜めの材か、合板のような面材を入れます。ですが、渡り廊下という機能性を持たせるために、壁や斜めの材を入れたくないということでいろいろ悩み、たどり着いたのが、太い柱と梁をガッチリ組んで門のような構造を造ることです。
そうするともちろん、構造計算も大変ですが、材の調達がもっと厄介です。先輩から受け継いだ材で必要な大きな材が無かったためです。
下の写真は、実際に使われた18cm×24cmという大きな柱です。
実はこの柱、4つの部材を接着してできています。写真で見ても、どこに継ぎ目があるかわかりませんよね。
木目を見て、接着することで、自然に見えるように工夫されています。
次に、その柱の足元です。建物が完成するとデッキの下に隠れてしまいますが、ここにも工夫があります。(記念に学生の名前がたくさん書きこまれています。)
写真の下の方を見ると、金属のボルトでガッチリ固定されています。このボルトで、地震や台風の力を基礎に伝え、最終的に地盤まで伝えます。
また、柱がコンクリートから少し浮いているのがわかります。これは、コンクリートの湿気を木材に伝えないようにして、耐久性を高める工夫です。
屋根の先端も見てみます。コンパクトな雨樋によく見るとビスが少し見えています。
通常の建物では、既製品の雨樋を取り付けて終わりですが、建物にあった、すっきりと見えるような雨樋にしたいと、いろいろ考えた結果、金属の板を折り曲げてつくったオリジナルの雨樋になりました。
まだまだ、紹介しきれない工夫が山積みの自力建設ですが、ぜひ実物を見て、何でこうなってるのという質問を学生にぶつけてください。その理由は必ずあります。
このような細かな積み重ねが集まって、魅力的な建物が出来上がっていきます。
今回は、少しマニアックな建物の見方でした。竣工まで楽しみにして下さい。
木造建築講座 辻充孝