2012年10月8日月曜日

生涯学習講座「木から樹へ 第2回 地域の自然を知る~地域の木での苗づくりと身近な自然の観察~」

連続講座「木から樹へ」の第2回目です。




先週行われた1回目では,廣田先生より地域の木を使った保育園のプロジェクトについて,
紹介がありました。今日は玉木先生から,「地域の木を使う」ということについて,
生態学的な視点からお話がありました。




そもそも「地域の木」とは,生態学的にどういうことなのでしょうか。

植生は,高緯度地域では冷温帯,赤道付近では熱帯多雨林といったように,
気温や降水量によって,分布によって異なります。
日本でも,降水量の差はそれほど大きくありませんが,平均気温が地域によって異なります。

今から1万年ほど前に気温が今より低い最終氷期と呼ばれる時代が終了しましたが,
現在の植生とは,それぞれの地域の気候に合わせて,適応進化している最中なのです。

つまり地域に存在している植物は,「気候的な要因」や「歴史的な要因」を受けながら,
長い時間を経て,それぞれの地域に適応しているのです。

例えば,日本海側のブナを太平洋側に植えた場合,多くが春先の乾燥に耐えられずに,
先枯れしてしまうという,研究結果が得られています。

これは,長い時間の中でブナが地域の環境に適応した結果で,
遺伝子構造にも違いが生じています。

「遺伝子かく乱」ということばが,よく聞かれるようになっています。
これは,人為的に持ち込まれることによって,地域の木と交雑し,
地域の遺伝的構造が,かき乱されるのです。

これを防ぐためには,「地域の苗を使う」ということが大事になるのです。


講義の後は,「地域の苗を使う」ということを踏まえて,
美並のヒノキからとった実生苗を,ポットに植え替えました。

この実生は,保育園の建設に使われた「おばけツリー」と「子おばけツリー」の子供たちです。
この実生苗たちが,100年後にどうなっていくのか。
「孫の家づくりに使えるかな~」などとっても楽しい会話が聞かれました。

午後は,小倉山の散策です。

地域の植生を観察しながら,
各個体の繁殖様式や,分布地域の解説を行いました。



次回,第3回目の「木から樹へ」は,11/3(土)です。
実際に,「おばけツリー」 と「こおばけツリー」が育った山を見にいき,
建築と山の循環を考えます。お楽しみに!