2011年10月8日土曜日

地域林業ゼミで智頭林業地の視察に行きました。

地域林業ゼミは学生の学びにあわせて提供されるちょっと贅沢な授業です。
前期のゼミは、大きく変わった林業政策についての資料を読み合わせ、その賛否や今後の展開について、深い議論を交わしました。

後期のゼミは一転して林業地の視察から入ることになりました。
これは、各自の課題研究を進める上で大変重要である、自分の体で現場を確かめる良い機会となりました。

まず、初日の報告です。

 前田森林植生研究所の前田雄一さんに、智頭の山をご案内いただきました。

 智頭林業は、伐期齢80~90年のスギ人工林またはヒノキ人工林の長伐期施業です。多雪地ということもあり、スギが主体で、もともとは天然スギの伏条枝から取った「さし穂」を赤ざし(旧年枝を付けてさし付ける方法)して作った苗で造林していました。智頭林業は、吉野林業(先週、クリエーター科林業再生講座の1年生が視察に行っている)の影響を強く受けているそうです。

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 これは、60年生くらいの林分です。よく枝打ちがされています。やや密度が濃いように感じましたが、枝打ちがされていることと林道脇であることを考えると、林床植生が乏しいのが不思議に思えました。案の定、シカのために林床植生がなくなってしまったとのことでした。途中、所有者の方にお会いしたのですが、その方いわく「こんなこと(林床から植生が消えたこと)は、初めてのことだ」そうです。

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 これは、ミツマタという和紙(お札)の原料になる植物です。これがやたらと目につきました。きっと、シカの不嗜好性植物なのでしょう。

 智頭では、林床でのオウレン栽培が盛んだと聞いていたのですが、オウレンはちっとも見られませんでした。もしかしたら、オウレンもシカが食べてしまったのかも。

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 こちらは、天然スギです。智頭町では芦津という地区で森林セラピーを進めていて、かつての森林鉄道の軌道敷をセラピーロードとして整備しています。そのセラピーロードが天然スギが生育する森林を通っているのです。多くの、たくましく生きている天然スギを見ることができました。智頭スギは、このような天然スギから穂を取って育てたのでしょう。残念ながら、かつての母樹がどの個体なのかは不明とのことですが、いくつものクローンが確認されており、複数の母樹があったことはわかっているそうです。

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スギが混じるブナ林です。地形が緩く、土壌が発達した場所には、このような森林が成立しています。立地の違いによって成立する森林が変わることを目の当たりし、森林にとっての土壌の意味を実感することができました。ミズナラの大木があったのですが、カシノナガキクイムシの被害で、枯れてしまっていました。皆で「もったいない、もったいない」と言いながら、どうしたら枯れたミズナラの大木を活用できるか、勝手なことを言い合いながら1日目最後のひとときを過ごしました。

by 横井

二日目の報告です。

まずは少し足を伸ばし、隣りの岡山県西粟倉村にある「森の学校」を訪ね、都市企業からの投資を森林整備にあてる事業や、地域材の商品開発、販売についてご説明をいただきました。
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智頭に戻る途中で、とてもユニークなお店で食事をいただきました。
座敷のそばに囲炉裏があり、出されるお料理は全てその地域で受け継がれてきた山菜をとても上手に保存され、美味しく調理されたものばかり。皆感動の体験でした。

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智頭町役場で木の宿場プロジェクトの説明を受けました。冒頭ではなんと、智頭町長さん直々にお話をしてくださいました。

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同プロジェクトは、小規模林家、自営農林家、森林ボランティア等、小さな担い手による低価値木材の集荷システムです。 

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材を持ち込むと量に応じて、地域通貨(通称「森券」)智頭では「杉小判」が渡されます。

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この地域通貨で地元商店街の活性化も狙おうという、大胆な社会実験です。
まだ小規模ですが、この活動に関わる地域の人は徐々に広がっており、皆さんとても楽しそうな様子が印象的でした。
 
                                 by 原島