2015年9月24日木曜日

デジタル工作機械で広がる、木工の表現~サイズサンプルづくり~

ものづくり講座一年生は、前期の授業を通して、「サイズサンプル」というものを作ってきました。木工機械の授業では、機械の操作を覚えながら、ひたすら様々なサイズの木材を切り出し、電動工具の授業では、それらの面取りやサイズサンプルを展示するボードの加工などを行い、木工旋盤の授業では、丸棒の制作を行いました。



このサイズサンプルは、ものをデザインする際に、実際の大きさ・ボリューム感を確かめられるようにするもので、あると便利な教材です。しかし、ただ単にいろんなサイズの木片があっても使えるものにはならないため、使えるものにするために工夫は必要です。

そこで、レーザーでの刻印とCNCによる展示ボードの加工を行うことにしました。

レーザー刻印やNC加工などは産業としては歴史がありますが、個人レベルでできるようになったのはここ数年の話です。昨今何かと話題のデジタルファブリケーションといわれるものですが、3Dプリンターやレーザーカッター、CNCなどの工作機器が一般にも普及してきました。森林文化アカデミーでも同じ岐阜県にある情報科学芸術大学院大学 (IAMAS)に協力してもらい、これまでもそういった機器を使わせてもらってきました。

IAMASのイノベーション工房スタッフより説明を受ける


今回も1年生を連れてIAMASの工房へお邪魔し、レーザーカッターでの刻印と展示ボードの加工をさせてもらいました。

このイノベーション工房の一通りの説明を受け、まずはレーザーカッターでの刻印にトライ。




レーザーカッターについては、教員のほうでデータを準備していたので、特に問題なく無事終えることができました。

次は、展示ボードの加工をCNCで行います。

こちらはベースとなるデータを学生がJw-cadで描き、それをShopbotというCNCで加工できるデータに変換していきます。


デジタル工作機器使う以上、このデータ作りが一番の肝になります。今回もトラブルが発生して機械とコンピューターの行ったり来たりがたくさん発生しました。



でもこうやって使っていく中で、データの作り方や機械の特性などを徐々につかんでいくんだと思います。普通の木工機械であってもやはり癖というものがあって、使う人がそれを理解しながら使います。アナログであろうとデジタルであろうとそのあたりは一緒ですね。

上の写真では、すでに溝が彫られているところがありますが、そこは事前に学生がハンディルーターを使って彫ったところです。実際に自分たちが電動工具で加工したことと、CNCで加工したこと、両方を経験して初めてそれぞれの良さを理解できます。

ハンディルーターでの加工

 デジタルファブリケーションはこれからものづくりの現場により浸透していくと思いますが、それがすべてになることはまずありません。手加工、従来の木工機械・電動工具による機械加工、デジタル工作機器による加工、それぞれの良いところ、悪いところを知り、ベストミックスを考えることが重要だと考えています。



さて、細かくはいろいろ手を入れるところはありますが、こちらがほぼ完成したサイズサンプルになります。 サンプルには、レーザーでサイズ表記され、丸棒や面取りサイズなどのサンプルもあります。ボードは、それぞれのサイズがちょうどよく収まる溝が彫られており、そこにかぽっとはめ込みます。最終的には、サンプルにマグネットを仕込み、マグネット塗料などつかって、カチッと納めるようにしていく予定です。




デジタル工作機器があることで木工の表現の幅が広がると思いますし、効率化も幾分図れるのだと思います。まだまだ試験的にデジタルファブリケーションの導入を図っていますが、上手な付き合い方をこれからも模索していきたいと思うのでした。


さて、 明日は、「木工xFabの可能性~デジタルファブリケーションとものづくりとまちづくり~」というセミナーを企画しています。今回の授業を通して行ってきたことも紹介しようと思っていますが、全体としてどんなお話になるのか、私自身わかりません。でもおかげさまで定員いっぱい。これからのものづくりの在り方を改めて考えるきっかけになればと思っています。