2012年10月25日木曜日


製材・木材加工の見学紹介
製材から木材加工までのエンジニア科対象の授業を紹介します。
エンジニア科の前期の授業、木材の流通にて木材を取り巻く社会の流れの現状を習得しました。
後期になり、この授業にて実際に製材や各種木材加工機械に触れることになります。
今年は合板工場見学ができるようになり、更には家具工場の見学も追加して、より幅の広い加工機械に接することができました。

木材の乾燥の基本は、公式や計算式を暗記するのではなく、意味の理解が重要なのですが、勉強熱心な学生さんは公式を覚えようとする高校生までの癖から離れられないようです。
実際の現場としてはアカデミー内の乾燥施設にて、その機能を見学しました。
次回以降は3つの工場の見学を実施しています。

1弾 国産材合板工場見学
事前に合板と工場の流れのレクチャーをして中津川市にある森の合板工場に見学させていただくことになりました。
合板工場は全国的にそれほど多くある工場ではなく、多分最初で最後の見学となる学生もいることでしょう。原木消費10万立方/年間という大きさは、製材工場からは考えられない規模でもあるし、しかも国産材のみの合板工場となるとぜひ見ておくべき現場でもあります。

蒸気で蒸された原木が工場に入って行きます。ロータリーレースによるかつら剥きの速さに圧倒されて入っていくと、長い乾燥ラインが待ち構えて、出口では既に乾燥済となっています。調板工程はよく確認しないと、見ていても、理解できずに見学終了となってしまいます。
森の合板工場
単板の強度、含水率検査のラインはブザーが鳴ってトラブル状態でしたので、近くで見えずに残念でした。そこで仕分けてストックされた単板がコールドプレスで与圧した後にアコーディオンタイプで投入されるホットプレスへと向かいます。
 
事前に工場のラインと役割を勉強したものの、流れに圧倒されてみなさん確認できたのか疑問でもあります。ただ、出口での何台ものトラックが出荷へと待機している様を見て、動かず生長しつづける森林のイメージを持っていた学生さんには、その対極として常に動いて生産している森の工場の現状を実感したのではないでしょうか。

2弾 大規模製材工場見学
飛騨高山森林組合製材工場
 飛騨高山森林組合の製材工場を見学させていただきました。
この工場は昨年も見学させていただいていまして、その状況も毎年変化していることを実感しました。稼動して6年経過した工場ですが、隣接する原木ヤードには5000m3分の原木をストックしていて、年間20000m3原木消費規模の工場に対し、寒冷地特有の積雪による冬場の減量分対策が重要な位置づけであることを再認識した次第です。

昨年お伺いした状況と変化したことがあります。それは製品出荷先の大幅な変更に伴い、スギ桁オンリーからヒノキの柱など多品種生産体制をとっていることでした。また、地域の製材工場との連携により、一棟分の製品をすべて供給する体制に変えていることでした。
規模の大きい製材工場が地域で維持するには、それなりの地域連携体制をとることが重要なことであることが実感した見学でした。

3弾 飛騨産業株式会社見学

飛騨産業木取りライン


 飛騨産業さんといえば、曲げ木の脚物家具で有名ですが、昨年工場を新工場へ移転しているとのことで、アカデミーのエンジニア科としては始めての見学です。
 今年の学生には飛騨の出身者が居なかったこともあり、この会社を知っている学生は少なかったようで、案内していただいた部長さんには申し訳ない次第です。ただ、20歳前後の学生にとって、自らの家具への要求はまだないのかもしれないとも思います。

まずは廃材木屑ボイラーから説明が始まります。工場内へは自動式のシート扉で入るのですが、ボイラーの熱で室内が暖められていることで、なぜボイラーからの説明か?ということに納得がいきました。自動的に扉が閉まり、内部に目を移すと木取りのラインから始まって行きます。
久しく見なかった人だらけの工場という印象が第一印象です。それだけ手作りに徹しているということを感じえた瞬間です。木取りされた後はそれぞれの要求されたパーツごとに切削加工されていくのですが、人の動きを考慮して、人ひとりの周りに機械が配置されている様は、家具に限らず製造業ラインの基本を改めて感じた現場でした。
特徴である曲げ木の工程部分が思いの他小さなところで製造している印象を受けました。
創業以来90年以上のノウハウはそう簡単に学生には理解できなかったかもしれません。

この会社では国産広葉樹原木の入手難から新しいテーマに挑戦していました。地元スギ材の圧縮木材を家具に使うという試みです。本社工場の一角に2名ほどで圧縮工程を実施している現場を見学させていただきました。特殊な多段式ホットプレス機で、圧縮をかけるようで、木材内部まで圧縮し、製品化できる会社は全国に2社ほどしかないとの説明でした。
学生はくねくね曲がる木がもっとも印象的だったようです。

北山部長より圧縮スギの説明を受ける
学生の質問に多かったのは仕事としての求められる資格や待遇、仕事の中身、技術でしょうか。もっとも印象的だったのは、従業員の技能認定一覧のコーナーでした。従業員の技能、技術を認める会社の体制、仕組みを会社経営の基本においていることを垣間見た場所でした。

今後の授業
 この授業では、最後に少しでも製材体験をすることを考えています。
来年度の自力建設用の木材が演習林から製材の場所に運び入れています。