山村づくり講座1・2年生が学ぶ「都市農山村交流実習」。
前回に引き続き実習地は、日本のマチュピチュ(茶チュピチュ!)とも言われる揖斐川町・春日。今回は森と木のオープンカレッジ「岐阜の山村文化に学ぶ」と合同開催です。オープンカレッジ参加者5名、学生8名、教員2名、15名で春日を訪れました。
現地で私たちを迎えてくれたのは、ほんのり霧がかった山合に広がる茶畑の風景、そして「NPO法人 ぎふ木と森の学校」の森善照さん。午前中は森さんのガイドで上ヶ流(カミガレ)地区の茶畑散策です。
春日の風景には、「やぶきた茶」の畑と「在来茶」の畑とが混在しています。一般的な見分け方として、茶の木がまっすぐ並んでいる畑が「やぶきた茶」、ポコポコ・ウネウネしている畑が「在来茶」です。
ポコポコ・ウネウネにも意味があります。在来茶は、クローンではなく実生で繁殖しています。生えてきた実生を、毎年木なりに刈りこんできたので、自然と不定形になったようです。また、一株一株性格が違うのだそうです。森さんからは、この混在した風景がつくられてきた背景や、在来茶が注目を浴びだしている現状、茅場と茶畑との関係など、さまざま話を伺いました。
茶畑に刈った茅を敷くのが、春日の伝統的な農法でした。木の間に青草の状態で茅を敷き詰めることで、雑草を抑え、さらにはその茅が土壌を肥やしてくれます。本来は茶畑と同面積の茅場が必要だとのこと。しかし今残る風景には、それだけの茅場は見当たりません。戦後の拡大造林の流れで、茅場だった所にスギやヒノキを植林したからです。善照さんたちは今、茅場の復活に取り組み始めています。そこにある想いとは…??
途中から、静岡大学大学院農学研究科教授・稲垣栄洋先生も合流。「日本人と茅との関係がいかに密だったか!」や、人の手が入る茅場だからこそ存在する生物多様性の話などを伺い、散策しながらの談義もどんどん濃くなっていきます。
午後は、シンポジウム「春日の茶栽培を考える~茅場農法がもたらすもの」に参加しました。講演者は三名、この授業の担当教授でもある原島先生、静岡・茶草場農法の世界農業遺産登録に関わられた稲垣先生、淹れたてのお茶に負けないくらい熱々の想いをお持ちの揖斐農林事務所農業普及課技術主査・若原浩司さん、です。
原島先生による会場アンケート。「受け入れる側」と「訪れる側」との意識ギャップが見えた場面も。
「主役は人!」「静岡とは違う、小さい産地だからこそできることがある!」稲垣先生の言葉に、多くの頷きが起きました。
「春日の在来茶は、たしなむお茶ではなく、暮らしのお茶なんです!」若原さんの言葉に春日への愛を感じます。
お三方の講演を伺いました。実際に生産されている方の声をほんの少し聴きました。熱心にメモをされている善照さんの姿が見えました。
あらためて考えたのは「なぜ茅場を復活させようとしているのか」。茅を活かす。茅場に人の手が入る。茅場自体に生物多様性が生まれる。お茶づくりにかける手間(技・工夫・知恵)の多様性がつながれる。茅場に生まれた茅以外の恵みも頂く。そこには、春日の暮らしそのものがあります。春日が生き残るために、お茶そのものではなく、お茶に関わる「人」や「暮らし」、根っこにある「価値観」を発信しようとしている。そのプロセスに茅場の復活があるのかも?そんなことを感じました。
「善照さんや地域の人たちは、何をしているのか? なぜ、それをしているのか?」
春日に向かうバスの中で、原島先生から投げかけられたクエスチョンです。
美味しい春日のお茶を飲み続けるには、課題が山積です。が、春日の人たち、そこに集った人たちとの出会いを刺激に、とにかくキモチとアタマが動き続けた1日でした。楽しい!不思議!ワクワクから学びは始まります!
報告 おかちゃん@岡亜希子
投稿 原島幹典