毎年エンジニア科、クリエーター科合同で行われているコロキウムという授業。設定されたテーマについてみんなで考え、議論する時間です。
今年最初のコロキウムでは、2部制で、第1部に「人の暮らしと森林とEco-DRR」と題して涌井学長の講演を行いました。
自然との共生と、またその自然資本を活用した災害リスクの低減。森林文化アカデミーにとっては非常に重要なテーマでもあります。
国際的には、5年前の愛知で行われたCOP10で自然との共生を目指すことを確認し、さらに2012年に行われたCOP11ではインド政府が掲げた「Nature Protects if she is protected」というテーマから自然との共生が 災害リスク低減につながるという考えに発展していきます。
研究者によると、地球の環境が許容できる気温上昇は2℃であり、この100年ですでに0.85℃も上昇し、年間4万種(一日100種)が絶滅していっているという事実。
そもそも、地球46億年の時間を1年で換算してみると人類の誕生は12月31日の大みそかであり、産業革命は23時59分58秒。人類は、たった2秒で地球の歯車を狂わせてしまった、ということになります。近年増える大規模な自然災害やエボラ出血熱などのウィルスの脅威。これらは全て人の欲望が生み出してしまった現象なのです。
科学技術が自然と対峙する形で発展してきており、これ以上科学で自然をコントロールしよう、という考えに限界がきています。そんな中、自然の力にある程度ゆだねるしかない、と国際的に日本人が古来から 培ってきた自然と共生した暮らしが評価されているそうです。
人間の他の生物に共感する能力(バイオフィーリア)と生まれ育った故郷や馴染みのある土地に幸せな感情を抱く能力(トポフィーリア)。人は自然と向き合うことで癒され、幸せを感じます。
今後人口減少による経済衰退に見舞われる日本は、リニア新幹線などを用いて都市の力をさらに増強し、生産性を高めようとしていますが、人として自然に還ることで豊かさを感じることも重要です。そのような意味では、地方の森林空間の価値、里山の生態系、暮らしの価値は非常に高く、それらのベストミックスを目指すことで、持続可能な社会となり本当の豊かさを得ることができるのではないでしょうか。
これらの話は、地球規模で大きなことですが、いかにアカデミーの学びが今後とても重要で貴重なものかを示しています。アカデミーで学ぶ学生たちが、自分ごととして考え、今できるアカデミーでの学びに対し精いっぱい取り組んでほしいと願います。
::文責 和田 賢治