この授業は、全国で先進的に取り組む地域・人・組織に注目し、現地現物から学ぶことを重視している授業であります。
とても密度の濃い2日間であり、越前市役所産業振興部姉崎課長、越前指物協同組合理事長上坂さん、Hacoa青山部長には大変お世話になりました。ありがとうございました。
今回は教員の松井がとても共感した「若いチカラ」に焦点を当て、2回に分けてコメントしたいと思います。
先ずは、鯖江市TSUGIの新山直広さん。TSUGIとは、「次」「継ぎ」「接ぎ」「注ぎ」という4つの言葉。 伝統の知恵を受け継ぎ、地域をつなぐ、そして未来へつなぐ。そんな想いからできた合同会社です。
TSUGIにできることはデザインのチカラ。これは、メガネのフレームの端材を生かしたアクセサリー。廃材がデザインのチカラで宝の山となるのです。価値観の柔軟さ多様性を感じました。
TSUGIのビジョンは、隠れた地域資源を見える化し「創造産地をつくる」こと、そして以下の3つを大切にしているとのこと。
①10年後の産地
②きちんと稼ぐ
③憧れられる場所
これからの作り手像は、
プロダクトアウトからプロジェクトアウト
であると「ものづくりを続けるために何が必要かを考えなければならない。」と・・・
当に学生たちに学んで欲しい言葉でした。
次はHacoa。箱づくりの技術を生かし、そこにプラスα。この造語が社名。
兎に角若者が多い。そして生き生きしている。
そして工房がオシャレなのです。「憧れの仕事にしたい」と言う言葉をカタチにしているそうです。
伝統的に進めてきた箱屋の技術を生かし木のキーボードから、木のUSBへ。
デザイナーとコラボするより、一般の職人がデザインを知ることを重視している。そしてその一環としての直営店の意義。土日には職人が交代で立つ。エンドユーザーからのフィードバックが、デザインのチカラになっているそうです。
人気の木のUSBもそのようにして生まれたのでしょうか?
Hacoaには、次代を担う若者を育てようという気概を感じました。
そしてろくろ舎の酒井義夫さん。酒井さんの経歴は面白い。
ものづくりを志し就職するも・・・途中ものづくりならぬパンづくりを体験。
そしてまたものづくりに戻ったそうです。
「木工に思想から入りました。」
「だから土に帰るものづくりがしたい。」
この言葉は衝撃でした。同時に、とても共感しました。
ろくろ舎と言えば、「スギの木の植木鉢」。当に土に帰る仕事ですね。
「目の前が材木屋でそこに転がっている木を何とかしたい」そんな自然で当たりまえの発想が、なかなか難しい日本の社会です。
酒井さんの風貌がカタチに現れた作品であり、工房でありました。
酒井さんにとっては、木工もパンづくりも根底では同じことなのかもしれません。
「気持ちよく仕事したい」
「カッコイイと思える仕事にしたい」
酒井さんのみのたけの生き方が心地よく、その余韻を引きずったまま工房を後にしました。
「後悔しない人生を送りたい!」
TSUGIの新山さんの言葉です。これは誰もが思うことですが、それぞれのスタイルで目指す若者の姿に、地方創生が叫ばれる今、地方のレジリエンスの可能性をみました。
そして
「憧れられる仕事へ」
自分たちの取り組みを「見える化」し、社会から憧れられる仕事を目指す、持続可能な仕事にするためには仲間を増やすこと、「私から私たちへ」。
そのソーシャルな価値観に敬意を表したいと思いました。
その2へとつづく
ものづくり講座
松井勅尚