2013年5月4日土曜日

ウィンザーチェアの旅(安曇野編)〜思いをつなぐ

 ウィンザーチェアの旅2日目、松本からさらに安曇野へと足を伸ばしました。ここではいろんな作り手による新しいウィンザーチェアを見ることができます。
 まずは、安曇野ちひろ美術館。カフェにたくさん並んだ小さなウィンザーは「ちひろ椅子」と呼ばれるもの。いわさきちひろの絵に描かれた椅子がモチーフで、建築家の中村好文さんのデザインです。

 奥の2人掛けの「ララバイ」は、お母さんが子どもに絵本を読み聞かせるイメージ。いわさきちひろの子どもへの思いや、作り手の椅子に座る人たちへの思いが、ウィンザーチェアを新しいデザインへ進化させていて素敵です。手前のうさぎ椅子「ラパン」も、大別すればウィンザーと呼ぶことができるでしょうか。
  
 こちらも中村好文さんデザインのウィンザーチェア。この椅子に身を委ねてゆったり絵本を眺めることができます。
 
 最後に訪ねたのは、安曇野で家具工房を営むデニス・ヤングさん。アメリカのご出身ですが、松本民芸家具やウィンザー発祥の地・イギリスで修行を重ね、これまでにたくさんのウィンザーチェアを作ってこられた方です。
 工房では、椅子づくりに使う西洋の刃物類や、数々の作品の写真を見せていただきました。
デニスさんから学生へのメッセージとして、「家具の歴史や昔の作品をよく勉強しなさい。そこからオリジナルの作品が生まれてくる」という言葉をいただきました。これは今回訪問した先々で得た、共通の学びでした。先人たちの知恵や技術を学び、これからの時代につなぐ。それはまさに「森林文化」と名のつく学校にふさわしいものづくりのあり方だと考えています。

 最後にもうひとつ。今回の授業では、一昨年に亡くなられたウィンザーチェアの名手、村上富朗さんの図面をもとに制作します。個人的なことですが、私は6年前に村上さんの工房に1週間滞在し、ウィンザーチェアづくりを教えていただいたことがありました。村上さんからこのような形で指導を受けた人はごく稀だったのではないかと思います。貴重な経験をした者として、少しでもそれを木工を学ぶ人へ手渡せればという思いもあります。

 たくさんの学びを得て、たくさんの思いを乗せて、ウィンザーチェア制作はいよいよ来週から始まります!(うまくできるかなあ。ドキドキ)