2015年9月1日火曜日

「素材は人をつくり出す」 建築生物学 Baubiologieに学ぶ

円環の中で考える建築 バウビオロギー


 クリエーター科1年・2年生の必須科目『森林文化論』、今回は前橋工科大学教授の石川恒夫
先生をお迎えして、バウビオロギーBaubiologie建築生物学)について講義して頂きまし
たので、その一部を報告します。

 石川先生はドイツから日本にバウビオロギーという考え方を本格的に持ち込まれた第一人者
で、敷地内植物や磁気環境などを検討し、光や熱、湿気、音など幅広い知見で建築を見られて
います。

 バウビオロロギーとは、健康や環境に配慮した建築について考える学問で、語源はそれぞれ
ドイツ語の「建築(Bau)」「生命(Bio)」「学問(Logos)」を組み合わせたものです。

 日本語では「建築生物学」と訳されています。


 一般の人は建築について、「木はいいよね~!」というが、次に「でも木は高いよね~」と言う。
確かに、確かに。木造建築の木材代金なんて7~15%以内なのにね。

 さて、バウビオロギーは第三の皮膚としての住まい。 食・住・衣を考える。野菜一つにしても
種苗業者が提供するF1を使うのではなく、地元の土壌に育まれた味のある(癖のある)伝統野菜
を使い、健康的な家に住む。 当然、その家の素材はどこから来た木材や断熱材で、生産にも、
廃棄にも、環境に対するインパクトが少ないものを選ぶ。・・・つまり本当の本物なのだ!

 バウビオロギーは人間とつくられた環境との、全体的な関係性についての学びなのです

  建築には住まいの立地、オープンスペース、デザインや家具、シックハウス、電磁波、カビ、
遮音、素材と湿気などを考える必要がある。


 暖房について見ると、床暖房で過剰なエネルギーを使っている事例も多い。
人の熱源センサーである頬(ほっぺた)が温度を感じられるように壁面暖房をする方が効果的で
省エネにつながる。

 人が木とふれあうことで、温かみや肌触りを感じ取る。つまり人が木材とコミュニケーションして
いる。素材は人間をつくりだす。
 同時に、色彩も人には様々な効果を生み出す。

 責任を持って世界を形作っていくために、私たちは行為の結果を見なければならない。
素材の循環:誕生・・・加工・・・使用・・・リサイクル。

 新築物件における窓枠の比較でも、ドイツで木製サッシ、PVC樹脂、アルミサッシなどで比較
すると、価格はアルミサッシが高い。しかし、その利用可能年数は木製サッシが短い。しかし
製造するときの環境インパクトを考えるとアルミサッシはエネルギーも環境インパクトも大きく、
廃棄にも大きなエネルギーが必要。 トータルで何がよいのか。


 オーストリアの生鮮食品のディスプレイの事例なども紹介。 エンドユーザーに自然に循環した
商品をどのように販売するのかを訴えるための建築など、食も、生活も、建築も同一次元にあり
私たちの健康に影響を及ぼしている事実。


 「バウビオロギー」の住まいは、ドイツからヨーロッパに広まりつつある環境や健康に配慮した住まいづくりです。

 地球という大きな自然環境の中で、人間は一つの生命体です。どのような住まいづくりが
この環境に調和し、私たちも健康で次の世代に大切な地球環境をバトンタッチできるのか。
一人一人の家づくりが大きな責任を負っていると言っても過言でない。


 「バウビオロギー」自然素材を使えばよい太陽光発電を組み込めばよいという断片的な
要素だけを考えるのではない。

 気持ちの良い生活空間とより少ないエネルギー消費の両立を求め、心身の健康と環境との
調和を考えた住まいづくり提唱しているのです。

以上報告、JIRIこと川尻秀樹でした。 次回森林文化論は9月28日です。