現場で見極めろ、森林立地の重要性
今年から始まったエンジニア科1年生の『森の立地』、この授業はJIRIと森林研究所の渡邉仁志
さんとで、森林土壌を中心に、樹種や品種、立木密度、適地適木など、森林を総合的に見る目を
養います。
単に、森林土壌を知っても、立地条件を総合的に判断できなければ意味がない。より実践的に
森林立地を考え、林業で良い提案をし、より収入を上げるための立地を見る目をつけるのです。
初日の昨日はJIRIが、なぜ森林土壌を学ぶことが重要なのか、その森林土壌には、気候や地
形・地質、土壌生物が影響すること。日本の森林土壌の代表である褐色森林土はどのようなもの
かを講義。
現場の土壌は、構造や土性、A層の厚さで、その栄養条件が分かる。しかもA0層の堆積具合
でも、乾燥しているのかどうかもわかる。
つまり土壌条件によって、植林に適した樹種も違うこと、それを知ることが重要。
それに加えて、樹木は「深根性」、「中根性」、「浅根性」があるが、こうしたことと土壌型を組み
合わせて、『適地適木』を考える。
二日目は、森林研究所の渡邉仁志さんをお迎えして、研究所での研究成果も交えて、森林立地
全般について講義をして頂き、午前中の後半戦から演習林で実習です。
森林土壌を調査する意味合いや、県内各所で見られる森林土壌、そして炭素量を測定して
立地をどのように評価するかを解説して下さいました。
土地の生産力を示す指標「地位」、この地位は樹高成長量で示され、岐阜県では40年生時点で
の樹高を5段階に評価し、地位級Ⅰ~Ⅴに分けて評価しています。
土壌型をこうした概念に重ね合わせ、立地全体をどのように評価すべきかを学びました。
アカデミーの演習林は褐色森林土の中でも、ダントツに BD(d)型が多く、一部にBD型とBB型が
見られます。
BD(d)型とBD型では、決定的にA層の厚さが違います。それは現場で本物の土壌断面を
見ないと理解できません。
渡邉さんが地位の違いと炭素量を、スギ、ヒノキ、アカマツの3樹種について、地位級Ⅰと
地位級Ⅳで炭素量(成長量)比較した結果、スギは地位級に大きく影響を受け、アカマツは
地位級が変わっても成長にあまり影響を受けないことが分かりました。
つまりスギは適地適木の理論に沿って、植林すべき事が重要です。
さて、演習林で成長量比較です。
一つの斜面で樹高と直径を比較したところ、調査区は2~3mしか離れていないのに、斜面上側
の調査区は平均直径17cm、平均樹高14m、隣接する斜面下部の調査区は平均直径17cm、平均
樹高18m、この樹高の違いは立地の違いだと言うことを、学生自身実感したのです。
さて、午後から演習林での土壌断面調査です。 実際にBB型、BD(d)型、BD型でないかと
予測した土壌断面を掘り出しました。
そこで土壌断面の層位区分、土性、土壌構造、土色などを判定し、スケッチし、最終的に土壌型
を判断します。 BD(d)型は学生が予想した以上に、A層が薄く、多少困惑気味。
BD(d)型かと予測した土壌断面はA層が薄く、困りました。しかし、B層ではないかと思った土の
土色を見ると、「栄養分が含まれている」ことが分かりました。
考えようによっては、A-B層であると判断することもできるこれは難しいね。
最後は尾根沿いのBB型土壌、ここはA0層がしっかり残り、その下にM層(菌糸束)を確認、
土壌表層に根が多く、A層は無いに等しい、そして石礫の多い層がすぐに現れる。
さぁ、明日は土壌型だけでなく、樹木の品種や密度で、樹木の成長がどれほど変化するのかを
見るため、下呂実験林での実習です。明日も暑いけど、みんな頑張ろう!
以上報告、JIRIこと川尻秀樹でした。