平成24年度 岐阜県施業プランナー研修 上級研修 その第5回目を開催しました。
今回は和歌山県田辺市の株式会社 山長商店副社長である榎本崇秀さんをお招きし、二日間
にわたる研修を実施しました。
初日は岐阜県で最初に新生産システムを導入したことでも有名な親和木材工業株式会社で
古田元社長から、親和木材の取り組みを事例をご紹介頂きました。
続いて県産材流通課の中通技術主査による「製材工場が求める原木規格」を講義してもらい、
翌日に榎本副社長から株式会社山長商店の取り組み」についてご講義頂きました。
最初に親和工業です。前日に林野庁の視察、本日施業プランナーの視察、明日は県庁職員や
森林審議会関係の視察と、大変忙しい中で古田社長さんから会社の概要やものづくりの考え方
などにyついてお聞きしました。
もともとは外材利用のドアメーカーであった親和さんですが、現在はスギを中心に国産材のドア
も多数制作されており、年間6万枚ドアを出荷しています。他にも、フローリングやウッドデッキ、
ログキットハウス、中空木材などでも有名です。
針葉樹は2ヶ月天然乾燥して、広葉樹は5ヶ月天然乾燥して、各々人工乾燥させて含水率を12%
程度に落とすそうで、乾燥機は20基がバイオマス燃料などを利用して稼働していました。
親和さんでは「木材は資源である。それを如何にうまく使うかが木工屋の仕事」ととらえており、
スギ材はA材もB材も、C材も受け入れて、自社で仕分けして、挿し木スギでも、イボスギでも、枝虫
材でも木材を有効利用できるような商品開発と木材の付加価値付けをされています。
この会社には約70人の従業員さんが働いていますが、皆が目にする場所に生産管理の進捗状
況を一目でわかるように示してありました。
この見える化、林業では進んでいないですよね!
親和さんでは、エンドユーザーの直接注文にも対応されており、ウッドデッキなどは初心者でも
簡単に組み立てられるようにして、かつクライアントの名前まで印字して出荷してくださいます。
またフローリングや階段板などには、注文に応じて加工も細かに対応し、この製品は発泡スチロ
ールをサンドイッチされたものでした。
こうした商品を売り込むために広告宣伝費を800万円から1000万円ほど使われているそうです。
親和さんのように、国産材の他用途な有効利用を考えてくださる加工業者さんが日本中で増えて
下さればありがたいのです。
続いて、場所を森林文化アカデミーに移動して、県産流通課の中通さんからお話をして頂きまし
た。
木材流通のネックは何か? 製材工場が求める原木規格は? など、加工側からの視点で、
木材について深い見識を伝えてくれました。
ここでは伐採や造材時にもづける欠点。アテ材や髄割れ、水割れ、黒心、モメ、アカネトラカミキリ
など、そして年輪幅に対する誤解、川下から提案する山づくりなどについて、熱く語って頂きまし
た。
研修二日前は前夜に熱く語ったのを引き継いだまま、榎本副社長からの講義です。
山長商店は和歌山県田辺市にある会社で「顔の見える国産材の産直供給体制」をいち早く確立さ
れたことでも有名で、自社有林の管理から木材生産、加工販売などでも知られ、首都圏を中心に
年間900棟分のプレカット加工をされるなど、全国的に知名度があります。
榎本副社長さんは、山長の歴史が記された「山林収利簿」の説明から始まり、山長商店の事業
体制やプレカットの重要性、販売店とつながることの重要性について指摘されました。
ここのプレカットは「無垢の木材を最大限に活かす木配りの心」が重要で、木を判る人をプレカッ
トにはいちさせることの重要性、新鋭機械と熟練職人による現しのプレカットについて語られまし
た。
また、製品は安定供給が基本であり、いつ頼んでもちゃんとした商品がすぐ届くことが当たり前の
世界であること。そしてプレカット加工が山長商店に与えた影響について、
①工務店と直接つながりをもつことで、ものづくりの視点が変わった。
②アッセンブル機能を持つことで品質に対する意識の向上 などについて、事例を入れて、
わかりやすくお話ししてくださいました。
木材乾燥も高温蒸気式減圧乾燥することで、低い温度で乾燥でき、木材の特性を損ねることなく
平角材を出荷できるようになったことも述べられました。
そうした製品に産地証明やJASマーク表示、強度表示、社名、シリアルNoなど、性能品質の見
える化、履歴の見える化をされています。
「優秀な木材の蓄積は地方の林産地に、木造住宅の需要は都市に偏っている」、こうした考え
は聞いてみると当たり前のようで、見落としていたことだと感じました。
山長グループの経営理念は
「山の恵みを通して、人々の幸せと豊かさの実現に寄与すること」、こうした社会貢献を常
に意識することが重要なのだと思いました。
最後に、二日間、私たちとご一緒してくださった榎本副社長さんを囲んで、意見交換会です。
岐阜県の誇るべき施業プランナー上級者たち、この方たちが実質の民間フォレスターとして、
川上から川下まで網羅した森の価値や利用について常に考え、表舞台で活躍されることを
願いつつ研修を終えたのです。
みなさん、ご苦労様でした。
以上報告、JIRIこと川尻秀樹でした。