2015年10月15日木曜日

国内研修「森林と人の関わりについて考える〜黒潮に臨む森林とその利用〜」報告④100年生のクスノキ人工林を見学する


2日目(9/30)東京大学樹芸研究所青野研究林(南伊豆町)

 日目午後は静岡県賀茂郡南伊豆町にある東京大学樹芸研究所のクスノキ人工林を見学しました。樹芸研究所は72年前に熱帯・亜熱帯産の特用樹木の研究施設として設立され、町内には温室もあります。附属する青野研究林は植生帯としては温暖帯の照葉樹林帯に属していますが、その一部が約100年前の民有林の時代に樟脳を採取するために植えられたクスノキ人工林となっています。約48haもの造林面積は国内で一番広く、文化財のひとつでもあります。クスノキの材がなくなったらここから出すこともあるそうです。
 クスノキの葉っぱをちぎって嗅ぐと、昔懐かしいスーッとする樟脳の匂いがします。クスノキから得られる樟脳は、かつては衣類の虫よけや防臭剤、香料など利用度が高く、日本の樟脳生産は20世紀始めは世界最大でした。ここに残存するクスノキ人工林は当時の国策の地域林業への影響を知る貴重な林業遺産でもあります。

研究林の奥にあるクスノキ人工林に向かって歩きます。ダニが多いと注意頂きました。気をつけて!



特用樹木のアブラギリも植栽されていました。試験データの解析・評価も行なわれているそうです。かつては、種子を搾り採取した桐油は印刷や防水、艶出し、塗料などに使われていました。


こんなところに可愛い黄色いキノコが…オオワライタケです。食べないで下さい!食べると神経が刺激されてめまい寒気悪寒、ふるえなどの神経症状が出るそうです。危ないキノコです。

ユーカリ属の一種 Eucalyptus salubris の人工造林に関する研究をされています。この高さで植栽年半だそうです。スギと比べるとかなり成長が早いです。



教養学部の学生がゼミナールで管理している竹林です。日本全国でありふれている放任竹林の問題を、体験学習を通し自分の問題として捉えることができる仕組みだそうです。



左側はスダジイの二次林です。葉は厚めで濃い緑色です。右側はクスノキの人工林です。スダジイと同じく常緑広葉樹ですが、晩春以降に前年の葉が落葉してしまうためか明るい緑色に見えます。樹冠付近の枝葉はきっちり棲み分けています。



めったに見ることができないクスノキ人工林に到着しました。同じ常緑広葉樹のシイ林と比べると林内は明るく感じます。普段見慣れたクスノキとは違った見慣れない樹形をしています。樹の間隔が近いので、枝は上へ上へと伸び、幹は太くなれないし、途中で二股三股になっています。公園や街路樹などで見られるモコモコした樹形とかなり違います。樹齢100年ですという主張は感じられず、お疲れさまでしたという言葉を掛けたくなりました。今では日本の時勢を伝える貴重な林業遺産としてそこに佇んでいました。



山村づくり講座 榊原ひとみ