森林文化アカデミー 平成24年度 「施業プランナー 技術維持研修」の第4回目
「路網整備における環境負荷」 を開催しました。
今回の講師は岐阜県森林研究所の臼田専門研究員、路網整備における濁水流出を中心に、
環境負荷について講義と現地実習をお願いしました。
最初に、施業プランナーは経営計画を立てる上で、環境負荷を考えると路網設計が大きな課題
となります。環境を良くするために間伐などの森林整備を推進するのですが、そこで得られた木材
を搬出するのには路網が欠かせません。
しかし、その路網開設が時として、環境破壊につながることもあり、それをどのように対処すべき
なのかを学びます。
今回は森林研究所の講堂をお借りして、講義をしてもらいました。
研修の内容は(1)路網整備による環境負荷、(2)路網整備による濁水流出の実態とその対策
です。
環境負荷は「水質」と「生態系」の両面が考えられます。
意外に見落としがちなのが、特定外来生物です。輸入や植栽など高額な罰金が科せられます。
規制はありませんが法面緑化など種子吹きつけは慎重な取り扱いが必要です。
四万十方式など、埋土種子や在来食性を活用する「表土ブロック積み」の追跡調査では、
「表土ブロック積み」は「土羽打ちのみ」の法面と比較して、流出する土砂堆積物が1/70に
押さえられています。
また法面の被度が60%を超えると土壌浸食量が大幅に減少することもわかりました。よって
「表土ブロック積み工法」は法面保護効果が大きいのです。
一方、作業道などから流出する土砂による「濁水」は簡易水道などで大きな問題となりますが、
岐阜県を代表する魚、アマゴの卵生存率にも大きく影響し、産卵床に堆積土砂があるとアマゴの
卵の生存率が低下します。
また、アユの食料である藻類にも大きく影響し、濁水た流出土砂発生すると溶存酸素量も減少
して、藻類の生息に悪影響を及ぼします。
「濁水」の「調査方法には
(1)濃度測定、(2)濁度測定、(3)透視度測定 の3つの方法があり、それぞれに利点と欠点
があります。
研修受講者は濁度計と透視度計で、どのように違うのかを実験しました。
山の現場では、2年前に開設された作業路で土砂がどのように流れ、植生がどのように変化する
のか調査している試験地を見学しました。
ここは作業路面にヒノキの枝葉(枝条)を全面敷き詰めた場所で、路面の表土流亡はほとんど
発生しなかった現場です。
つぎに見たのは、切り取り法面を植生吹きつけした場所と、多機能フィルターを設置した現場で
す。
手前は法面吹きつけしてありますが、植生は落下し、かつ路肩に崩落土砂が堆積しています。
研修者が見学しているところは、施工後2年経過した多機能フィルターですが、表土崩落は
ほとんど発生していません。
この多機能フィルターについては、別の盛土法面でも見学しましたが、その効果は有効でした。
最後に路面を規定面から1mほど下げて、わざわざ洗い越しにしてある現場で、土砂流出量や
路面の表面浸食を見学しました。ここでも様々な問題点の洗い出しをしましたが、後から批判する
のは簡単なことです。
重要なのは、「私たちがこの経験を次にどう活かすか?」です。
理想論を語るのは簡単でも、実際の現場で施工するには苦労するのを感じます。今回も多くの
勉強をしましたが、みなさん一緒に頑張りましょう。
以上、ジリこと川尻秀樹の報告でした。