2012年7月8日日曜日

平成24年度 第5回 岐阜県 施業プランナー育成研修

岐阜県では森林整備を推進するためのキーパーソンとなる施業プランナーの研修を実施しています。基礎的な知識を学ぶ「育成研修」、基礎的な研修を受講した人に継続的に受けて頂く「技術維持研修」、また各地に点在する施業プランナーを民間レベルで束ねて大きな地域を統合できる人材を育成する「上級研修」の3研修を実施しています。
今回の育成研修では、林内路網の基礎知識、路網計画、GPSの基礎知識について、岐阜県森林研究所普及企画係の池戸技術課長補佐長屋技術主査、森林研究所の古川部長研究員による講義と演習を実施しました。

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最初に長屋技術主査が「作業道の開設計画」について解説して下さいました。
  (1)林内路網の種類(林道、林業専用道、森林作業道)
  (2)路網計画の手順
  (3)開設を避けるべき危険地帯
  (4)計画図面の作成

林業専用道は10tの大型トラックが走行可能で、設計速度は15km、全幅員3.5m、半径12mですが法面は緑化しません。森林作業道は2tトラックやフォワーダの走行を想定し、幅員は2.5~3.0m、縦断勾配は10度(18%以下)です。

路網計画する上で、岐阜県ではWEB上の「県域統合型GISぎふ」データを利用すれば、航空写真や地質、断層などの情報を簡単に得ることができることを紹介されました。

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特に「開設を避けるべき危険地帯」は、急峻地(山地傾斜35度以上)、崖錘・堆積土、崩壊地、破砕帯、岩盤・転石地帯、水脈が地表に近い場所、谷川沿い、人家や公道に転石などの落下が予想される箇所、生活用水の水源地上流などです。

施業図として使われる1/5000地図では等高線間隔が10mであれば、1cmの円定規を使って急峻地の判定ができます。その円の中に等高線が2本であれば傾斜22度、3本であれば31度、4本であれば39度となるのです。

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 続いて池戸技術課長補佐が路網の「線形踏査のポイント」について解説し、

  (1)道を通すのに適した場所
  (2)勾配追い
  (3)ネックポイントの通過事例
  (4)急斜面の通過対策
  (5)排水処理の計画
  (6)崩壊するリスクを見極める

 を順に説明されました。

この中では路網に適する「タナ地形(定積土)」について、道の縦断勾配、作業道開設に必要な技術について丁寧に解説されました。
私たちが線形踏査でつける勾配杭は計画地盤高に打ちますが、それを路面の中心杭と勘違いする場合もあります。切土と盛土によって中心杭の場所は移動しますので混同しないよう注意しなくてはいけません。
結局、講義のまとめとして、

  (1)線形計画地図を参考に現地で修正する。
  (2)道を通しやすいタナ地形を探す。
  (3)ネックポイントの通過は条件の良い場所を選ぶ。
  (4)危険値の通過には対策工を計画する。
  (5)廃水処理を適切に計画する。
  (6)ルート選定に迷ったら、ゴールから逆に追ってみる。
  (7)山をよく観察する。

ここで研修者の理解が心配なのが縦断勾配、横断勾配の違い。勾配が10度以下(18%以下)という言葉と、切り取り法面と盛り土法面の勾配、6分、1割2分の意味が分かるだろうか。盛り土は1mあがる毎に水平距離1.2mあれば1割2分となる。

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続いて、切法肩・盛土尻位置判定カード「切り盛りくん」の紹介を長屋技術主査が説明。山の現場で概略の切取土量と盛土量が分かれば、発生する土量計算ができ、道作りがスムーズになります。 この道具は長屋さんの画期的な発明で、私たちにとってはすごく理解しやすい道具です。

現場経験が無くても簡単に切り盛り土量を見ることができるのが、長屋技術主査が開発した「切り盛りくん」です。これは便利、よく考えられています。

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また池戸課長補佐からの説明です。ここから個人での演習とグループ演習の前段階です。

最初に対象となる森林文化アカデミーの演習林33haについて、森林簿データ、施業図2枚、航空写真を見せられます。

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この写真に見る色分けは森林研究所の古川部長が傾斜の急なところは赤色を濃くした図面です。こうすれば危険地区が一目瞭然です。

また、ここで利用される作業システムは写真のような、4WD2tトラック、2t積みフォワーダー、2t積みキャタトラです。

この条件でどのような路網線形を入れるかを敢闘します。

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作業では1/5000の図面(1)に危険地帯を赤で、安定地は緑で色分けします。次いでもう一枚の1/5000の図面(2)にヘアピン適地(緩い尾根)を円形定規で記入します。

最後に、色分けした図面(1)に、森林簿データを参考にしながら路網を入れてゆきます。カーブする場合はヘアピン的地図(2)を参考とします。


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さて、各自で危険地域やヘアピンの場所を決めたら、林分の状況に応じて利用間伐できるのかどうかを森林簿データによって見定めて、図面上で作業路の線形を考えます。もちろん、施業図には現場で現れる大きな岩石はほとんど示されていません。

しかし、事前に概略の線形を決めて現場で修正するようにすれば、仕事もはかどります。作業路の線形を青線で記入して、計画してみます。

各自が計画を作成したところで、2つのグループに分かれてグループ内発表です。

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他の人の発表を聞いてみると、自分が気がつかなかった視点で山を見ていたり、新しい発想や弾力的な発送も知ることが出来て勉強になります。各自の発表が終われば、次の段階はグループの代表発表をグループ内でつくることです。

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発表内容に則すような路網線形と作業システムの構築。これが結構大変ですが、仲間と知恵を出し合って計画を作ります。

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そして、グループ代表者発表です。
 1班の作業システムは
   伐倒 チェンソー、 造材 チェンソー、 木寄せ グラップル、運材は2tトラック、
   ヘアピンの最小回転半径は6m

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2班の作業システムは
   伐倒 チェンソー、 造材 チェンソー・プロセッサ、 木寄せ スイングヤーダ、運材は2tトラック・フォワーダ、
   ヘアピンの最小回転半径は6m、洗い越し4カ所

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さて、こうした計画なのですが、来週は全員でこの現場に現地踏査に行きます。みなさん、どのような現実が待っているか楽しみですね!

最後に、森林研究所の古川部長さんから「ITを活用した路網計画と管理」と題して、GPSの基礎知識を中心に講義を受けました。

この技術は来週の現場で活用されるものです。事前知識としてのGPS講義だったのですが、果たしてみな理解してくれたのかどうか?・・・・一抹の不安が残ります。

さぁ、来週も頑張りましょう!

  以上報告、ジリこと川尻秀樹でした。