2015年6月17日水曜日

川湊灯台から森湊灯台へ ~美濃市にある二つの灯台と受け継がれる理念~

このたび、アカデミー構内テクニカルグランド北角に「森湊灯台(もりみなととうだい)」が竣工しましたのでご報告します。
「灯台」という名前の通り、日が暮れると上部にあかりが灯ります。


これは、クリエーター科木造建築講座による自力建設プロジェクトの一環で、学生が一年間かけて設計から施工までを行いました。
「どうして、アカデミーに灯台を?」と疑問に感じる方がおられるかもしれません。
灯台というと、通常「海」にある白い灯台をイメージされると思いますが、
清流の国ぎふにおいては、舟運の拠点として「川」に灯台がつくられてきた歴史があります。


これは、長良川美濃橋の河川敷に実在する「川湊灯台(かわみなととうだい」という県指定史跡です。現在も、毎夜あかりを灯しています。
川湊灯台がつくられたのは、約400年前。
多いときは番船40艘をおき、物資交流の要地として漆黒の川面を照らす存在でした。
その背後には、「水の神」を祭る住吉神社があり、灯台のあかりは「水の神」への献灯の役割も果たしてきました。


川湊に対して、森湊を。
アカデミーを舞台に、森林文化を象徴する「森のあかり」を計画すること。
川湊のプロポーションをトレースするのではなく、その理念を受け継ぐこと。
その想いから、計画にあたり強く意識したのが演習林の「山の神」であります。


神が降りてくる目印となる大杉の頭上から差す神聖な光。
昼は上空からの光、夜は灯台のあかりが、中央に据えつけた桧の心柱(しんばしら)を照らします。


また、塔は地上10Mの高さで一点で交わる三角形のかたち(=合掌造)をしています。


これは、山の神にむけて、合掌をする。
すなわち、手のひらを合わせて、日頃の活動を見守ってくださる山の神に感謝の気持ちを捧げることを意図しています。

川湊灯台と、森湊灯台。
二つの灯台のあかりには、水の神と山の神に対する敬意が込められています。
水と山。
清流の国ぎふのランドマークとして、二つのあかりがいつまでも灯り続けることを祈りつつ、竣工のご報告とさせていただきます。

美濃市にある二つの灯台を、ぜひセットで訪れてみてください。
過去から現在、そして未来へと受け継がれる想いを感じていただければ幸いです。


木造建築講座2年学生一同