2014年7月3日木曜日

消費の3要素、QCD、信頼性が重要!

木材の新たな販売戦略を考える

林業再生講座2年生の「木材の販売戦略」、この授業では岐阜県庁県産材流通課の中通さんを
お迎えして、講義や現地訪問をしながら、木材の新たな販売戦略を考えます。

 授業の中ではこれまでの復習もかねて、日本の木材需給の現状、岐阜県の木材需給の現状、
原木の流通について、製材加工品について、木材販売にかかる課題について講義を受けます。

 特に、原木販売のための有利造材は林業再生講座にとっても重要な項目。
   ①情報収集の重要性
   ②造材した丸太の使い道を考える
   ③どのような木材を提供するのかという林業経営      これも重要だね!
 

 川下側から提案する山づくりの例
   ①原木の品質・性能から将来の価値を考えた山づくり(適材適期)
   ②森林情報を管理して、特注材にも応えられる木材の安定供給体制をつくる 

  木材のブランド化も重要。業界主導の流通銘柄の事例、行政主導の産地銘柄の事例も学ぶ。

  どのような製品が望まれているのか。 マーケットイン発想での納品を考える。


 
 木材を売るには「NWS」が重要。 Needs  Wants  Story

  ニーズ(必要性)=人間生活上必要なある充足状況が奪われている状態。
  ウォンツ(欲求)=そのニーズを満たす(特定の)ものが欲しいという欲望。
  ストーリー(物語)=全体のつながり。

     ペットボトルで販売されている「お茶」も、ラベルフィルムを外せばストーリーは無くなる。
    これが単なる丸太、単なる角材。それにラベルに相当する何かをつければ、ストーリー
    が生まれる。


 最終的に製材工場は『 QCD + 担当者の信頼性 + 会社の信頼性 』が重要。

 さて、次回は岐阜県森林組合連合会の販売戦略について学びます。

以上報告、JIRIこと川尻秀樹でした。

「イタリアの農村観光」に学び、「日本で最も美しい村」をもっと元気にする!



山村づくり講座2年生の「コミュニティデザイン総合演習」の授業で、『なぜイタリアの農村は美しく元気なのか』 の著者で京都府立大学教授の宗田好史先生をお招きました。場所はアカデミーの教室を飛び出して、下呂市の「日本で最も美しい村連合」に加盟する馬瀬地域でフィールド実習とミニ講演会を行いました。


馬瀬は、この2年間山村づくり講座が重点フィールドとしてお付き合いしている山村です。馬瀬川に沿って10の集落が串刺し状に並び、集落毎に〔川-農地-住居-草地-里山〕の循環型の生活形態があります。これらの景観と文化を「里山ミュージアム」と名付け、住んでよし・訪れてよしの着地型観光を住民参加で創っていこうとしていて、卒業生の天池さんも中心メンバーとして活躍しています。


今回は「日本で最も美しい村連合」も着目している「イタリアの農村観光」とくに景観と食文化を組み合わせた戦略について、斯界の第一人者である宗田先生をお招きしての贅沢な授業。2年生3人で受講するには余りに勿体ないので、馬瀬「里山ミュージアム」の関係者にも呼びかけたところ、なんと30人も集って「ミニ講演会」と
なりました。




6月28日はちょうど馬瀬川の鮎釣り解禁日。朝から大勢の釣り人が川に入って竿を立てていました。そんな中、午前中は宗田先生と一緒に少人数で西村地区の「里山ミュージアム」を歩きました。扇状地の末端部で湧き水を利用した洗い場「シミズ」を持つ住宅、集落のあちこちに点在する「水屋」や「消火栓」から集落の歴史を探ったり、築100年は経つ庄屋さんの住宅では明治大正期の村おこしリーダーの足跡を感じました。昼食に入ったスローフード・カフェでは、この朝釣れたばかりの鮎や地物の野菜などが宗田先生の目に留まったようです。




そして午後は西村公民館でミニ講演会を開催。イタリアは歴史や芸術の国として知られていますが、決して裕福な国ではなく、小さな農山村が多い国勢です。1960年代から始まったイタリアの農村観光(アグリ・ツーリスモ)が1990年代から20年間で爆発的に発展しました。その秘密はなんなのか?ひと言では語れませんが、宗田先生のスライドに、それを可能にした社会情勢と主体者達の取り組みが要約されています。



宗田先生の語り口は、遠い国の成功談を美しく語るのではなく、農山村が置かれている経済的・社会的な苦境を世界的な視野でとらえ、農山村リーダーと都市住民の一部が気づいて始めた「スロー志向の暮らし方・働き方」を支えた政策・観光形態・女性達の活動について、確かなデータに基づいて分かりやすく説いていくものでした。




聞いていた西村地区の女性達の顔が輝き、体がぐっと前に乗り出してくるのが分かりました。学生達もその場の空気の変化に気づいたことでしょう。沢山のヒントや刺激に満ちた一日となりました。山村づくり講座では今後も馬瀬「里山ミュージアム」を応援していきます。遠路おいでいただいた宗田先生、ありがとうございました!


記  山村づくり講座 教員 嵯峨創平

2014年7月2日水曜日

樹と木材を知る 試験


今年も恒例樹木同定の実習のクライマックス、実物試験の季節がやってきました。エンジニア科実習「樹と木材を知る」では、前期に教えた86種すべての葉を一度に並べ、制限時間内に正解を回答しなければなりません。

ずらりと並んだサンプルは流石に壮観です。

86種すべて揃えるのは一苦労です


1種10秒で判断して正解を書けば、14分20秒で解答終了ですが、憶えたばかりの学生はそういう訳にはいきません。じっくり観察して答えを出します。樹木の特徴は色々なところに現れています。葉の裏を見たり、細かい毛の有無を確認したり、時には葉をちぎって匂いを嗅いだりします。全てを総合的に判断して、自分の知っている樹種の名で解答用紙を埋めていきます。

穴のあくほど見つめています

匂いを確かめるのも重要ですね

葉の裏には特徴が出やすいですね


平均1種30秒で答えれば、45分で試験終了です。実際には早い学生でも解答に1時間程度かかっていました。さて、気になる点数ですが、最高得点は84/86! あと2種! 惜しかったですね。

今年の学生は17人中1人を除き、無事に正解数50点以上の合格ラインを突破しました。この結果に胡座をかかず、これからも色々な樹種を見分けられるよう精進して貰いたいものです。めざせ、100種制覇!!

ものづくりと仕組みづくりゼミ: 大阪でひろがるものづくり空間②

さて、仕組みゼミの大阪での視察ですが、午前のアルブル木工教室の次は、今年4月に難波にオープンしたDIY FACTORY OSAKAです。


DIY FACTORY OSAKA: http://www.diyfactory.jp/

DIY FACTORY OSAKAは、DIY Tool.comというさまざまな工具、電動工具などをネット販売する株式会社大都のリアルショップ第1号になります。このリアルショップは、単なる道具の販売を実店舗で行うというだけでなく、いくつかの狙いがかみ合って成り立っています。

今回は、店長の白濱さん(通称:マーカス)に解説をお願いいたしました。

まずなぜこの南海電鉄の高架下でリアルショップをオープンさせることになったのか。それは南海電鉄の高架ができたのが昭和13年前。その年に同じく誕生したのが株式会社大都だったということで、共に77歳ということで話が始まったそうです。

DFOの狙いはこのようなことです↓。

自分たちの生活は自分たちでつくる。その生活の道具を自分たちで創り出すことを当たり前の世の中にしたい。 そのためにちょっとハードルを感じている人たちの背中をポンと後押ししてあげること。

そして、今回のリアルショップは、
1.DIYに興味があるけど、道具をそろえるのは大変、場所もない、やり方もわからないという人たちの最初のきっかけの場にすること
2.ホームセンターではなかなか一般消費者に届けられなかったメーカーに商品をアピールする場を提供すること
3.DFOがその両者をつなぎ、ワークショップなども開催しながら、DIYの良さを伝え、ものをつくる楽しさを伝える場をつくること
4.地域のクリエーターやアーティストにワークショップの講師になってもらい、彼らと一般の人たちをつなげること
を狙っています。

 空間としては、
1.ワークスペース
2.メーカーのショースペース
3.大都のオススメグッズの物販スペース
の3部構成になっています。

さっそく金属のプラズマ切断機と溶接機を体験するK先生

ワークスペースでは、多少手狭ながらも、さまざまなワークショップが開催されており、普段なかなかできない溶接があったり、木のマイペンづくり、スツールづくり、ステンドグラス、石鹸作りなど。どんどんそのレパートリーは増えていっています。
またこのスペースは道具類も含め時間貸しもしていて、場所がない設備がないという方にとっては願ってもない場所となります。

Touch the DIY
メーカーショースペースでは、各メーカーがオススメする商品を並べてあります。それはホームセンターではなかなか手に入らないモノだったり、ちょっとオシャレなものだったり。またホームセンターのようにただ商品が並んでいるだけなく、ちょっとしたポップだったり、店員さんに使い方を聞いたりできるので、より自分のものづくりにどう生かせるかがわかりやすくなっています。



ちなみに、このDIY FACTORY OSAKAではものづくり講座ではありませんが森林文化アカデミーの卒業生が活躍しています。 すでにワークショップの講師も務めるようで、森林文化アカデミーで学んだ幅広い木の知識が生かされているようです。(カローラさん、がんばってね)


総じて、
アルブル木工教室のような教室やDIY FACTORY OSAKAのような場所が増えるということは、自分らしい暮らしを自分で作っていける素地が整い、より広がっていくということです。より多くの人がこれまでできなかったさまざまなものづくりをできるようになっていきます。

一方でプロとして木工を目指す若者も増えています。日本中のあちこちで「いいもの」をつくる職人はたくさんいます。合同展示会などいけば、みんな素晴らしいクオリティのものを並べています。

大量にモノが作られ、大量に消費された時代から、こだわりのもの/いいものを選ぶようになった時代、しかしこれからは一般の人が自分でいいものをつくる時代 。そして、材料のことも考えなければいけません。資源は限られています。

そういう時代に、木工を含めものづくりを仕事として目指す人は何を考え、何をどうつくり、どう広めていくのか、よくよく考えていかなければいけないと思うのでした。

2014年7月1日火曜日

ユニークさだけでなく、科学的論証が必要!

最小限の言葉で、最大限の結果を出せ!


 本日はクリエーター科の課題研究、中間発表会を開催しました。

発表者はクリエーター科2年生、聴衆はエンジニア科1年・2年、そしてクリエーター科1年と教職員
です。
 全体の進行は津田先生と河本係長さん。名簿順に山村づくり講座、木造建築講座、林業再生講
座、ものづくり講座の学生が中間発表しました。


 様々な分野の面白い発表に、最初は教員のみの質問でしたが、徐々に学生からも質問が出る
ようになりました。
 木造建築の分野はエンジニア科には少し難しいようでしたが、それなりに興味を持って聞くことが
できたようです。

 質問しない学生も、全員が発表者にアドバイスやヒント、質問事項を記入するメモ用紙に、せっせ
と記入していました。



 生徒会長でもある林業再生の竹川さんは「川下の需要に応える木材生産の取り組み」を発表し、
涌井学長の質問に緊張気味。

 木材生産の現場にマーケットインの考えを導入しようと四苦八苦しています。


 木造建築のベンさんは、「省エネ施工性能の向上を目的とした事例データベース」について、
発表。 より多くの現場でデータを集め、WEB上での公開を目指しています。


 最後に涌井学長からは、「どれも「大変面白い課題ではあるが、単にユニークなだけでは意味が
ない。科学である以上、論証が必要。最小限の言葉で、最大限の結果を出し、第三者による再現
性も必要である。」

 「内容を欲張りすぎず、どう引き算して、何が自分の求めるものかを追求すること」、加えて
 「一般に定義された言葉表現で表さないと、社会で通用しないことを、課題研究を通して学んで
欲しい。」 など、様々な感想を頂きました。


 さて、今回の中間発表、教員にとっても「学なり、技術なりを、どう学生に指導すべきか」を考え
直す機会でもあったのです。

 以上報告、JIRIこと川尻秀樹でした。

ものづくりと仕組みづくりゼミ: 大阪でひろがるものづくり空間①

今年のものづくり講座では、これまでの授業を改編しできた授業が二つあります。一つは「ものづくりと暮らしづくりゼミ(通称:暮らしゼミ)」、もう一つは「ものづくりと仕組みづくりゼミ(通称:仕組みゼミ)」です。

その第1回の仕組みゼミを大阪にて行いました。

今回のテーマは「広がるものづくり機会と空間」。

最近、昨今のDIYブームもあり、あちこちでものづくりスペースが増えています。鉋や鑿をつかった古典的な木工を教える教室もあれば、ハイテク機器を使って最先端のものづくりに取り組める工房、気軽にさまざまなものづくりが体験できるショップなど、その形態は様々です。

一つ確実に言えることは、ものづくりができる機会や場所が増えていることによって、多くの人が自分で作りたいという願望を満たすことができる世の中になってきているということです。

 これから木工を含め、ものづくりをしていく者として、このような流れとどう付き合っていくのか、これからのお客さんは何を求めていくのか、これまでのものづくりの在り方でいいのか、そこを考えるきっかけとして今回の仕組みづくりゼミを企画しました。

見学先は2個所。
アルブル木工教室とDIY FACTORY OSAKAです。



今回は、アルブル木工教室について。

アルブル木工教室は、私の知る木工教室の中では、運営、コンセプト、森林・木材に対する考え方が一番しっかりしているところだと思います。社長さんや現場の方とは数年前から交流がありますが、いろんなことに精力的で非常に勉強になります。

今回は、木材という材料がこれまでどのように入手されてきたか、そして今それがどう変わっているのか、そして今後どうなるのか、というお話をアルブル木工教室の立地を踏まえながらお話をお伺いしました。


アルブル木工教室はもともと海外から丸太を輸入し、それを製材して販売するという材木商の会社です。そのため、建物は海沿いにあり丸太を浮かばせておく木場もありました。それが、次第に丸太の輸入ではなく、製材された板材の輸入に変わります。製材などはコストが安い国で加工されるようになり、輸入されるときは運搬効率のよい板材にされています。そのためかつての木場はこの1年で埋め立てられ倉庫と化し、バンバン稼働していた製材機械はすでになく建物は同じく倉庫として利用されるようになってます。上の写真のフェンスの向こう側は1年前までは海であり、それがたった1年で埋め立てられ、すでに倉庫として稼働しているという、とてつもないスピードで変化したということです。埋め立ての様子については、アルブル木工教室のブログに紹介されています。

そして、今は、さらに木材そのものが手に入りにくいというお話をされました。それは自然環境保護などの理由で伐採制限がどんどんかかっているからだそうです。そのため、アルブル木工教室では、国内産の材料を定期的に入手できるように 新しい仕組みを構築しているとのこと。もちろん、岐阜と大阪では状況が違いますが、大きな流れとして、このお話は非常に参考になりました。


その後、実際の木工教室を見ながら、教室の運営方法などを詳しく教えていただきました。「工房」ではなく「教室」を運営するということは、つくるプロではなく教えるプロということをはっきり自覚しなければいけなく、作れるから教えられるという単純な発想で木工教室を始める人が多いが、すぐ失敗するそうです。また、採算性も非常にシビアで、教室という「サービス業」をいかに成り立たせるかを考えていくと、何をサービスとして提供するのか、どうやって提供するのかが見えてきます。アルブル木工教室の具体的な運営の仕方は非常に勉強になりました。


お世話になった現場スタッフの下村さんは、木だいすき!なお方。話し出すと止まらない、木に対する情熱があふれ出てきます。そんな下村さんのエネルギッシュなお話は学生にもいい刺激になったのではないかと思います。


TV番組の取材をうけました

最近、林業女子ということばを耳にする機会が増えていませんか?
平成25年度森林・林業白書でも「林業活性化に向けて女性の取り組みが拡大」と、ピックスとして紹介されていますね。
こんな流れを受けてでしょうか、実際に林業の現場で働いている、あるいはこれから林業に関わっていこうとする女性達への取材を通じて、日本林業の現状と未来ある女性達の働きぶりを紹介する番組を作りたいので、アカデミーで林業を学ぶ女子学生の取材をさせてもらえないかとのお申し出を、TBSテレビの「Nスタ」の特集企画「ハッケン!」のディレクターさんからいただき、先日取材をしていただきました。
これはそのレポートです。

最初に座学の授業風景をみていただきました。


エンジニア科1年生とクリエーター科1年生の共通授業「樹木生理学」。一部の苗木は県をまたいで移入する場合移動制限があって、それは樹種の生理学的事情云々・・・。

今回の取材では、女子が林業を目指すことについてどう思う?といったインタビューが、男子学生に向けてありました。何と答えたでしょう。


さて、座学を撮り終えたので次は実習風景です。
この日は授業科目としての実習が無い日でしたので、エンジニア科2年生の丹羽さんに、昨年度受けた「木材の伐採と搬出」の復習授業を杉本先生にしていただきました。
マンツーマンの特別授業です。
アカデミーに隣接する演習林に移動し、今年皆伐を予定している林で実習です。
まず肩慣らしをしたあと、いよいよ胸高直径40センチ位のスギの伐倒に挑戦。


手順通り行って無事伐倒することができました。そして倒した木を背景にインタビュー。


続いて、座学の授業が終わったエンジニア科1年女子と合流。今度は枝打ち実習です。
本当は時期的に適当ではなかったのですが、ま、そこは番組制作意図にお応えするということで。
学生には正しい時期と、その理由をよく説明したうえで、演習林から教室のある構内に戻り緑化木的に植えてあるスギを対象に、梯子のつけかた、ノコを使った枝打ちの仕方を、横井先生から指導していただきました。


作業が終わって枝打ち跡をみんなで見ながら、これはちょっと・・・的な切り方もありましたね。


最後に1年生の女子学生3人にもインタビューして、取材は終了です。
雨に降られることなく、なんとか無事に終了。
GOOD JOB!(そういえば、映画「WOOD JOB!」見ましたか?)
みなさま、お疲れ様でした。

ところで気になる放送日時ですが、

7月2日(水)15時30分~19時 TBS Nスタ
この番組中の「ハッケン!」 16時35分~16時50分頃

を予定だそうです。
報道番組なので急きょ放送日が変わることがあることをご承知おきください。
そして、関東ローカル番組なのだそうです。
関東地方以外の方、ごめんなさい。