【二日目】
二日目は朝から樹木観察をしました。今回スプーン作りで使っている材、ホオノキを中心に身近な樹を数種類ご紹介させて頂きましたが、樹と木のつながりを感じてもらえていたら嬉しいです。「木も生き物なんだということ、このスプーンも木の命を頂いて作っているということ」言葉で説明するのは難しくても、樹と出会うことで伝えられること、伝わることがあるという考えの元、今回初めてオプションではなく、正規に取り入れたプログラムでした。
その後前日の続きで切り出し小刀の成形から入ります。
スプーンと向き合いながら
渡す相手のことを想いながら
ひたすら小刀とドレッサーで削ります。
いよいよラストスパート!サンドペーパーの番数を上げてより目の細かいものへ変えながら磨いていきます。
これは私たちもよく感じる事ですが、作業を始めるとあっと言う間に時間は過ぎて行きます。気がつけばもう作業の残り時間僅か!みなさん懸命にサンドペーパーをかけていました。
仕上げに荏油かクルミ油で塗装をして乾かします。
出来上がった作品がこちら!
自分のため、奥さんのため、お孫さんのため、まだ見ぬ自分の赤ちゃんのため。
色んな想いのこもった、世界でたった一つのスプーンです。
乾かしている間に最初に作ったペアになってもらい、出来あがったお互いのスプーンに名前をつけあったり、園で教える上での課題等、発表会シートの作成をして頂きました。
そして発表会!
自分の作ったスプーンを使ってヨーグルトを食べながら、出来あがったスプーンの紹介と、園でスプーンを作る時の課題、感想などを述べて頂きました。
「物を作ることの楽しさ、出来あがった時の喜びを再確認することができました。」
「始め一本の木の塊を見た時にはここからスプーンが出来上がるまでの完成形が思い浮かばず、不器用な私に出来るのだろうかと思いましたが、だんだんと形になっていくスプーンを見て、どんどん愛着もわいてきました。」
「子ども達に伝えていく時にこうやって全工程を作ったという自信があったり、木や樹に対する知識があれば、スプーン作りも木についても伝えられる幅が広がるなと思いました。」
「子ども達がドレッサー、紙やすりで自分で作ったという達成感を味わうことができることもとても良いことだし、誰かに(子ども達の場合は保護者)手伝ってもらうことでここまでできたという気持ちが持てることもすごく良いことなんじゃないかな、と思いました。」
「思い通りにならないもどかしさとの戦いでしたが、場面場面で臨機応変に対応していくことの大切さを痛感しました。」
「一見気の遠くなるような作業(同じ事ばかりの繰り返し)でも、使う人の事を思ったりしていると意欲的になれるし自分の為でも何に使うため、などの“目標”や“ねらい”があることの大きさ、大切さを改めて実感できたし、保育と同じだなと思いました。日々の生活の中での何気ない毎日や家事掃除など全ての事に“目標”や“ねらい”を持って取り組たいなという毎日の目標をこの制作を通して思い直すことができました。」
参加者の皆さんからはこのような声をたくさん頂きました。
まだまだ「伝える」技術の無い私たちですが、その中でそれぞれが自分に出来る事を見つけ、実践し、一つの研修をチームで作り上げて行く、その感覚を学ばせて頂きました。これから先もこういった機会は多くあるので、生かしていきたいなと思います。
また、真剣に子ども達と向き合う保育士さんの姿勢から「仕事」とはどういうものなのか、「木で物を作る」というのはどういうことなのか、今一度考えさせられること・学ぶことの多い研修となりました。
木の道具は、自分で直しながら使うことができます。私たちもスプーンを作っていますが、未だ完成していません。食べてみて、持ってみて、少しずつ修正しながら、身体に馴染むように大切に使っていきたいな、と思っています。
二日間、お疲れ様でした!
そして、ありがとうございました。
宮大工の小川三夫さんは、「木のいのち木のこころ」の中で次のように話しています。
「大きなお寺や塔を造るのが宮大工の仕事だけど、こうしてそれぞれの力や性格に応じた仕事がある。それぞれが大事な役目だ。・・・それぞれが自分のいいところを見せて、それをほかの人が学んでいく。こういうのが本当にものを学ぶということやないやろうか。」
講座も同じであると思います。チームで一つのこを成し遂げる。そんな感覚を少しでも獲得してくれたようで嬉しいです。
ものづくり講座 松井勅尚