2014年12月9日火曜日

加賀谷廣代さんをお迎えして、国産材の利用を考える

国産材はどのように売り、どう使うのか。
 

 クリエーター科のJIRIの授業『森林文論』、今回は森林再生システムの加賀谷廣代さんをお招き
して『国産材の利用』につて学びました。
 
 加賀谷さんは東京芸術大学工芸科卒、個人で作家活動、デザイン会社勤務などを経て98年に
㈱コクヨ(コクヨファニチャー)入社。同社で国産材・間伐材を使用した家具の企画・提案に携わる。

 2008年、東京大学大学院農学生命科学研究科森林科学専攻 経理学研究室にて森林認証など
を研究。2014年、コクヨファニチャー㈱を退社、㈱森林再生システム入社。 森林管理における調査分析、企業社有林の業務委託などに従事。木材利用についての施主提案を開始。
 

 加賀谷さんの前職の会社、コクヨは木材を資源として、長年紙や木製品などを扱ってきました。
しかし化学成品の台頭から次第に需要が減ってしまった。一方、国内で人工造林された針葉樹
は利用が進まず、間伐されてもそのまま切り捨てされる有様。

 適切に管理されない森林は荒廃し、水源涵養等の機能も失われていく現実。その針葉樹の
需要喚起のために、地域の森林組合と協力して製品開発を進め、今やコクヨの多くの家具に
は、適正に管理された森から生まれたFSC森林認証の間伐材が使われている。

 四万十の旧・大正町森林組合(現・四万十町森林組合)と協力して『コクヨ-四万十・結の森プロジェクト』を2006年に立ち上げ、間伐材の製品化に取り組んだ実績。

 2010年には、環境対応商品ヒノキ材の会議テーブル『FUBI』『TAKUMA』を世に出す。


 コクヨの取り組みの後、それと競合するような業態も出てきた。大塚商会などがネットで家具を
売り買いする時代にマッチ、FSC認証材によるオフィス家具を席巻する北欧のIKEA。

 ITOKIは東京京橋にSYNQAという空間を提供。国産材家具を入れ、オフィス、イベント利用
など多目的に使える空間を提案。
 コクヨも渋谷ヒカリエにMOVを開き、国産材家具を利用した実験的オフィス空間を提供して
いる。

 日本全国スギダラケ倶楽部の紹介もして下さいましたが、なんと、この倶楽部を知っている
学生が誰もいない。・・・・・寒い結果。



 他にも岡村製作所のHAGIシリーズ、アファンのニコルさんと共同で馬橇による搬出材利用の
家具、WISEWISEによる栗駒山のスギ材利用、飛騨産業の圧縮スギ材利用、カリモクの取り組
み、moreTreesの活動、リバース・プロジェクトの取り組みも紹介。

 もちろん政府や地方自治体の施策による後押し、森林林業再生プランの実施、木材利用
ポイントや補助金制度、港区のみなとモデル(UNI4m)についても解説。


 2020年の東京オリンピックに向けての国産材利用についても解説されました。
実はロンドンオリンピックでは18,000m3の木材を使い、それがFSC認証材であったことから
日本でもFSC認証材を使う方向で検討が進む。



 さて、ここで国産材家具メーカーを「ストーリー型か現実直視型」そして、「プレーンかラグジュア
リー」の2軸でマトリックス分類してみました。

 それぞれの企業によって販売戦略が違います。


 そこで学生には、「ワークショップ」をしてもらいました。
      『メーカーの国産材家具販売戦略』を考える。
 ①ターゲットは(誰に売るのか)、②ストーリーは、③どんな商品を、④どのように売るのか。

 この①~④を考えながら、6グループで戦略を考えます。



 このグループは、30代の結婚予定のカップルに提案。
結婚式の記念に国産材家具の椅子をプレゼントし、それに合わせた家具類を順次提案する
ことを考える。食器棚やベッドの提案を考えてるようです。


 グループによっては、書店で組み立て式の模型などを販売している業態と同じように、
自分でつくる家具」をパーツで定期的に送る方式を考えたり、利用されずに林地に放置され
る「ナラ枯れ材」を土足用フローリング材として提案することを考えたり、棺桶を提案したりと、
様々なものが出てきました。


 加賀谷さんからは、
  このワークショップを通して、顧客のニーズの広さ、PRの難しさ、自分たちが多様性を持つ
 ことの重要性に気づくこと。を知って欲しいとのお言葉。

  家具や小物は、多くの人にとって最初に触れる木材となる。だからこそストーリーをつくれば、
その先につながっていく。


  商品開発は、「売れることが重要」、売りたいもののマーケットがあるのか、それをどのように
届けるのか。
 100%自分の思い通りには行かない覚悟が必要。そして事前のマーケティングが重要。

 漠然と国産材利用を考えていた学生にとって、何かの気づきを頂けたような講義を終了した
のです。

以上報告、JIRIこと川尻秀樹でした。