2011年12月7日水曜日

柳沢 直(教員紹介)

柳沢 直 (准教授)

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��教育や研究についての思い、メッセージ。)
21世紀は循環型社会の時代だと言われています。津波による災害、原子力発電所の事故などは、私たちが当たり前だと思っている生活基盤がいかに不安定なものかを、現実の問題として目の前に提示してくれました。しかし、循環型社会への道のりは、いまだ明確に示されているとは言えません。
一方で、里山の自然に目を向けてみると、つい50年ほど前に日本中で地域の資源が循環利用されていたことを教えてくれます。そこには過剰利用の問題などはありますが、地域の資源を持続可能な形で使っていくうまい仕組みがありました。それだけではなく、里山には縄文以前の時代から人と関わりながら多くの生物が暮らしてきたこともわかっています。里山には学ぶべき事が数多くあるのではないでしょうか。
本学のみなさんには、そういった自然や資源の利用について学んでもらい、新しい地域社会を実現する提案のできる人材に育ってもらいたいと思っています。


��経歴、受賞歴等)
1969年、京都府出身。1991年、京都大学理学部を卒業後、京都大学大学院に進学、京都大学生態学研究センターにて、里山をフィールドに樹木の分布について、植物の水利用の観点から研究。2000年博士号(理学)取得。専門は植物生態学。京都府南部の里山を調査するうちに里山の自然に触れ、その価値を知る。2001年より現職。現在は、人と生物の関わりの中で育まれてきた里山の自然に興味をもち、調査する一方で、新しい里山の利用に取り組んでいる。著作物に「里山の生物と自然」(分担執筆)、水を知る-植物との密接な関係(園芸マニア 1993年10月号)など。

��研究、論文、著書、作品など)
粗朶(そだ)の生産と里山整備を結びつける。

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現在の里山は人の手が入らなくなり、生物多様性も低下しています。そこで里山にもう一度手を入れる仕組みが求められています。粗朶は多自然型工法などで河川工事に使われますが、その材料は里山から集められた柴です。粗朶の生産を里山整備と結びつけることによって、里山と河川の両方に豊かな自然を呼び戻すことができます。森林文化アカデミーでは、実習や短期技術研修の中に、粗朶山・粗朶を使った河川工事現場の見学や、粗朶山の整備を取り入れ、粗朶の認知度を高め、利用を促進するための取組みをしています。

草地の自然の研究。
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草地の自然が危機に瀕しています。里山の重要な構成要素である草地環境は、かつて日本の自然のうちかなりの面積を占めていたと言われていますが、現在ではわずか3%程度にまで減少しています。草地環境は多くの重要な生物の住みかとして機能しています。植物を例にとれば、古くから利用されている草地には、秋の七草でおなじみのキキョウ・オミナエシ・フジバカマをはじめとして、多くの絶滅危惧種が暮らしていることが知られています。草地にはどのような植物が生育しているのか、植物と人の管理との関係はどうなっているのか、東濃や各務原の草地群落を調査しています。