2014年7月18日金曜日

「お客様の安心をどう勝ち取るか」 山共さんから学ぶ

業界が「常識」とする考えから「脱却」せよ
    

 クリエーター科林業再生講座2年生の『木材の販売戦略』、今回は県産材流通課の中通さん、鈴
木さんとともに、東白川村の「株式会社 山共」さんと、「フォレスタイル」さんで、販売戦略のために
何をすべきかを学びました。

 山と人、山と町を繋げる製材、そう感じさせるのが山共

 最初は山共代表取締役の田口房国さん。
 山共さんが使用する木材は東白川村を中心に、近隣の加子母地区や中津川市、ものによっては
郡上市や高山市から調達し、東濃桧の山地でありながらスギを中心に製材製品を出荷されてい
ます(スギが約7割、ヒノキが約3割)。 取引相手は建築工務店や家具材取扱店、製品市場など
多岐にわたる。


 バーカーで皮むきした丸太をどのように製材し、製品を作り上げるのかを見せて下さった。

 山共さんは注文挽き(注文を受けてから製材品をつくる)のが基本ですが、常に在庫をつくる
ための製材は重要。
 基本姿勢は 「買い手にとって使いやすい製材」 を目指しておられる。

 製材品は梁桁材や柱材、羽柄材など、他に白チップはパルプに、樹皮は堆肥に、おが粉は牛の
敷剤に販売。取引相手は岐阜県、愛知県、長野県が中心ですが、関東圏の人たちの注文も多く、
20社以上。   取引先や情報は足で稼ぐ
 近年は東京都港区の「みなと未来モデル」のための材料も提供している。

 製品は乾燥機に入れるが、売りは「天然乾燥」、板類や子割り材などの羽柄材は75℃で4日間
で含水率20%程度にし、その後は天然乾燥。梁桁材は60℃で一週間乾燥させ、その後に天然乾
燥処理し、再度製材とモルダー処理する。


 山共さんの従業員は16名、全員が東白川村の村民。重要な就労先であり、製材が村の基幹産
業となっているのです。


 製材機によってはサイドからエルボーが出て、製材原木を支える。・・・・私は初めて見ました。

 昔はベイマツ専門で製材されていたそうですが、東濃桧の主産地であえてスギを主体を製材
し始めて12年。 業界が常識と思いこんでいる思考からの「脱却」。
 田口さんの言葉からは常に未来を見据えた明るい林業が思い浮かぶ。


とにかく、お客さんからの見積もりには「24時間以内に回答」する。
 スピーディな見積もりをするため製品の単価表も作成してある。単価には板幅と長さとが効く。

  製材品は「無料四面モルダー」、、「岐阜県内無料配達」、「工務店支援サービス」など、お客さま
目線での7つの約束を提供しています。
 カタログなどに明文化し、お客様に不安を当てない配慮。

 乾燥させる板も、一枚一枚検品しながら丁寧に桟積みします。



 家一軒分の梁桁材の注文が入った「注文書」を手にする田口さん。
予備の人工乾燥はするが、メインは天然乾燥。その過程で梁桁材に発生する「表面割れ」、程度
にもよるが強度的に問題がなければ、天然乾燥の証明にもなる。

 強度や品質的に問題のない「表面割れ」を説明できる工務店と取引されている。プレカットなど
ではなく、手で仕口を刻む大工さんは天然乾燥を好む。・・・・なぜだか分かりますか?

田口さんの今後の考え方の一部を紹介します。
  山共さんとしては、今後製材を独自でこれ以上大きくする考えはなく、周辺の製材工場といかに
連携するかが問題。山の資源を利用する上では製材が重要であり、これ以上投資することなく、
山の木を生かすことが重要。
 また、今後は山で作業する森林従事者の減少が懸念される。自分の会社を充分知り、それを
明文化する。自社の弱みと対比する強みを探し、それを伸ばす。お客様の安心をどう勝ち取るか
が重要とのこと。


消費者に木造の家を身近に感じさせるフォレスタイル

 後半戦は東白川村役場が運営するフォレスタイル(Forestyle)の今井 稔さん。


 フォレスタイルは東白川村役場が運営する建築ソリューションです。主に名古屋などの中京圏を
中心に、東京などの顧客に対応している。

 東白川村はここ10年間で総所得が10億6千万円ほど減少し、これは785人分の生活コストが損失
したことに相当します。
 東白川村の商工会の調べでは、村の半分以上を建築業と建築関連が占めており、この建築関
連事業を伸ばさないと、総収入が増えないとする考えから、木材の利用と建築の増加につながる
フォレスタイルを設立。


 そのため、住宅建築受注量の減少要因とその解決法を検討。
 ①インターネットの普及、②間取り描画システムの開発、③役場という公的機関の関与、
④グループ化による競争原理、⑤建築家との連携、⑥企業化の人材育成 をフォレスタイルと
して実施。

 一般客がインターネット上で家の間取りを設計すると、その概算金額や二酸化炭素固定量も
同時に表記される。

 関東や東海地区の建築士22名と連携し、村からはヒノキの柱材も100本プレゼント。


 WEB上には過去の建築物件も見ることができて、図面上の間取りが実際の写真で理解しやすく
なっており、学生の富井さんものめりこんでパソコンに向かう。


 建築士の方によっては、「ねこくらしのいえ」を提案されておられる方もおり、評判が良いとのこ
と。
 多様な設計士の方々が多様な建築を提案して下さり、そうした建築士と施主さんとの顔合わせも
フォレスタイルが執り行うそうです。


 さて、木材の販売戦略の最終仕上げ。
どのように「商品を売るか」、学生は常識にとらわれない、奇想天外な意見を出すかと思えば、意
外に常識的な意見ばかり。
 こちらが、一生懸命あおって、なんとかいろいろな意見が出そろう。


・「新月伐採に対抗した満月伐採」による木材生産
・「アカデミー独自の認証材」の発進
・「女子大生との連携による販売戦略」・・・男よりもイメージが良く、将来家を建てるとき女性が主導
・「アカデミー自力建設によるモデル住宅」
・「涌井学長が出演されるテレビ番組でのPR」
・「QRコードによるトレーサビリティ」・・・既に実施されていますが、
・「山共さんやフォレスタイルとのパートナーシップ」
・「バックマージンを現物支給」
 
 いろいろな意見が出ましたが、商品を販売する上でのお客様目線が重要。
そこをどう客観的に見ることができるのか。それが重要であり、今まで通りの「常識」という名の
カモフラージュにごまかされていては見えてこないのです。
 
以上報告、JIRIこと川尻秀樹でした。