2014年2月26日水曜日

岐阜和傘づくりを支える「3本の矢」

ものづくり講座教員の久津輪です。きょうは私が取り組んでいる岐阜和傘づくりの支援を、3本の矢に例えてご紹介します(・・・どこかの経済対策みたいですね)。

まずは昨日撮ったこの写真。和傘の仕上げや部品づくりに関わる3社の代表が、団結して岐阜の和傘づくりを次の世代へ伝えるために一歩を踏み出した、記念すべき写真です(ちょっと大げさですが・・・笑)。この写真のことは、後で詳しく説明します。


さて、私が和傘業界に本格的に関わり始めたのは2年近く前のことでした。傘の骨をつなぐ要の部品「傘ロクロ」の材料供給が途絶え、和傘づくり全体が存続の危機に立たされたことを知ったのがきっかけです。

この時、克服すべき3つの課題があることが分かりました。
1つ目は、材料供給。傘ロクロはエゴノキでできており、他の樹種では代替できないのですが、伐採と供給は岐阜県内のたった一軒が担っているのが現状でした。その供給元が亡くなったため、新しい伐採地を探し供給体制を確立する必要がありました。
2つ目は、後継者。傘ロクロを作るのは全国でも岐南町の木工所一軒だけで、後継者がいない状況です。職人が途絶えると、日本中の和傘生産が止まってしまいます。一刻も早く後継者を探す必要がありました。
3つ目は、設備。傘ロクロの加工機械は、明治初期に東芝の創業者でからくり儀右衛門こと田中久重が考案したとされています。それほど古い設計のものが今も使われており、老朽化が進んでいます。新しい加工機械の設計・更新は不可欠です。



これらの課題に対する1本目の矢は「エゴノキ・プロジェクト」。このブログでも度々ご紹介していますが、美濃市内で発見したエゴノキの森から、地元林業グループの山の駅ふくべ、和傘業界、森林文化アカデミーの三者が協力してエゴノキを伐り出すプロジェクトです。たくさんの人たちの協力を得て、持続可能な供給体制を作り始めたところです。

2本目の矢は、ものづくり講座で学ぶT君です。和傘業界の危機を知り、後継者を志願して森林文化アカデミーに入学してきました。まだ1年生ですが、学校で基本的な木工技術を学びながら、既に岐阜の和傘業者のもとにも通って勉強を始めています。卒業後はさっそく傘ロクロの後継者として働く予定です。
「T君、期待しとるよ」  「・・・(無口)」


そして3本目の矢が、機械の更新。冒頭の写真は、ものづくりを支援する国の補助事業の説明会での1枚です。傘ロクロ専用の機械を新設計するとなると多額の費用がかかります。そこで私から補助事業の情報を提供し、利用できるものは利用しようと和傘業界として応募を検討することになったのです。もちろん補助金で全額まかなえるわけではないので、業界が協力して負担する必要も出てきます。
その後、さっそく岐阜県経済産業振興センターのアドバイザーの方に加工機械を見てもらい、補助事業申請のアドバイスも受けました。3本目の矢では、私はこうして情報を提供したり人を紹介するのが役割です。

1本目の矢は放たれたばかり、2本目と3本目はまだ矢をつがえたところに過ぎません。しかしこの3本がいずれも的を射ないと、日本の和傘は存続しないと思っています。
これも岐阜が誇る大切な森林文化のひとつ。がんばって支えていきます!