2014年7月3日木曜日

「イタリアの農村観光」に学び、「日本で最も美しい村」をもっと元気にする!



山村づくり講座2年生の「コミュニティデザイン総合演習」の授業で、『なぜイタリアの農村は美しく元気なのか』 の著者で京都府立大学教授の宗田好史先生をお招きました。場所はアカデミーの教室を飛び出して、下呂市の「日本で最も美しい村連合」に加盟する馬瀬地域でフィールド実習とミニ講演会を行いました。


馬瀬は、この2年間山村づくり講座が重点フィールドとしてお付き合いしている山村です。馬瀬川に沿って10の集落が串刺し状に並び、集落毎に〔川-農地-住居-草地-里山〕の循環型の生活形態があります。これらの景観と文化を「里山ミュージアム」と名付け、住んでよし・訪れてよしの着地型観光を住民参加で創っていこうとしていて、卒業生の天池さんも中心メンバーとして活躍しています。


今回は「日本で最も美しい村連合」も着目している「イタリアの農村観光」とくに景観と食文化を組み合わせた戦略について、斯界の第一人者である宗田先生をお招きしての贅沢な授業。2年生3人で受講するには余りに勿体ないので、馬瀬「里山ミュージアム」の関係者にも呼びかけたところ、なんと30人も集って「ミニ講演会」と
なりました。




6月28日はちょうど馬瀬川の鮎釣り解禁日。朝から大勢の釣り人が川に入って竿を立てていました。そんな中、午前中は宗田先生と一緒に少人数で西村地区の「里山ミュージアム」を歩きました。扇状地の末端部で湧き水を利用した洗い場「シミズ」を持つ住宅、集落のあちこちに点在する「水屋」や「消火栓」から集落の歴史を探ったり、築100年は経つ庄屋さんの住宅では明治大正期の村おこしリーダーの足跡を感じました。昼食に入ったスローフード・カフェでは、この朝釣れたばかりの鮎や地物の野菜などが宗田先生の目に留まったようです。




そして午後は西村公民館でミニ講演会を開催。イタリアは歴史や芸術の国として知られていますが、決して裕福な国ではなく、小さな農山村が多い国勢です。1960年代から始まったイタリアの農村観光(アグリ・ツーリスモ)が1990年代から20年間で爆発的に発展しました。その秘密はなんなのか?ひと言では語れませんが、宗田先生のスライドに、それを可能にした社会情勢と主体者達の取り組みが要約されています。



宗田先生の語り口は、遠い国の成功談を美しく語るのではなく、農山村が置かれている経済的・社会的な苦境を世界的な視野でとらえ、農山村リーダーと都市住民の一部が気づいて始めた「スロー志向の暮らし方・働き方」を支えた政策・観光形態・女性達の活動について、確かなデータに基づいて分かりやすく説いていくものでした。




聞いていた西村地区の女性達の顔が輝き、体がぐっと前に乗り出してくるのが分かりました。学生達もその場の空気の変化に気づいたことでしょう。沢山のヒントや刺激に満ちた一日となりました。山村づくり講座では今後も馬瀬「里山ミュージアム」を応援していきます。遠路おいでいただいた宗田先生、ありがとうございました!


記  山村づくり講座 教員 嵯峨創平