『森の通信簿』を知っていますか?
「人工林施業は環境面でどのように貢献しているのか?」・・・これが答えられずに施業プランナ
ーを名乗れるのか?
平成25年度 岐阜県施業プランナー 技術維持研修 の 第3回目、今回は岐阜大学流域水文学研
究室の篠田成郎教授による
『流域環境を改善するための人工林施業の考え方と簡易な森林機能評価の実習』 です。
最初に篠田先生からの質問(森林づくりと流域環境の観点から)
Q1.人工林は環境面でどのような貢献をしているのか?・・・・・・・
Q2.どうして環境面での貢献が大切なのか?・・・・・・
Q3.どのようにして環境面の貢献度を自己評価するのか?・・・・・
これが答えられなくて施業プランナー
として生き残られるのか ?
みなさんは如何ですか? 答えられますか?
森林管理(間伐)の有無は、森林内の水収支にどう影響するのか?
単なる「雨滴」よりも「樹冠滴下雨」の方が林地表面土壌への衝撃が大きい。
樹冠滴下雨の直径は降雨雨滴の直径3倍、体積は27倍になります。以外でしょう!
加えて土壌中の粗孔隙、乾燥度などに影響が出て、最終的には渓流水が濁水化する。
間伐され森林管理された林分が土壌的にも、渓流の水的にも良いとは言っても、むやみに
間伐しても無意味。
A0層があるかないか。ちなみにA0層は
L層:落葉落枝の未分解落葉層Liter
F層:認組織有機物層Fermentation
H層:否認組織有機物Humus ・・・・・・そして、その下にしっかりしたA層があるか?
立木一本当たりの成長量のみに目がいっていてはダメ、成長も重要だが土壌による保水力
を高めることも勘案しなければ!
近年の降雨傾向は、特異的な降水が増大しており、特に高標高地の急斜面で降水強度が増加
している。
そこで矢作川 水系森林ボランティア協議会(矢森協)による「森の健康診断」を応用しながら、
水環境までしらべる『森の通信簿』を実践し、森林と水環境について、プランナー自身が現状を
把握してみました。
林分調査は矢森協の手法です。中心木の選定、平均木の選定をし、方形プロットを設定します。
施業プランナーですが土壌を真剣にさわるのも初めてです。雨が降ったばかりなのに、
「こんなに乾いているのか?」と不思議に感じた人も多くいました。
土壌の水分は土壌水分計で測定、だいたい35%でした。
土壌中の生物は、ザトウムシ、コムカデ、ワラジムシ、甲虫類の幼虫、ミミズ、ダニ類、アリ類
などでした。
植生調査用に方形プロットをとりましたが、林分調査は鋸谷式の円形プロットです。
篠田先生考案のペットボトルによる土壌円筒で、森林管理地と手遅れ地の代表的な土壌を採取
して、透水試験をします。
表層土壌の円筒採取は細心の注意が必要です。
採取した土壌円筒に蒸留水を流し込みました。
下の写真の手前が森林管理地、奥が放置林地の表層土壌です。濁り具合が違います。
両者を比較したのが下の写真、左が森林管理された林地の表層土壌の浸透水
右が放置されている林地の表層土壌の浸透水
森林管理されて土壌層的にも、下層植生的にも、上層木的にも良い状態であれば、土壌浸透
水も良くなる。
こうした目で見える実験を、森林所有者や子どもたち、一般の方々に知ってもらえるようになれ
ば、森林整備に対する理解も少しは深まるのでは? と期待するのです。
また、こうしたデータを「森の通信簿」として保存し、継続調査することでより一層、森林の健康
状態や土壌の状態、水収支の状態が把握できるようになるのです。
今回は篠田先生、お忙しい中、岐阜県施業プランナー技術維持研修を指導して下さいまして
有り難うございました。
さて、皆さん、次回は「路網開設と濁水発生メカニズム、濁水防止手法」です。頑張りましょう。
以上報告、JIRIIこと川尻秀樹でした。