国内研修2日目は、芦生山の家を出て、同じ南丹市美山町内の北村集落へ。
ここは「かやぶきの里」として都会からの移住希望者や観光客に人気のエリアです。
50戸のうち38戸が「北山型民家」と呼ばれる、築150~250年のかやぶき民家で
まるで「昔話の世界」に迷い込んだようでした。
地元在住のガイドの方から、集落の成り立ちや、民家の特徴や生業のあり方、
そして1993年に国の重要伝統的建築物群保存地区の指定を受けた経緯などを
うかがいました。現在も萱葺き屋根を守るために、約20年に一度の葺き替えを
続け、年に2~3戸のペースで補修を行っているなど、美しい村の景観を守るため
の苦労もお話いただきました。
かつての北村集落は、日本海岸の若狭と京都市内を結ぶ周山街道(通称:鯖街道)
にある貧しい農村でした。1988年に、その景観が国の農村アメニティコンクール
で表彰を受けたことから住民の意識が変わり、萱葺き民家は“貧しさの象徴”から
「地域の宝」に変わりました。その後、伝建群指定を受けるまでに、集落全戸参加
の合意形成にいたるまで、住民リーダーは大変なご苦労をされたそうです。
そうした経験が下地となり、2001年には美山町の各地区に「地域振興会」という
住民組織が結成されました。JA支所の撤退や広域合併など生活環境の悪化につな
がりかねない変化に抗して、地域振興会が肩代わりして生活関連サービスを支え
る仕組みが出来上がっています。今では、美山町は「かやぶきの里」だけでなく、
「住民自治組織」の先進地としても、全国の注目を集めているのです。
お昼ご飯は、美山町田歌地区の「田歌舎(たうたしゃ)」でいただきました。
メニューは「鹿肉カレー」。知井地区では、獣害対策として年間300頭駆除される
シカ肉の有効利用に取り組んでいて、田歌舎もそのメンバーの一員。
代表のFさん夫妻は美山町へ10数年前に移り住んだIターン者ですが、自然学校を
生業としながら、地元の猟友会にも所属し、シカ肉メニューを名物にしたレスト
ランも経営されています。まさに「半農半X」の実践といえますね。
研修の最後は、比叡山延暦寺を訪れました。京都市内と琵琶湖を一望する信仰の
山(地元ではデートスポットとしても)有名ですが、1700haの所有地のほとんど
が山林で、延暦寺管理部のスタッフが造林事業を営々と続けています。これは
寺院建築の用材を自給するための長期的な計画の一環ということです。樹種は杉
が大部分ですが、一部にはケヤキの人工林もあるそうです。
西塔から東塔へいたる森を歩きましたが、15年生の杉から寺院の周囲を取り囲む
数百年生の巨樹、そして手つかずで残る天然林まで、多様な杉林が見られました。
ご案内いただいたIさんは僧籍にある住職さんですが、プロの林業家ハダシの育林
計画や施業に関するお話がぽんぽん出てくるのには驚きました。こんなお仕事も
あるんですねぇ。
ご案内いただいたIさんは僧籍にある住職さんですが、プロの林業家ハダシの育林
計画や施業に関するお話がぽんぽん出てくるのには驚きました。こんなお仕事も
あるんですねぇ。
最後には、延暦寺の重要文化財・戒壇院や、国宝・根本中堂の中を拝観しました。
とくに根本中堂は、総ヒノキ造りの豪壮な建築物で、黒光りするケヤキの柱には
圧倒されました。「ケヤキは水を吸うと鉄より硬くなる」という昔からの諺がある
そうですが、実物を目の当たりにして納得でした。
記:山村づくり講座 教員 嵯峨創平