先日アベマキでつくる卒業記念品について紹介しました。その記事で少しふれましたが、今回、美濃加茂市と可茂森林組合とアカデミーが協力しながら取り組んでいる「アベマキ学校机プロジェクト」について紹介しようと思います。
アベマキ学校机プロジェクトでは、岐阜県美濃加茂市北部の里山に群生しているアベマキを使い、地元の小学校で生徒たちが毎日触れる学校机の天板にしていきます。毎年5年生の冬にアベマキの伐倒現場を見学します。切り倒されたアベマキはその後製材、乾燥され、そして天板に加工していきますが、6年生になったらその一部を体験します。こうやって出来上がった天板は翌年入学してくる新一年生に贈られます。
生徒たちが見守る中、アベマキにチェーンソーを入れる森林組合のお兄さん |
この流れを毎年実施しながら、里山の整備と地域材の循環、そして子どもたちへの地域の自然に対する心を育んでいくことを目的として、美濃加茂市と地元の可茂森林組合、そして森林文化アカデミーが中心となり、地元の小学校や製材所などに協力してもらいながら進めています。
このプロジェクトには次のような特徴があります。
1.アベマキにこだわる
アベマキといえば美濃加茂市。美濃加茂市といえばアベマキ。子どもたちに身近な木にしたい。関係者はみなそういう意気込みで取り組んでいます。
岐阜県南部にアベマキは自生していますが、中でも美濃加茂市の北部にはやたらとアベマキが多い地域があります。なんとかこの材料を有効利用できないか、というところが今回のプロジェクトの発端でした。
まず学校机の天板を取り組み始めましたが、卒業記念品も作ることになり、今後さらにいろんな商品を開発していきたいと思っています。
2.循環にこだわる
上でも書いたように、天板は6年生らが関わってつくっていきますが、それを使うのは新1年生です。1年生は当たり前のようにアベマキの天板が取り付けられた机を使うようになります。 6年間使い続ける中で、アベマキのことも含め、里山や森のことを学んでいきます。その集大成として、アベマキの天板づくりが6年生にあるわけです。
使い続ける中で、汚れてしまったり傷がついたり、中には反ってしまったりするものも出てくるでしょう。そういうものも、手入れしながら使っていくことを学びます。木のものは使えば使うほど味が出て、愛着がわきます。
ものを大事にする心を育み、そして最後は大事にされるモノをつくり送る側になります。地域材の循環だけではなく、 そういった心や気持ちの循環も大切に育んでいければと思っています。
3.適材適所にこだわる
天板のみ取り替え、脚は元のものを継続して使う |
アベマキは非常に扱いづらい材料です。クヌギに非常によく似た性質ですが、木工という観点ではあまりなじみがありません。実際扱ってみて再確認したのですが、とにか く動きが激しいやんちゃな木なのです。しかし、堅さに関してはぴか一です。反りねじれさえ押さえることができれば、天板としては最適です。
学校机はスチール製の脚部に合板の天板がつけられたものが多いですが、長く使えるスチール製の脚部はそのまま継続して使い、天板のみをアベマキのものに取り換えます。これは適材適所を考えた結果です。
以上、プロジェクトの特徴を書きましたが、とにかくまずはアベマキという材料が使える状態にしなければ始まりません。そのためには、材料の癖を取り除くため、まずは乾燥をしっかりすることが大前提です。アベマキは利用事例がなく、乾燥のデータもありません。そのためまずはどのように乾燥すべきか特定するため、春から数か月かけて乾燥の試験を行ってきました。
試験によって変形し内部割れを起こしたアベマキの試験体 |
乾燥されたアベマキ |
現在、その乾燥試験結果から導き出された乾燥スケジュールをもとに乾燥させたアベマキを使って天板の更なる試作、改良を進めています。試作した天板は実際使われることになる小学校に置かせてもらい、気候によってどのような変化があるか観察していきます。
来年年が明ければ、本格的に天板の製造、6年生の体験などが始まります。それまでにしっかり準備をしてきたいと考えています。
その後のプロジェクトうごき
2015-12-10 「アベマキ学校机プロジェクト」がウッドデザイン賞2015にて優秀賞(林野庁長官賞)を受賞しました。
2015-12-20 イブニングセミナー: 「アベマキ学校机プロジェクト ~地域の木を暮らしに生かし、そして誇りにするために~」を開催しました
2016-2-6 美濃加茂市山之上小学校の6年生とアベマキの学校机天板をつくりました!
2016-3-1 新たな伝統を作る試み!アベマキ学校机プロジェクトがぐるぐる回り始めました。