2013年7月3日水曜日

「聞き書き」から、農山村に生きる作法と心意気にせまる


生涯学習講座「農村で起業?でもその前に」(2回シリーズ)の第1回を6月29日(土)に開催しました。近ごろ、都会で暮らしながら、自然の中で働き・自然な物を食べる田舎暮らしに憧れる人が増えています。そこで人気の職種が「農村カフェ/農村食堂」です。今回はその現場を訪ねながら、でも「移住や起業?その前に」農山村に住む人々の価値観を知り、地域社会の付き合いの作法を知ることで、より良い「農村で起業」の助走にしてもらおうという講座です。

第1回のテーマは「田舎暮らしの作法とは」。今回の参加者は既に農山村に住んでいる方も多かったのですが、田舎人と都会人の価値観のギャップや、お互いのすれ違いで起こるトラブルを防ぐための基本事項を原島教授が講義しました。



次に、「聞き書き」という手法の紹介です。高校生100人が森・川・海の名人100人に聞き書きを行なう「聞き書き甲子園」が話題になっているように、「聞き書き」というシンプルでありながら人の生き方や心の深い部分に迫ることができる手法のことを、作品の実例や具体的な方法論とともにお話いただきました。この方法を用いて、午後は参加者が「農村食堂」の実践者に「ミニ聞き書き」を行ないます。

郡上市明宝で「自然食泊 愛里」を営む石田賀代子さんを訪ねて、まず全員で昼弁当をいただきました。地元の山野で採れた山菜や野菜を使った見事な料理。色鮮やかな盛り付けと味の良さは、さすが全国「農山漁家民宿おかあさん100選」の認定者です。



さて、午後から「聞き書き」のモデル実践として、石田千賀子さんと原島先生との対話が始まりました。幼少時代から千賀子さんは「自分を支えてくれるのは自然だけ」と思い定めて野山の植物を覚えていったこと。30歳でご主人と共に「愛里」を開業してから、地元の料理名人のおかみさん達を訪ね歩いて料理法の教えを乞うたこと。それら全てが現在の「愛里」の料理を支えていて、教えてもらった料理の技を「忠実に守りたい」と賀代子さんはおっしゃいます。皆かたずをのんで聞き入っていました。



午後の後半は2班に分かれて参加者自らが「聞き書き」体験をする時間です。第1班は明宝で「おとき料理」の復活を実現させた置田いほ子さん・置田みき子さん。かつて人が亡くなると集落が協力して葬式を出していた時代、葬式(おとき)料理は地域文化でした。しかし村にセレモニーホールができて葬儀の形が変わり、おとき料理も廃れていきました。2年前から、いほ子さん・みき子さんを中心に「里山の生活文化」として新しい形で、地域の人や都会の人に食べてもらって評判をとっています。



第2班のゲストは「めいほう鶏ちゃん研究会」会長の小池弘さん。今では観光協会会長、地域づくりNPO理事を務めるなど明宝の地域づくりリーダーですが、もとは結婚を機に明宝へ入られたとのこと。明宝村の高田三郎村長が展開した明宝トマトケチャップ、明宝ハム、明宝スキー場などの事業化で村おこしに燃えた時代の熱い思いが、「明宝スピリット」として今も受け継がれているとのことでした。でも、その時代を知らない(低成長が当たり前の時代に育った)30代以下の若い世代は、おっとりした明宝気質を受け継ぐのは良いが、かつてのような挑戦心がなくなってきたのではないかと心配されていました。



変化が少ないように見える田舎の社会も、時代につれ、人の心意気によって、変化をしていくのですね。そんなお話の中から、起業を考えるためのキラリと光る教訓を受けとめた一日でした。



次回は7月13日(土)に「農村起業のイロハと成功事例」と題して開催します。まだ若干名の応募を受付中です(詳しくは下記)。
http://gifuforestac.blogspot.jp/2013/05/blog-post_1.html


記:山村づくり講座 嵯峨創平