2016年1月20日水曜日

ドイツの現状を把握せよ!

教員の教員による教員のためのドイツ見聞録


 本年度、岐阜県立森林文化アカデミーの教員4名がドイツなどに調査に出かけてきました。
今回はドイツを中心に先生方の知見を教員全体で共有しました。

 最初は9月に鹿児島大学や岩手大学の人たちと視察に出かけた杉本先生の報告。
 ドイツのBW州は森林面積が140万ha、森林蓄積4.71億m3、素材生産量850万m3、それに対し
岐阜県は森林面積約半分の86万ha、森林蓄積1.67億m3、素材生産量36万m3と、蓄積生産とも
低い。


 ロッテンブルク大学の林業技術関係は募集100人に対し、400人の応募がある。ドイツでは1000ha
に1人くらいの割合でフォレスターがいるため、市町村のフォレスター、民間のフォレスター希望者
が多い。

 授業の中には、有名なデュアルシクテムを組んでいる。


 木質バイオマスに関しては、排気の問題にも取り組んでおり、ペレットストーブや薪ストーブなど
の煙に含まれるPM2.5なども測定して性能評価している。
 
 この部屋の横は、イノシシの解体場になっており、実際に学生が実習する。


 他に、ケーヒニスブロン研修所も訪問し、現場で働きながら学校に通う事例(デュアルシクテム)
なども見てきた。

 ドイツでは当たり前なのだが「経済ベースで成り立っている林業」を学べる。
人と森との距離感が近いことを実感した。


 続いて、2番手はナバさん。
全部で22ヶ所も訪問してきたため、今回はごく一部を紹介。

 まず最初に、「ロッテンブルク大学の卒業生の職場」について

 ロッテンブルク大学卒業後、「青少年 森りの家」という施設で働くパターンがあった。ここは、
13人のスタッフが働き、3~12日間のプログラムが提供され、80人の宿泊が可能な施設。年間の
利用者数が多く、運営も軌道に乗っている。


 BW州の森林法には「フォレスターは森林の管理だけでなく、環境教育もするよう」記されており
実際にフォレスターにもお会いした。

 別の施設では、グリーンウッドワークも指導していた。


 「環境学習センター」では、暮らしを考えるプログラムが主流になりつつある。
「森の総合教育センター」では、環境教育の指導者向けプログラムも実施しており、訪問時にも
実際のフォレスターも混じって研修を受けていた。


 3番手の辻先生
発表は木造建築士らしく、体系だった説明。


 11月の日程や訪問先の紹介から始まり、州有林、バイオマス、森づくり、素材生産、エコタウン
など他分野について説明。

 製材所は、在庫は少なく。でも年間36万m3も製材(これって岐阜県の素材流通量?)。原木納材
から製品出荷まで、通常は1~2週間、最短で2日。

 トレーサビリティもしっかりしている。原木の選別機が3Dスキャナになっていて、瞬時に選別。
効率化の鍵は「山元と製材工場との余計な手間を省く信頼関係の構築」だそうです。


 他にもWeber Haus社、ここは年間800棟のプレハブ住宅(パネル工法)を建設する建築会社で、
ドイツではこの規模の会社が最大級クラス。
 施工から竣工までの速さと簡便性が売り。例えば、施主が一泊二日の合宿で設計の最後までを
完了させる。
 ドイツトウヒのパネル工法で焼く45坪の住宅が、3000万円程度で、30年保証がある。

 パッシブハウスの見学では、その住人の女性がエネルギーについて非常に詳しく、住人の
意識の違いを感じた。

 ドイツでは「仕事一辺倒ではない豊かさ」を感じた。そうです。



 4人目は久津輪先生
冒頭から、ロッテンブルク大学の学長の凄さを紹介。


 ロッテンブルク林業大学は1954年開校の300人程度の学校からスタートした。カイザー学長就任
の時の課題は「2002年には学校閉校」の命を受けて学長に就いた。

 本来は水利関係がご専門だが、「林業と木材加工における起業家精神とマネージメント ビジ
ネス経済学と管理プロセスの原則」という書籍も出している。

  このカイザー学長のマネージメント力の高さがスゴイ。なんと、2012年には1100人の大学で、
修士や博士も輩出できる大学に生まれ変わった。
 林業だけでは女子学生が入らないと感じるや、女子学生誘致のための環境教育を設立し、
学生確保に努めた。

 研究施設が足らなくなれば、民間から寄付を募り、5億8000万円を集めて建築した。


 他にもシカ避けの TUBEX社の製品やチェンソーウエアのPSSなどでも新しい知見を得た。

 木製のおもちゃとして、動物を作っている会社もあり、社員200人が製品を作成していた。
こうした木製おもちゃの一部は、シュタイナー教育でも利用されている。

 販売はSNSを活用した宣伝と、教育活動と連携することが重要。

さて、森林文化アカデミーの教員は日々刺激し合い、日々勉強する中で前進しています。
最新の情報、技術、考え方を学生さんに提供できるようにしていますので、是非、みなさん
森林文化アカデミーにお越し下さい。

以上報告、JIRIこと川尻秀樹でした。