2012年11月29日木曜日
山村づくり講座 実習レポート
「山村づくりゼミ1、2」 実習レポート
山村づくり講座の実習で大垣市上石津の時山地区を訪ねました。
今回のテーマは、以下のとおりです。
●今年の夏に発生した土砂災害について、現状の確認とその原因について考えてみること。
●「時山炭」について、地域に伝わる伝統的里山利用とその施業をまなぶこと。
午前中は、時公民館を訪ね、館長さんから時地区の歴史や地域活動の様子を伺いました。
場所を時山伝承館に移し、館長さんのお計らいで地域の古老の方々からお話を伺いました。
この方々は現役の炭焼き職人さんと地域の自治会長さんです。
今でも定期的に出荷され、時山炭ブランドは高い評価を受けています。
全員同じ川添姓なので、名前で呼び合っておられました。
話は水害、山の様子、昔の生活、炭焼き窯つくり、択伐方式、売買、流通、多岐にわたりました。
皆さん大変お元気で、お話もたいへん面白く、あっという間に時間が過ぎてしまいました。
午後は、時地区内数箇所を訪ねました。
災害の爪痕が各所に残っており、特に住居の罹災は生々しいものでした。
川原にはかなりの厚さで全面に土砂が堆積しており、大量の土砂が流入したことがわかります。
古老の皆さんが口を揃えて「こんなひどい土砂災害は初めて、親からも聞いたことはない」と話しておられたのが印象的でした。歴史的文献まで調べられてないが、この集落は3度大火にあっており大半の古文書は焼失しているとのことでした。
私たちは事前学習の中で、断層による崩れやすい地形が多い地域なので、そこが集中豪雨によって沢抜けしたのだろうとか、人工林の表層土が沢に流出し堆積したものが溢れて土石流のように押し出したのではないか等、推測していました。
それらは現地でも確認できたのですが、今回のような人家被害や大規模な災害は、少なくとも100年来、経験のなかったことだったようです。
昼食後は地域の森林の状態を観察しました。
各所にニホンジカのフンが見られ、おそらくシカの影響と思われる、林床植生の消失、単純化と裸地化が見られました。
シカの生息密度が高い地域の指標植物の例
オオバノイノモトソウと 林床群落
クサギと単純群落
これらはいずれもシカが嫌う植物で、他の植物は食いつくされた状況です。
その結果、雨の多い夏期の間も、表土が剥き出しとなるため、雨滴による掘り起こしと流出が起こるのです。
伐採後数年経過した林床です
本来、広葉樹であれば、萌芽更新が可能なのですが、萌芽してもすぐシカに食べられてしまうため、光合成ができず、いずれは枯死に至ります。株が枯死すると、根が抱えることで安定していた土石が不安定になります。表土流出はやがて表土崩壊を招く恐れがあります。
シカの問題は田畑の作物被害、人工林の立木被害にとどまらず、森林生態系を劣化させ、その結果として表土崩壊を誘引するおそれがあると言うことです。
今年から岐阜大学では、森林環境税による頭数管理の本格的研究が始まっていますし、県も条例に基づき、市町村も捕獲活動を強化しつつありますが、この現状をみるとさらに頭数を減らす対策が必要であるように思います。
最後に、かつて水力発電所があったという場所を訪ねました。
整備された車道でしたが、予想通り各所で崩落が起きており、
あらためて水と土砂の破壊力を見せつけられました。
発電所跡はあるのですが、構造物等はすでに無く、地域の潜在的観光資源としての期待感もありますが、道路復旧とストーリーが必要条件だと思われました。
以上原島が報告しました。