2015年12月20日日曜日

第3回里山景観マイスター養成講座Basicコース(最終回)

里山の自然を知り、つきあい方を考える

 12/19(土)に第3回里山景観マイスター養成講座Basicコース(最終回)が行われました。
今回の講座のテーマは「粗朶を通して里山の利用を考える」です。前回は粗朶山の自然について学習しました。粗朶とは河川工事や暗渠排水工事などの工事資材として使われますが、里山林から切り出された細い木を束ねて作ります。「おじいさんは山へ柴刈りに」と言いますが、あの「柴」とは粗朶のことなのです。

 粗朶はどんな山でも効率よく生産できるわけではありません。比較的まっすぐで横枝をあまり張っていない細い広葉樹が多く生えている山が粗朶生産に向いている山だと言えますが、全国的に里山が手入れされていない昨今、そういった林を見つけることは難しくなってきています。ところが、今回講座を行った関市にはそんな林が多くあります。なぜでしょうか?

竹智良竹さん

それはこの方が地道に里山の手入れを続けているからなのです。写真の方が竹智良竹さん。今回粗朶づくり講座を行うにあたって、場所の提供と講師として粗朶づくりの指導をしていただきました。竹智さんは地域の方から頼まれて里山の手入れ(おもに立木の伐採)を続けてきました。おかげでこのあたりには粗朶やほだ木の生産に適しているだけでなく、ギフチョウが飛び交い、産卵できる明るくて気持ちのよい林が広がっています。

 お話を聞いたあと、さっそく現地で粗朶づくりです。細い木を手鋸で伐ったら集めて束にします。束にするには規格に合わせた木枠があると便利です。今回は地元で使っている方のものをお借りしました。手際よく・・はいかないのですが、ちょうどいい木を選んで枠の中に押し込んでいきます。根元を揃えたり、時に枝に切れ込みを入れて形を整えたり、出っ張った部分を落としたり、慣れないうちは意外と手間がかかります。

粗朶


 こちらは「しがら粗朶」です。ふつうの粗朶と違って、1本で 2.7m 以上の木を束ねて作ります。買い上げ単価はこちらの方が高いですが、しがら粗朶に適した木はそれほど多くありません。粗朶の規格は束ねたときのサイズで決まりますが、しがら粗朶は決まった本数を束ねて出荷します。

しがら粗朶











三輪芳明さん
前回も講師をしていただいたニホンミツバチ協会の三輪芳明さんに、地域で里山を保全していくには地域の方の地道な活動こそ重要である、という話を伺いました。しかし、竹智さんが里山林の手入れをするには、道具のメンテナンスや燃料代、アルバイトの人に払うバイト代などお金もかかります。竹智さんは依頼した人からお金はとらないので、林を手入れする際に出てくる木をパルプチップや椎茸の原木として出荷することで得られる現金で費用をまかなっているそうです。出ていくお金と入ってくるお金はトントンなので、竹智さんの手許にはお金が残りません。ここに粗朶による収入と薪による収入を加えれば? 
悪い考えではないと思います。

 最後にできあがった粗朶を前に全員で記念撮影です。皆さんお疲れさまでした!


        





 ・・・で終わりという訳にはいきません。よい汗を流したあとは、教室に戻っていよいよ講座の総まとめ、「里山を活用しながら保全して行くには?」を受講生全員で考えます。前回講座を行った関市の放棄田と、その周りの里山林をどのように保全していったらよいのかについて、利活用の方法や、どういった楽しみがあるのか、それぞれがアイディアを出し合います。

           


 食や物づくりなど生産に関わる項目、自然観察など学習に関わる項目、そして泥んこ遊びなど遊びの項目を里山の保全につなげていくアイディアが出されました。誰が活動を担っていくのか、そして活動をまわしていくための経済はどうしていけばいいのか、など課題も残りましたが、皆さん実体験を元に考えることによって理解が深まったようです。


 最後に「里山景観マイスター養成講座Basicコース修了証」を手渡して本年度の講座は終了となりました。受講生の皆さん、来年は Advance コースでお会いしましょう! お疲れさまでした!