施業プランナー育成研修が始まって三ヶ月、今回は第8回の研修として
1)目標林型と森林施業
2)生産性の把握とコスト
3)製材工場が求める原木規格
という一見、何の関係もないように思われがちな項目について、森林文化アカデ
ミーの横井教授、杉本助教、県産材流通課の中通技術主査に各々担当して頂き
ました。
最初に「目標林型と森林施業」です。この項目はこれまで何度も研修した内容で
すが受講者からのアンケートを見たところ、充分な理解がなされていないことがわ
かり、 「目標林型とは何か」を知る。「目標林型と間伐には密接な関係があること」
を知る。「施業プランを立てるとき、常に目標林型を意識しなければならないこと」
を知る。 ことがこの内容の到達目標です。
万が一、目標林型が設定されていないと、
1)行き当たりばったり、その場しのぎの作業(の繰り返し)になりやすい。
2)間伐と称した収奪的な伐採に陥る危険性がある。
3)次回以降の間伐(収穫)計画が立てにくい。
→ このため、持続的な林業経営が成り立たなくなります。
講義の中では「目的機能と目標林型」、「木材生産林の目標林型」、「生産林の
目標林型の考え方」に分けて、説明頂きました。
針葉樹大径材生産の目標林型を考えると、構造材や板材生産で、人工林の成
熟段階そのためには長伐期施業または択伐林施業となります。この場合、一斉林
であれば、積極的な間伐(主伐までの途中での収穫)が必要であり、択伐林であ
れば成長量を超えない範囲での収穫と確実な更新は必須となります。
伊勢神宮の宮域林、三重の速水林業、山県市の中原林業を事例に、目標林型
について学んでいきました。
例えばヒノキを例にとれば、「ある直径を実現できる本数密度がある」、つまり本
数密度が高過ぎるとある直径階に到達できない。
これを60年生以上のヒノキ林にあてはめると、写真のようになる。立木の「直径
に影響するのは林齢よりも本数密度」であることがわかります。
また、同じ樹高の個体を抜き出して、その樹冠長と直径階を比較すると、「枝下
高の低い(=樹冠長の長い)個体の直径が太くなっていることがわかります。
これって、わかっているようで、わかっていない。案外理解されていないこと。
現在、どれだけ枝が枯れ上がっているのか。将来、どれだけ樹高が高くなって
樹冠長がどれほど稼げるのか。これが将来性のポイントとなります。
次ぎに、「生産性の把握とコスト」です。内容は、「低コスト化の目的」、「コストの
捉え方」、「コストマネジメントの実行」、「現場の生産性向上に向けて」です。
木材価格が低迷しているのはご存じのところですが、スギ材1立方メートルで雇
用可能な伐出労働者数を見ると、昭和35年当時はスギ材1立方メートルで11人を
雇用することができました。しかし、平成6年頃にはスギ材1立方メートルで1人を
雇用するのが限界になってきました。
これは木材価格の下落と、賃金の高騰が原因です。
講義の中では「固定費と変動費」、「損益分岐点」、「減価償却費」などについて
学びました。
作業における付加価値作業(伐採や造材)と非付加価値作業(集材や運搬)に
ついて、胸高直径と搬出コストについて、日報データの重要性、日報作成の注意
点、生産性向上のための5B
(Bottle necks、Balance、Buffers、Break downs、Blunders)についてなどなど、
様々な項目を学びました。
一般に収穫に用いる高性能林業機械の稼働日数が少ないと搬出コストが嵩み
ます。
しかし、中古の高性能林業機械を自前で修理しながら減価償却費を低く抑え、
同時にプロセッサーの稼働率を最大になるように木材の流れを滞らせない作業
システムを導入している事例の紹介もありました。
最後に、中通技術主査による「製材工場が求める原木規格」です。
これまでの県産材需要の大半は「柱」を中心とした建築用材でした。しかし、立木の
大径化によって、建築用梁桁材や合板利用の可能性が大きくなってきた。
木材流通も従来のような複雑な市場や問屋流通は減少し、システム販売や山土
場選別などが主流を占めてきた。
また合板工場や集成材の大型工場ではリングバーカーやツインバンドソーの大
きさから太い丸太が利用できない現実もある。丸太の生産は3m、4m、6mとなって
いるが県産材住宅の梁桁材を調べると6m材よりも5m材の方が圧倒的に多い。
つまりプレカット工場では5m材を欲しい現実がある。
梁桁材について考えると、強度(ヤング係数)が問題となるが、未成熟材を含む
元玉はヤング係数が低くなるため、市場の丸太のヤング係数を測定すると、太い
ものがヤング係数が低い結果となる。
最初の「目標林型と森林施業」は、最終的にこの市場が求める木材につながる
必要があります。木材を使う側の視点に立った森林施業とそれを利用する生産、
伐出作業のすべてがうまく行って、持続可能な林業となるのです。
今回は一日中、室内での講義でしたので、みなさんご苦労様でした。次回は8月
17日に東濃共販所です。暑い夏に負けず、頑張って研修を乗り越えましょう。
以上報告、ジリこと川尻秀樹でした。